連載
#8 ○○の世論
「最近の若者は…」言ったことある人へ、40年前の世論調査をどうぞ
「友情信じ堅実世代」「社会には不安の目」。若者の意識調査を報じる紙面の見出しです。令和の話ではありません。今から40年前、1980年元日の朝日新聞です。対象となった昭和30年代生まれ(当時15~24歳)は、今は50代後半から60代前半。そんな「昭和の若者」の意識を、当時の世論調査からのぞいてみます。(朝日新聞記者・植木映子)
「○○を信じていますか」。いくつかの項目を挙げて、「信じる」「信じない」を聞いています。
「友情を信じている」85%は、この項目の中で最も高い数字でした。UFOを「信じている」「少しは信じている」も合わせた数字が65%というところは、70年代後半にブームだったこともあり、昭和の香りを感じます。また、テストの偏差値や学歴を信じる人が5割を切っており、「占い」を信じる若者は過半数でした。
「あなたにとってのヒーロー」を自由回答で聞くと、「友だち」と答えた人が19人で最多でした。「仲間と一緒に過ごす」と「ひとりで過ごす」のどちらが好きかを聞くと、83%と12%で、仲間と過ごす時間を選ぶ方が圧倒的多数でした。
一方で、こんなデータもあります。
ほぼ「自宅」です。仲間と過ごす時間は大切、でも、落ち着けるのは「家」なのです。
将来つきたい職業についても聞いています。
なかなか「堅実」なイメージの職業が上位にきています。以下、事務員27人、自営業24人、サラリーマン22人、デザイナー22人と続きます。
「若者らしさ」とは?この質問(選択式)に対し、昭和の若者は、上から順に「冒険心」(35%)、「純粋」(21%)、「ひたむき」(15%)と答えています。冒険心を求められているのは感じつつも、現実問題となると、堅実な職業を選びたい。そんな若者像が浮かんできます。
当時の若者は、この時代をどうとらえていたのでしょうか。「いまはどんな世の中だと思いますか」。この質問(選択式)に対しては、「競争」「不安」「でたらめ」と、マイナスイメージの言葉が上位に並びます。
戦後30年以上がたって、「平和」「豊か」であることが、もはや当たり前と受け止められた時代になっているのでしょう。
じゃあどんな時代に生きたいのか?こんな質問もありました。「昔に生まれ変わるとすれば、どの時代がよいと思いますか」
一番人気は奈良・平安時代。理由はよくわかりませんが、2位が原始時代であることも合わせて想像すると、どんな時代だったかある程度イメージを浮かべることができる近代や近世よりも、わからないことの多い昔の時代の方が、より魅力的でロマンをかき立てられたのかもしれません。
「堅実で高望みをしない」。最近の「ゆとり世代」や「さとり世代」と呼ばれる若者たちは、こう分析されることが多いようです。昭和生まれのベテラン世代も、「今どきの若者は……」と評しがちです。しかし、昭和のベテラン世代が若者だった頃の世論調査を見ると、堅実ぶりという点では今も昔もそれほどの違いはないのかもしれません。
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〈調査方法〉(1980年1月1日の朝日新聞より)全国172の調査地点の住民基本台帳から、昭和30年代に生まれた人(15~24歳=注:当時)を無作為に1500人抽出。1979年12月1、2の両日、学生調査員が直接面接して回答を聞いた。有効回答率は84%。回答者の内訳は、男性49%、女性51%。年齢別では15~19歳54%、20~24歳46%。また、中・高校生42%、大学生・その他学生15%、社会人43%。
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