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クイーン、来日直前の盛り上がり「フレディ後」世代も熱狂の理由

1975年の来日コンサートで撮られた長髪のフレディ(c)Koh Hasebe / Shinko Music Archives
1975年の来日コンサートで撮られた長髪のフレディ(c)Koh Hasebe / Shinko Music Archives

目次

2020年に結成50年目を迎えるQueen(クイーン)とアダム・ランバートによる来日コンサートまで、あと1カ月。年が明ければ、クイーン関連の出版やイベントが目白押しです。レコードやCDを作って売れば成功した時代は終わり、クイーンの姿はサブスクリプション時代のバンドのあり方の一つを示しているのかもしれません。時代が変わってもクイーンが色あせないのはなぜか、私たちはクイーンから何をくみ取ればいいのでしょうか。

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© Koh Hasebe / Shinko Music Archives
© Koh Hasebe / Shinko Music Archives

クリスマスビデオに込められたメッセージ

YouTube公式チャンネル「Queen Official」チャンネルに12月15日にアップされた『Thank God It's Christmas』(サンク・ゴッド・イッツ・クリスマス)のアニメーション動画が話題になっています。

この曲は1984年にリリースされましたが、ブライアン・メイとロジャー・テイラーは新しいメッセージを発信し続けています。歌詞付きの動画は日本時間で12月24日午後6時現在で、102万回再生されています。

12月15日に公開された『Thank God It's Christmas』(サンク・ゴッド・イッツ・クリスマス)のアニメーション動画 出典: YouTubeの「Queen Official」

雪降る公園で一人たたずむ男性とどこからかやってきた犬。アパート群から漏れる灯りの奥には、家族や友人とクリスマスを準備する姿が描かれています。

一般的には「クリスマスは楽しいもの」と考えられ、楽しい思い出を想像する人がいるでしょう。でも、それと同じぐらい、クリスマスをストレスに感じる人たちもいるということを示しています。

このビデオを監修したブライアンやロジャーによって、私たちが忘れがちなことを思い返させてくれます。

ブライアン・メイの公式インスタグラムも、クリスマス色に染まっています。72歳とは思えないほど、頻繁に写真をアップしています。

12月中旬にアップされた投稿は、欧米では伝統的なクリスマスディナーに出てくる七面鳥の丸焼きですが、斜めの赤線を入れた写真がアップされています。タップすると野菜料理の写真が続いていました。

伝統的なクリスマスディナーに疑問を投げかけている投稿
伝統的なクリスマスディナーに疑問を投げかけている投稿 出典:ブライアン・メイのインスタグラム

天体物理学の博士号を持ちますが、動物愛護にも熱心です。ブライアン自身も無意識のうちに食べてきたと書き込んでいますが、この楽しみのためだけに鳥は太らされ焼かれていくことに疑問を投げかけています。この写真には、伝統的なクリスマスディナーを見直そうというメッセージが込められています。

来日した後、ブライアンは日本でどんなメッセージを残すのか、滞在中のインスタも目が離せません。

いち早く採り入れたファンの「参加」

クイーンは1971年2月に、ブライアン、ロジャー、フレディに、ジョン・ディーコンが加わって結成されたロックバンドです。ミレニアル世代の日本人には、CMやドラマの楽曲、そして映画『ボヘミアン・ラプソディ』の印象が強いかもしれません。

YouTubeの公式チャンネルで10月24日に公開した3本の動画『You Are The Champions』は、ファンが歌ったり、楽器を演奏したり、ダンスをしたりしている姿を撮影した動画や、アニメーションを組み合わせて作ったファンビデオです。

ファンが歌と楽器演奏で応募した動画を組み合わせて作った『Bohemian Rhapsody』のファンビデオ 出典: YouTubeの「Queen Official」
公募で集められた画像を組み合わせて作った『A Kind Of Magic』のファンビデオ 出典: YouTubeの「Queen Official」
ファンが応募したダン動画を組み合わせて作った『Don't Stop Me Now』のファンビデオ 出典: YouTubeの「Queen Official」

映画でもでてきた、フレディと観客とのコールアンドレスポンス、観客の足踏みと手拍子を楽器に仕立てた『We Will Rock You』など、ファンにバンドとの近さを感じさせてくれる演出は今でも変わりません。

© Koh Hasebe / Shinko Music Archives
© Koh Hasebe / Shinko Music Archives

過去の音楽でなく現在の音楽として生き続けるクイーン

フレディの命日に「シンコーミュージック・エンターテイメント」のイベントホールで行われた献花式にも、650人が詰めかけました。

昨年も参加したという1970年代からのファン(57)は、映画のヒットから1年が過ぎ「世の中が変わった感じがしています」と話します。そして「自分が好きだったものが、若い世代にも受け入れてもらえるのがうれしい」とも感じています。過去の音楽ではなく、現代の音楽として通じているからこその喜びです。

70年代は海外のアーティスト情報は雑誌が中心で、洋楽を聴くのはレコードかラジオの時代でした。今のように、SNSでファン同士が情報交換したり、つながったりできる環境はなく、今でこそ当時からミュージックビデオを作っていた先見性が評価されますが、誰でも無料でどこでも見られるYouTubeはありませんでした。

「年を重ねれば、忘れ去られたり、衰退したりしてしまうもの、この年齢になって、70年代や80年代のミュージシャンや楽曲が再び注目される時代が来るなんて思ってもいませんでした」

「クオリティーは高かったですが、基本的には4人は好きなことを貫いてきただけのこと。とことん好きなことをやったらいい、ということを学びました。『ボヘミアン・ラプソディ』の曲だって、4人が自分たちの好きなことを1曲に詰め込んだだけ。それできめられるのがすごいと思います」

来日コンサートは仕事を休み、さいたまスーパーアリーナだけでなく、大阪や名古屋にも駆け付ける予定です。

一方、梓優美香さん(28)は、名古屋公演に行く予定です。「意識してクイーンの曲を聴いてきたというより、日常生活の中で流れていたいい曲がクイーンでした」。そんな感覚で育った、ミレニアル世代のライト層といわれるファンです。

「生フレディの曲を聴いてみたかった、掛け合いをしてみたかった……。フレディはもういませんが、今行かなくていつ行くのでしょうか」

70年代から追っかける「宝箱」を持つファンとは違いますが、来日コンサートのほか、1月15日から東京や横浜、大阪で順次開かれる「クイーン展」にも行き、「追体験」をしていくそうです。

【関連リンク】クイーン愛のミレニアル世代「聴いていると自分のことを歌っていると思わせるんです」:telling,
ライブエイドのチケット
ライブエイドのチケット 出典: 井口さん提供

「日本の観客が僕らを変え、成長させてくれた」

洋楽雑誌『ミュージック・ライフ』(現在は休刊)で一番多く表紙を飾ったバンドが、クイーンでした。「シンコーミュージック・エンターテイメント」からは、今回の来日に合わせて関連書籍の出版ラッシュが続きます。

12月27日にピアノの弾き語り用にアレンジを加えた楽譜『ピアノ弾き語り クイーン』が発売されるほか、年明けの1月9日に『バンド・スコア クイーン・ベスト ワイド版』、1月16日にはブライアンやロジャーが日本への思いを語ったインタビューを掲載した『QUEEN in JAPAN』が発行されます。同社によると、『QUEEN in JAPAN』での独占インタビューではこんなことを言っているそうです。

「日本の観客の熱狂が僕らを変え、成長させて別の存在にしてくれたんだ」(ブライアン)

「ティー・セレモニーはとても整然として素晴らしかった。僕らみんな、感激したんだ」(ロジャー)

そして「僕だって5年後には、演奏しているかどうかわからないからね」と。

同社出版統括の井口吾郎さん(63)は、1985年、イギリスのウェンブリー・スタジアムで開かれた「ライブエイド」を体感した一人です。「世界中がつながったな、と実感できた瞬間でした」

1975年の初めての来日コンサートでは、羽田空港に女性ファンが詰めかけ、メンバーを驚かせました。その後も含めて来日時に新幹線で移動する際は、ホームにファンがあふれていました。その来日写真がシンコーミュージックには今でも残っていて、その一部が「クイーン展」で公開されます。

東京・日本橋高島屋を皮切りに、日本3都市で開催決定!!

ライブエイドのプログラム
ライブエイドのプログラム 出典: 井口さん提供

日本滞在中、どう過ごすのか

12月4日と5日にあった「U2」の13年ぶりの来日コンサートのほか、「KISS」もファイナルツアーとして12月に5カ所でのコンサートを終え、31日の『NHK紅白歌合戦』に出演します。

洋楽全盛、70年代や80年代に輝き、活動を続けてきたロックバンドたちのライブが、「生で聴けるのは最後かもしれない」と感じてしまう時代に入ってきました。

50年近く経った今でも、ファン層を広げ、世界中の人たちから愛されているのは、色あせない楽曲のほかに、ファンとの距離の近さが上げられます。それはアイドル顔負けのファン参加型の取り組みを今も続けているからです。

「クイーン・オフィシャルサイト」では、フレディのように歌えるかを確かめられる「Freddie METER」があったり、ファンが楽曲に合わせて歌や演奏、ダンスをしたりした応募動画で作ったファンビデオを作成するなど、新曲の発売やコンサートが近くでなくてもファンを飽きさせない仕掛けが随所にあることからも伝わってきます。

この原稿を書いている途中にも、ブライアンがインスタグラムで新しいクリスマス動画をアップしてきました。

ギターの音色が心地よいクリスマス・アニメーション
ギターの音色が心地よいクリスマス・アニメーション 出典:ブライアン・メイのインスタグラム

彼ら自身は変わらないスタンスですが、インターネットやソーシャルメディアが発達した時代と絶妙の相乗効果を生み出しているのかもしれません。

クイーンは、韓国で1月18日と19日のコンサートを終えた後、来日します。今回は、日本滞在中、どう過ごすのか、目が離せません。

クイーン来日まで1カ月

クイーンを巡る話題について、朝日新聞社が運営するウェブメディア「withnews」のほか、「telling,」や「論座」でもそれぞれの視点で記事を順次配信していきます。

・クイーン愛のミレニアル世代「聴いていると自分のことを歌っていると思わせるんです:telling,
 

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