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#41 #父親のモヤモヤ

夫婦は納得でも…「専業主夫」育児への視線 助産師の善意にモヤモヤ

夫に抱っこされて寝る息子。生まれたばかりの頃は夫婦で交代しながら寝かしつけをしていました
夫に抱っこされて寝る息子。生まれたばかりの頃は夫婦で交代しながら寝かしつけをしていました

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。
最近は男性が育児休業・休暇を取得することも増えてきたとはいえ、共働きの夫婦でもまだまだ長期間休むのは女性――。私(32)は2019年6月に男の子を出産。息子が生後3カ月の時に職場復帰しました。保育園の途中入園に落ちた息子の日中の世話は、フリーランスの夫が仕事を休んで対応しています。私たち夫婦は妊娠する前から話し合いを重ね、夫が「専業主夫」になったものの、病院、役所、職場、家族の反応は必ずしもそれをサポートしてくれるとは限りませんでした。
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産休後の育児は夫が担当

まず私たち夫婦の話を少し。私は朝日新聞でカメラマンをしていて、3歳年上の夫はフリーランスのカメラマンをしています。夫の仕事量には波があるので、家計を担っているのは妻である私。「仕事をもっと頑張りたい私」と「早く子どもが欲しい夫」。妊娠前から私の仕事のためにも、家計のためにも、私は産休だけ取得し、その後の育児は夫が担当する、という役割分担をきめていました。

妊娠中、何度も「本当に大丈夫かな」と不安になる私に、夫は「仕事も育児も、得意な方が、できる方がやれば良いだけの話。男だから育児はできない、なんてことはないよ」と返してくれていました。夫のこの揺らがない姿勢は、心身共に不安定になりがちな妊娠中と産後もとても救われました。

夫婦が納得しても……

夫婦互いに納得して決めた分担でしたが、私の中でその決定がゆらぐことが度々ありました。まずは妊娠中に行った産院での面接です。

その産院では出産前に夫婦の職業、出産後の夫婦の予定、育児休暇について助産師さんと確認します。面談中、産後の計画について聞かれたので、「私は産後3カ月で職場復帰する予定で、子どもの世話は夫が担当します」と伝えると、「それは世知辛いですね。なんとかお母さんは休めないんですか?」と助産師さんが心配してくれました。助産師さんは私の産後の体調を心配して、善意での反応なのでしょうが、「やっぱり無理なのかな」と不安になりました。

次は自治体が実施してくれる「母親学級」。私が住む東京都文京区では新生児を迎える家庭向けにおむつ替えや沐浴の方法や心構えを教えてくれる講習を開催しています。「母親学級」は参加条件が妊婦であることなので、男性の参加はできません。

男性が参加できるのは「両親学級」のみで、こちらの対象は「夫婦」となっています。男性1人で参加できるのかもしれませんが、やはりハードルは高いように見えます。結局、私たちは2人で予定を合わせることが出来ず、講習に出られないまま、出産日を迎えてしまいました。気になっていた沐浴のやり方は、出産した病院でレクチャーしてもらいました。

妊娠中、産後直後は精神的に不安定になりがち。私は似たような状況の夫婦のエッセーを読んで鼓舞されては、また悩んだりを繰り返していました。母親に相談しても、「そんな早い社会復帰は無理」「ショックだわ」と言われ、悩みは深くなるばかり。「本当に大丈夫かな」という気持ちを抱えたまま、仕事復帰の日を迎えました。

文京区のホームページ。母親学級と両親学級があり、両親学級は「夫婦」が対象と書かれている
文京区のホームページ。母親学級と両親学級があり、両親学級は「夫婦」が対象と書かれている

心ない言葉に憤り

私の心配をよそに夫は、私に助けを求めてくることもなく1日が終わり、1週間、1カ月と立派に育児をこなしてくれました。とはいえ長時間1人で乳児の世話をするのが大変なのは男も女も同じ。私は夫のサポートをするために、可能な限り残業せずに帰るようにしています。もちろん思いっきり仕事が出来ないジレンマはありますが、理解して配慮してくれる職場の人たちに助けられています。

ただ色んな人に会う仕事なので、時に心ない言葉をかけられることもありました。「育児は女性じゃないとダメなのに、こんなに早く仕事に復帰をするなんて」、「育児をなめているじゃないか」。産休明けの私にわざわざ言ってくるのだから、言う方は自分の経験から本当にそう思っていて、私を心配しての言葉だったのかもしれないし、もしかしたらそこまで考えていないのかもしれません。

どっちにしても、育児や仕事に関する役割分担をジェンダーに当てはめて、私に押しつけてきたことに憤りを覚えたし、ショックを受けました。私は周りと同じように仕事をしているだけだし、何よりも育児に日々奮闘してくれている夫にとても失礼です。

最も記憶に新しいのは息子の4カ月健診。助産師さんが親の心の状態を尋ねてくれるのですが、「うちは夫が日中の育児をしているんです」と伝えていても、「ママは大変じゃない?」「ママは大丈夫?」とひたすら私を気にかけてくれる助産師さん。彼女の手元にあった紙をみると、チェック項目の質問には「ママの~」と書いてありました。おそらくマニュアル通りに聞いてくれているのだと思うのですが、育児に向き合っている時間は夫のほうが長いので、やはりここは夫に質問してほしいな、と思ったできことでした。

息子の沐浴をする夫。お風呂は今でも夫がメイン担当です
息子の沐浴をする夫。お風呂は今でも夫がメイン担当です

決断を柔軟に受け入れられる社会に

共働きが普通になってきている現在、男だから仕事に集中するべき、女だから育児をするべき、という社会通念は現状にそぐわなくなってきています。育休を取得するのは男性でも良いし、もちろん両方とも取得してもいい。育休以外の方法もあるかもしれません。

それぞれの夫婦がしっかり話して、男女ということにとらわれず、自分たちに1番合う役割分担を決める。そして、その決断を柔軟に受け入れられる社会であって欲しいな、と思います。そのためには様々な立場の人たちが声を上げて、それぞれの体験や考えを共有することが必要なのではないでしょうか。

息子は現在、来年度(4月)からの保育園入園に向けて保活中です。息子が成長し、保育園に通うようになって、夫が仕事を再開したらまた2人の役割分担は変わっていくだろうな、と思います。こまめに2人で話し合って、互いを尊重した良い方法を探して行ければ良いな、と考えています。

父親のモヤモヤ、お寄せください

記事に関する感想をお寄せください。「転勤」というキーワードでも、モヤモヤや体験を募ります。会社都合の転勤は、保育園の転園を迫られ、パートナーが退社を余儀なくされるなど、家庭に大きな影響を与えます。仕事と家庭とのバランスに葛藤するなか、みなさんはどう向き合っていますか?

いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)、ファクス(03・5540・7354)、または郵便(〒104・8011=住所不要)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。

 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。

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