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連載

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#2 #アルビノ女子日記

「さらし者になってもいい」アルビノ女子がカメラの前に立った理由

「見た目問題」写真展で、アルビノ女子が考えたこと

筆者の神原由佳さん。モデルを務めた写真展に、できる限り在廊している(撮影:スタジオ・ブルームルーム冨樫東正)
筆者の神原由佳さん。モデルを務めた写真展に、できる限り在廊している(撮影:スタジオ・ブルームルーム冨樫東正)

目次

顔の変形やアザなど、外見に症状がある人たちに視線を向けてしまったことはありませんか? アルビノの神原由佳さん(26)は幼いころから周囲の視線に悩んできた一人です。そんな神原さんが、カメラに身をさらけ出しました。東京で開かれている写真展では、会場で来場者と積極的に会話をしています。「視線を浴びてもいい」。その言葉の裏側にある思いを、つづってもらいました。

写真で初めて知った「目の中の地球」

現在、東京・渋谷のギャラリー・ルデコで、外見に症状がある22人をモデルにした写真展「無自覚なボクが、いま言いたいこと。」が開かれている。

私は、この写真展でモデルを務めた一人だ。また、できる限り、ギャラリーに滞在するようにもしている。

そんな私のお勧め作品は、当事者12人のポートレート写真だ。一人一人があまりにも色っぽくて、本当に美しい。「写真に内面が映し出される」と言われることがあるけれど、「ああ、本当にそうだな」と納得してしまった。

会場に入ると、まず目に入るのが当事者12人のポートレート写真だ(撮影:スタジオ・ブルームルーム本田織恵)
会場に入ると、まず目に入るのが当事者12人のポートレート写真だ(撮影:スタジオ・ブルームルーム本田織恵)

アルビノの瞳をアップで映した作品「星を見ている」も見てほしい。これ、実は私の瞳なのだ。

アルビノは弱視を伴うケースが多く、私も同じ。おまけに無意識に眼球が揺れてしまう。だから、鏡で自分の瞳を見ようとしても焦点が合わないし、色が青いというのがぼんやりわかる程度。大きな写真パネルに映し出されて、初めて自分の瞳をまじまじと見て、ちょっと感動した。

自分の体の中にこんなにも美しい「地球(ほし)」があったなんて!

神原さんの瞳を映した作品「星を見ている」(撮影:冨樫東正)
神原さんの瞳を映した作品「星を見ている」(撮影:冨樫東正)

「さらし者」になってもいい

作品の中には、奇抜な衣装や装飾によって、アートの側面が強く出ているものもある。その点について、マイフェイス・マイスタイルの外川正行チーフは次のように語る。

「当事者をさらし者にしている、という声があがるかもしれません。けれど、そういった批判のあり方自体が問題を多くの人から遠ざけ、『見た目問題』を解決できない問題にしていると、私たちは考えています」

この言葉を聞いたとき、「そうか、被写体になるということは、さらされることなのか」と気づいた。

当事者は日常のふとした瞬間にも、ジロジロと見られることがある。街や電車の中で。見ている人がどのような気持ちなのかはわからない。私はそのたびに、嫌だなあと思う。

顔にアザがある「スタージウェーバー症候群」の当事者をモデルにした作品(撮影:冨樫東正)。アート色が強い作品も並ぶ
顔にアザがある「スタージウェーバー症候群」の当事者をモデルにした作品(撮影:冨樫東正)。アート色が強い作品も並ぶ

それでも、この写真展で「さらし者」になってもいいと、私は考えている。

プロのカメラマンに、よい写真を撮ってもらえるなら単純にうれしい。何より、面白そうだったから、この企画に参加した。写真を通して社会に強いメッセージを発したいわけでもない。ある意味で、自己満足だ。

それでも、見た人が何かを感じてとってくれるかもしれない。見た目問題に関心を持ってくれるなら、ありがたい。それを「さらし者」と言われるなら、それでもいい。

写真展のお客さんも、私たちの写真を熱心に見つめる。ただ、そのまなざしは優しい。好奇ではなく、私たち当事者を知ろうとする真剣な思いが伝わってくる。そんな視線なら、私は喜んで浴びたい。

スタジオ・ブルームルームの冨樫東正さん(右)と本田織恵さん。奥の作品は、隻眼(せきがん)の男性
スタジオ・ブルームルームの冨樫東正さん(右)と本田織恵さん。奥の作品は、隻眼(せきがん)の男性

求めるのは「好意的無関心」

ある日の夕方。1人の女性がギャラリーにやって来た。友人がSNSで写真展の情報をシェアしているのを見て知ったらしい。私は眼鏡を外して、実際に瞳の色を見てもらう。「きれいですね」と言われると、何だか照れくさく、上手い言葉が見つからない。

「あの、失礼でなければアルビノのことを知らないので聞いてもいいですか…?」と、女性はどこか申し訳なさそうに切り出した。「申し訳ないなんてないよ!」と心の中で叫ぶ。

アルビノでも人によって髪や瞳の色が違うこと、弱視があること、日焼けしやすいことなど、一通り説明した。すると、女性はぽつりとこう尋ねた。

「当事者の人と、どう関わったらいいですか?」

当事者を思わず見てしまうことは、ある意味仕方がないことだと思う。一方で、その後に不必要にジロジロと見られたり、二度三度と視線を向けられたりすることは気持ちいいものではない。

私は、できれば「好意的無関心」のまなざしを向けてほしいと思っている。奇異の目を向けず、無視するわけでもなく、知らんふりをすることだ。街中や電車の中で当事者に出会ったとしても「そういう人もいるよね」と、そっと見守ってくれるとうれしい。

女性に自分の気持ちを伝えると、納得しながら咀嚼(そしゃく)するように、何度も「好意的無関心ね」とつぶやいていた。

顔のほおやあごの骨が未発達な「トリーチャーコリンズ症候群」の当事者3人の作品を並べた赤い部屋(撮影:本田織恵)
顔のほおやあごの骨が未発達な「トリーチャーコリンズ症候群」の当事者3人の作品を並べた赤い部屋(撮影:本田織恵)

楽しい関係性を築きたい

それにしても、私たちは「関わり方で気を遣わせてしまう存在」なのかと思うと複雑だ。

私たち当事者と接する時、迷いや戸惑いを感じる人もいるかもしれない。だけど、特別な関わり方は必要ない。見た目に症状がない人たちと同じように、自然なコミュニケーションでいい。

そうすれば、今回の写真展で映し出されているような、楽しい関係性が築けるはずだ。私はそういう関係性を色んな人と築きたいと思っている。

筆者の神原さん。非当事者と楽しい関係を築きたいと考えている(撮影:冨樫東正)
筆者の神原さん。非当事者と楽しい関係を築きたいと考えている(撮影:冨樫東正)

私も誰かを傷つけているかも

今回の写真展のテーマは「無自覚」だ。とても難しいテーマだと思った。

私はアルビノや見た目問題には関心をもっているけど、他の社会問題についてはどうだろうか。スマホで簡単に自分がほしい情報だけを取り込みがちじゃないか?

というか、スマホを触っても見ているのはTwitterだ。「関心を持とう」と言うのは簡単だけれども、まずは「無自覚を自覚する」ところから始めないといけない。

「無自覚な視線に傷つけられることがある」と言う私自身も、意図せず誰かを傷つけているかもしれない。その自覚は絶対に忘れたくないと思う。この文章だって、もしかしたら誰かを傷つけているかもしれない。すべての人に納得してもらえるような文章などないことはわかっているけど、それでもできるだけ人を傷つけないようにしたい。

神原さんの後ろ姿が映し出された作品(撮影:本田織恵)
神原さんの後ろ姿が映し出された作品(撮影:本田織恵)

答えは一人一人の中に

今回、撮影してくれた写真家の一人、冨樫東正さんは「この写真展に来ても、答えはありません。一人一人が作品を見て感じ取ってほしいです」と言う。ギャラリーに来ても明確な答えは教えてもらえない。けれど、きっと何か感じ取ってもらえるはずだ。

このエッセイの冒頭で、当事者12人のポートレート写真について、「色っぽくて美しい」と感想を述べた。でも、実際の私たちは何ら特別でない人たちだ。みんなと同じように、自分たちの慎ましい生活を守っている。人とつながりたい、仲良くなりたいと思っている。

だから、この写真展がそのきっかけになればいい。来場者の方々には難しいことは考えず、純粋に楽しんでもらえればと願っている。

写真展は「見た目問題」の解決に向けて取り組むNPO法人「マイフェイス・マイスタイル」と、「スタジオ・ブルームルーム」の共催で、1月26日まで開かれている(入場無料)。ぜひ会いに来てください。

写真展の受け付けを務める神原さん(本人提供)
写真展の受け付けを務める神原さん(本人提供)
写真展の詳細はこちら

【外見に症状がある人たちの物語を書籍化!】
アルビノや顔の変形、アザ、マヒ……。外見に症状がある人たちの人生を追いかけた「この顔と生きるということ」。神原由佳さんの歩みについても取り上げられています。当事者がジロジロ見られ、学校や恋愛、就職で苦労する「見た目問題」を描き、向き合い方を考える内容です。

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