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ネットの話題

医療情報、ネット検索うのみにすると「診察室でマイナススタートに」

「がん 治る 健康食品」で検索すると、冒頭には「広告」が表示される
「がん 治る 健康食品」で検索すると、冒頭には「広告」が表示される

目次

医師たちがネットで直接、情報発信するようになりました。その先陣を切っている医師たち「SNS医療のカタチ」は、SNSでの発信だけでなくリアルイベントを重ねています。昨年12月8日に京都市であったイベントでは、ツイッターやネット記事で発信をしている3人の医師が登場。ついつい頼ってしまいがちなネット検索で得られる情報をうのみにすると「診察室でマイナスからスタートになりかねない」と、呼びかけました。

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症状・病名、まずはネットで調べる習慣

イベントに登壇したのは京都大学大学院医学研究科・消化管外科の山本健人さん(ツイッターアカウント:外科医けいゆう)、東京慈恵会医科大学葛飾医療センター小児科の堀向健太さん(ほむほむ@アレルギー専門医)、京都大学大学院医学研究科・皮膚科の大塚篤司さん(大塚篤司【医師・医学博士】)。総合司会は朝日新聞の朽木誠一郎デジタルディレクターがつとめました。
イベントの冒頭は、自身でサイト「外科医の視点」を開設し、ツイッターなどSNSでも情報発信をしている山本さんが、「ネットの医療情報が今どうなっているのか」を解説しました。
ネットの医療情報を解説する山本さん
ネットの医療情報を解説する山本さん
「みなさん習慣的にそうだと思いますが、困ったら症状・病名を検索しますよね。患者さんもネットの医療情報を調べて受診してくることがほとんどです」

総務省の2015年の調査では、「健康や医療について調べたいことがある」とき、すべての年代でおよそ7~8割がGoogleやYahoo!といったネットの検索サービスを使うと答えています。(総務省「社会課題解決のための新たなICTサービス・技術への人々の意識に関する調査研究」
医療情報の発信を始めた理由を語る山本さん
医療情報の発信を始めた理由を語る山本さん
山本さんがツールを使って、どのぐらいその言葉が検索されているかという「検索ボリューム」を調べたところ、「大腸がん」は7万回超、「頭痛」は11万回だったといいます。もし上位に誤った情報があれば、それを多くの人が見続けてしまう可能性があります。

日本医科大などのチームが2016年、「がん治療」などで検索した結果の上位のページを調べると、そのサイトのうち、4割ほどでエビデンス(科学的根拠)がはっきりしない内容がありました。
山本さんは「ネットを使って情報収集するときには、この現状を知っておいてほしい」と話します。

YouTubeの医療情報も「大変なことになっている」

Googleが検索結果の表示方法(アルゴリズム)を変えたり、ツイッターは「ワクチン」と検索されると厚労省のサイトへ誘導したりするなど、プラットフォーム側も対策をとっていますが、限界はあります。
Twitterで「ワクチン」と検索すると、表示される注意喚起
Twitterで「ワクチン」と検索すると、表示される注意喚起
特に、検索ワードが「がん 治る 健康食品」など複数の組み合わせになると、上位にそれを狙った広告(リスティング広告)が表示されやすくなります
山本さんは「健康食品やサプリメントが悪いというわけではないが、がんの標準治療(科学的根拠に基づき、いま使える最も良い治療)の機会を奪うようなものは良くない」と話します。

まだ、利用するメディアも変わってきています。2017年の総務省の調査では、テレビの利用時間は10、20代で最も低く、逆にネットの利用時間が長くなっています。

「若い世代ではテレビを観ない人も増えている。医療情報をYouTubeで調べてみると、怪しい情報だらけで大変なことになっている。ここはてこ入れしないといけないと思っています」と指摘します。

ネット情報で「病院に行かなくていいや」という人も

便利なネット検索。記者も「なんだか体調が不安かも」というときはまず検索してしまいます。

山本さんも指摘した「リスティング広告」は、左側に小さく「広告」のマークは出ていますが、これを「広告なんだ」「記事とは違うんだな」としっかり認識してクリックする人はどのぐらいいるのでしょうか。

「がん 治る 健康食品」で検索すると、トップには「広告」が出る。内容は自費診療を紹介するページ
「がん 治る 健康食品」で検索すると、トップには「広告」が出る。内容は自費診療を紹介するページ
イベント後半のトークセッションで、山本さんは医療情報を発信し始めた理由をこう語ります。

「医療情報があふれすぎていますよね。本屋さんに行っても、大量の本があって、根拠がないものもたくさんあります。
間違った情報を信じている人が病院へ来ると、診察室でマイナスからスタートになります。病院に来てくれる人はまだいいのですが、間違った情報を信じて『病院に行かなくていいや』と選択する人もいます
だから、不正確な情報と同じ土俵で、自分の情報も選択肢の一つに並んでいないといけない。病院に来る前の患者さんへアプローチする必要性をずっと感じていました」

最近では、自分の病気の治療経過を詳細に書いたメモのスクリーンショットを、ツイッターなどにアップする人もいます。

「善意からだとは思いますが、医師からすると『この症状にこの治療が当てはまらない人もいるのにな』と思ってしまいます」

ネットの情報だけをうのみにしない

山本さんは「学会などの学術団体や厚生労働省などの公的機関など、営利目的ではないところは、専門家で協議して情報を載せているのである程度信用していい」と語ります。

ただ、「学会」は自由に名乗れてしまうため、中には怪しげな「学会」もあります。「医学会の『分科会』に入っている学会かどうかを見るのも一つの手」と話します。ただ、入っていないからといって信用できないとは言えず、見極めが難しいこともあるといいます。
日本医学会に加盟している「分科会」を検索できるページ
日本医学会に加盟している「分科会」を検索できるページ
山本さんは、医師は「絶対治る」といった断定的な表現はしないとした上で、「極論を書いている記事・コメントは危険」「複数の専門家が関わっていれば信用に足るだろうと判断して」とアドバイスします。

そして「最終的には、ググる前にぜひ病院で相談してほしい」と訴えます。

忙しそうな医師に込み入った相談をしてもいいのかな……と患者の一人としてはドキドキしてしまいますが、ネットで調べた情報をうのみにせず、自分の主治医としっかり話すことが大切なんだと改めて感じました。
 

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