医師たちがネットで直接、情報発信するようになりました。その先陣を切っている医師たち「SNS医療のカタチ」は、SNSでの発信だけでなくリアルイベントを重ねています。昨年12月8日に京都市であったイベントでは、ツイッターやネット記事で発信をしている3人の医師が登場。ついつい頼ってしまいがちなネット検索で得られる情報をうのみにすると「診察室でマイナスからスタートになりかねない」と、呼びかけました。
症状・病名、まずはネットで調べる習慣

総務省の2015年の調査では、「健康や医療について調べたいことがある」とき、すべての年代でおよそ7~8割がGoogleやYahoo!といったネットの検索サービスを使うと答えています。(総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」)

日本医科大などのチームが2016年、「がん治療」などで検索した結果の上位のページを調べると、そのサイトのうち、4割ほどでエビデンス(科学的根拠)がはっきりしない内容がありました。
山本さんは「ネットを使って情報収集するときには、この現状を知っておいてほしい」と話します。
YouTubeの医療情報も「大変なことになっている」

まだ、利用するメディアも変わってきています。2017年の総務省の調査では、テレビの利用時間は10、20代で最も低く、逆にネットの利用時間が長くなっています。
「若い世代ではテレビを観ない人も増えている。医療情報をYouTubeで調べてみると、怪しい情報だらけで大変なことになっている。ここはてこ入れしないといけないと思っています」と指摘します。
ネット情報で「病院に行かなくていいや」という人も
便利なネット検索。記者も「なんだか体調が不安かも」というときはまず検索してしまいます。
山本さんも指摘した「リスティング広告」は、左側に小さく「広告」のマークは出ていますが、これを「広告なんだ」「記事とは違うんだな」としっかり認識してクリックする人はどのぐらいいるのでしょうか。

「医療情報があふれすぎていますよね。本屋さんに行っても、大量の本があって、根拠がないものもたくさんあります。
間違った情報を信じている人が病院へ来ると、診察室でマイナスからスタートになります。病院に来てくれる人はまだいいのですが、間違った情報を信じて『病院に行かなくていいや』と選択する人もいます。
だから、不正確な情報と同じ土俵で、自分の情報も選択肢の一つに並んでいないといけない。病院に来る前の患者さんへアプローチする必要性をずっと感じていました」
最近では、自分の病気の治療経過を詳細に書いたメモのスクリーンショットを、ツイッターなどにアップする人もいます。
「善意からだとは思いますが、医師からすると『この症状にこの治療が当てはまらない人もいるのにな』と思ってしまいます」
医療はある意味インフラなので、全国的に等しく高い水準が目指されているし、最高水準の医療が安価で得られるよう保険制度に国費が投入されている。
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その点では、他の領域と違って「全国標準を遥かに超える孤高の天才」とか「一生懸命探せばやっと見つかる秘密の解決策」は、原則医療と親和性が悪い。
ネットの情報だけをうのみにしない
ただ、「学会」は自由に名乗れてしまうため、中には怪しげな「学会」もあります。「医学会の『分科会』に入っている学会かどうかを見るのも一つの手」と話します。ただ、入っていないからといって信用できないとは言えず、見極めが難しいこともあるといいます。

そして「最終的には、ググる前にぜひ病院で相談してほしい」と訴えます。
忙しそうな医師に込み入った相談をしてもいいのかな……と患者の一人としてはドキドキしてしまいますが、ネットで調べた情報をうのみにせず、自分の主治医としっかり話すことが大切なんだと改めて感じました。
記事の中で書かれているフェイク情報の見分け方、注意点。
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①「○○すれば必ず治る」など、大げさな表現を鵜呑みにしない
② 医師や薬剤師のような専門家であっても "個人の意見" は要注意
③ 一般的には公的機関や学術団体のような公益性の高い組織が出す情報は信頼できる