WORLD
コロナウィルス、中国に現れた「ダサくて刺さる」横断幕
新型コロナウィルスの感染拡大した中国では、「マスクをかけよう」「親戚の家にも行かないで」などの横断幕が掲げられ、SNSで話題になっています。横断幕の「素朴な」キャッチコピーが、なぜか人々の心を刺さっているようです。
新型コロナウィルスの感染が拡大すると同時に、中国版ラインのWechatや中国版ツイッターの微博では、横断幕の写真がアップロードされました。主に村や町がつくった宣伝用のものです。
ネット上では、最初、キャッチコピーが「ダサい」とネタにされ、Wechatなどを通じて広がりました。
ところが、日を追うごとに、理解を示す声が多くなり、1月30日には、微博では「防疫横幅土味文案」(疫病防止の横断幕 ダサいキャッチコピー)がハッシュタグ付きで、話題になりました。ページビューは8000万を超え、コメントも1.3万を超えています。中国の大手メディア「中国中央テレビ局」や人民日報のアカウントも報道するようになりました。
横断幕にはいくつかのパターンがあり、「なるべく集まらないこと」「病状や経由地を隠さないこと」「マスクとかけること」などに分類することができます。
「家から出て集まる人は恥知らずで、一緒にマージャンをする人は命知らずです」
「いま集まらないのは、これからも一緒に食事をするため。互いの家に行かないのは、これからも親戚が一緒にいるため」
「今年のお正月は互いの家に行かない。来る人は敵だ。敵が来たらドアを閉める」
「今年は家に行くが、来年はお墓に行く」
「あちこち行ってしまうと、来年は墓に草が生える」
「今日(あなたが)あちこち行くと、明日、肺炎があちこち行く」
「ほかの人の家に行くことは、お互いを殺し合うこと。集まることは、自殺に等しい」
「今、ご馳走してもらえる宴会は、鴻門の宴(客人を陥れようとする宴)だ」
「じっと家で感染を避けよう、嫁のお父さんが来ても中に入れさせないで」
などの徹底ぶりです。
村や町に戻る際に、経由地と症状などを報告するよう呼びかけるキャッチコピーもあります。
「病気があって戻るのは親不孝、親にうつしたら良心のかけらもない」
「病気を持ちながら帰郷するのは、親不孝な子だ」
中には「時限爆弾」や「階級の敵」など過激な言葉も使われています。
「湖北省から来たことを報告をしない人は、みんな時限爆弾だ」
「熱があっても黙っている人は、人民のなかに潜伏している階級の敵だ」
マスクの重要性をアピールする横断幕では、マスクをつけたがらないお年寄りや節約しようとする人に向けたものが目立ちます。
「マスクか呼吸器か、母ちゃん父ちゃん、一つ選んでください」
「マスクは呼吸器よりいいだろう。家にいることはICUにいるよりいいだろう」
「マスクを節約して小銭を貯めても、病院に行ったら大金を出すことになる」
「予防方法は多種多様だが、マスクは第一条だ」
「昔マスクをかける人は悪人のように見えたが、いまマスクをかける隣人はとてもいい人だ」
「神様もマスクをかける。疫病は笑い話ではない」
横断幕の多くは「素朴」なもので、ストレートな内容ばかりです。広告のキャッチコピーのようなセンスはありませんが、覚えやすく、お年寄りにも伝わる内容になっています。
野生動物への警戒感も高まっており、「今日は野生動物を食べたら、明日は地獄に落ちる」「野生動物の料理を拒否し、口をきちんと管理しよう」などのキャッチコピーが生まれています。
ネット上では、最初、「ダサい」「乱暴だ」「俗っぽい」などの意見もありましたが、ウイルスの感染が拡大するに従って「高手在民間=民間こそ有能な人が多い」、「給力=素晴らしい」などの意見が投稿されるようになりました。
「その通りだ!!よく言えている。一つ一つインパクトがある。『恥知らず』や『命知らず』などの言葉は刺さるね」
「韻もきちんと踏んでいる」
「簡単、粗い、少し暴力っぽいが、実用的!」
「才能がある! ウイルスの前には用心したほうがよい」
「ダサいけど、知恵が隠されている。一般の人々に対して、このような言葉はより効果的」
「野生動物を食べるのは、もう絶対やめましょう」
日本でも新型ウイルスの感染は高い関心を集めています。中国の「ダサく」て「俗っぽい」キャッチコピーの流行は、もうしばらく続きそうです。
1/17枚