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英語、あえて公用語にしない メルカリの社員講座で見たヒント

どうしたら言葉が違う外国人と一緒に職場でうまく働けるのでしょうか

外国人と日本人の社員が、みんなが分かる伝え方について考えたメルカリの「やさしいコミュニケーション」
外国人と日本人の社員が、みんなが分かる伝え方について考えたメルカリの「やさしいコミュニケーション」

目次

フリマアプリのメルカリには、グローバルな人材獲得に力を入れており、40カ国を超える国籍の社員が集まっています。それでも、公用語を「英語」や「日本語」と決めていません。社員向けの研修会では、誰にとっても「やさしいコミュニケーション」に力を入れています。「言語の上達を待っていられない」からこそ生まれた、外国人と一緒に働くコツを考えにいきました。(朝日新聞経済部記者、村井七緒子)

この記事(きじ)外国人(がいこくじん)にもわかりやすい「やさしい日本語(にほんご)」でも()きました。
「やさしい日本語(にほんご)」の記事(きじ)こちらから()むことができます。

 

外国語を話すストレス感じる社員が多数

12月中旬のお昼、メルカリ社内のある部屋で「やさしいコミュニケーション」のランチ&ラーンセッションが始まりました。お弁当を食べながら、母語が異なる人にも伝わりやすい日本語や英語の表現方法を学ぶ講習です。

集まったのは、とあるエンジニアチームの社員11人。9人は日本人、2人が外国人です。

「今日のゴールはこの二つです」

開始早々、講師役で日本語トレーナーのウィルソン雅代さんが、「やさしいコミュニケーションへの意識向上」と「コミュニケーションのベスト・プラクティスを考える」と書かれたパワーポイントを示しました。1時間半の講習では、「やさしい日本語」と「やさしい英語」のポイントを学び、グループワークで実践練習をしました。

メルカリには社内公用語はなく、社員は相手や状況に応じて臨機応変に日本語や英語を使っています。ただ、2カ国語を流暢に話せる社員ばかりではなく、外国語の語学レベルは「会話にストレスを感じる程度」という社員が多いとのこと。講習でも、ウィルソンさんが「英語を話すときにストレスはありますか」と尋ねると、参加した日本人社員の一人は「ありまくり」と率直に答えていました。

「やさしい日本語」とジェスチャーで、伝えたいことを伝えてみる日本人参加者
「やさしい日本語」とジェスチャーで、伝えたいことを伝えてみる日本人参加者

みんなが同じ理解=『やさしい』


やさしい日本語のポイントは

・一つの文を短く、はっきり最後まで言う。
・あいまいな表現や敬語は使わない。
・「どんどん」や「さらっと」などの擬態語や擬音語も使わない。
日本語が母語でない人には分かりにくいそうです。
 

実践練習では、まず「tea(お茶)の作り方を日本語で説明する」という課題が出ました。10人の参加者は5人ずつ、AチームとBチームに分かれてさっそく話し合い。

Aチームでは、「乾燥させた葉っぱをお湯に……」「『乾燥』って絶対分からないですよね」「『お湯』じゃなくて、『温度が高い水』とか」「いや、逆に難しいでしょ」「どこまでを知っていると捉えるかだよね」。言葉選びに苦戦しているようです。

Bチームは、パソコンに表示したお茶の画像を掲げて「これがティーです」と示し、説明を始めました。両チームの説明を聞いたフランス出身のロブさんは、「Bのほうがわかりやすい」。ウィルソンさんも、「画像を見せることで同じイメージが頭に入る。とてもいい説明です」と評しました。

次の実践練習は、分かりにくい慣用表現の説明。「ちゃぶ台返しする」という日本語が課題です。

日本人社員が「すでにあるものをひっくり返すこと」と説明すると、ロブさんは頭を抱えてしまいました。別の日本人が「議論を最初に戻すこと」と言うと、これにもロブさんは渋い顔。流れを変えたのは、日本人社員広井さんの説明です。

「偉くない人がみんなOK。でも、ボス、ノー」。身ぶり手ぶりを交え、日本語も英語もごちゃ混ぜで説明すると、ロブさんは「あー」とうなずき、分かった様子でした。

講師役のウィルソンさんは「人によって理解が違う状態はやさしくない。みんなが同じように理解できていることが『やさしい』です」と解説しました。

お茶の写真を見せて「これがお茶です」と説明したチーム
お茶の写真を見せて「これがお茶です」と説明したチーム

日本的な言葉はむずかしい

最後に、2チームに分かれて社員の親睦を深めるレクリエーションについて考えました。Aチームはフォークダンスの案で盛り上がっています。でも、ブラジル出身のトゥッティさんに絵を描いて説明しますが、なかなか伝わらない様子。やっと伝わると、トゥッティさんは「アイリッシュダンスかと思った。『ペアダンス』のほうが分かりやすい」とアドバイスしました。

Aチームにいた七島さんは、「フォークダンスの案が出たときに、それが日本的な文脈の単語だということに気づいていなかった」。日頃からミーティングやスラックでの発言には、日本語が母語でないメンバーにとって分かりやすいかを意識しているといい、「今日得た気づきをこれから実践していきたい」と話しました。

トゥッティさんの母語はポルトガル語。社内でのやりとりには英語を使います。「さまざまに異なるバックグラウンドを持った人が集まっている。私たちは共通の土台となる言語を見つけていく必要があります」と、この講座への理解を示しました。


取材していて印象的だったのは、英語が流暢でない日本人社員もためらいなく英語を話していたことです。ウィルソンさんは「お互いの言語上達を待っていられないので、互いに歩み寄って落ち合う場所が『やさしいコミュニケーション』なんです。その考えを持ってもらえたら、自信がなくても話せます」。日本に暮らす外国人が増えていくなかで、これなら私にもできそうだなと思いました。

やさしさのポイント


「やさしい日本語」に求められる最も重要な機能(働き)に「地域社会の共通言語」になるということがあります。

地域社会に暮らしている外国人が増えていくということは、その地域の日本人住民との間に何らかの共通言語が必要となるということです。その際に、共通言語ができるとすれば、それは「やさしい日本語」です。

今回のメルカリの取り組みは、こうした共通言語を企業の中で実現しようとするものと考えられます。こうした取り組みで重要なのは、相手が何を伝えようとしているのかを理解しようとする気持ちと、どうすれば相手に自分の考えを伝えられるかを考えることです。

ここで気をつけたいのは、大切なのは先に述べた「気持ち(マインド)」であって、どのような形式を選ぶかはそうした気持ちがあれば、自然に工夫されてくるということ、さらには、お互いに理解し合うことが重要なのであって、日本語か英語かという言語の違いは本質的な問題ではないということです。

庵功雄(いおり・いさお)さん:一橋大学国際教育交流センター教授。日本語教育の専門家。主な著書に『やさしい日本語――多文化共生社会へ』(岩波新書)、『<やさしい日本語>と多文化共生』(ココ出版・共編著)など。

 

伝えたい情報を、なるべくシンプルに、誰にでも分かりやすい「やさしい日本語」にして届けます。
本当に「やさしい」のか、日本に暮らす外国出身の人や、専門家にもアドバイスをもらいながら、本当にやさしいニュースを作っていきます。

毎週土曜日に配信予定です。

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