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連載

#36 「見た目問題」どう向き合う?

私たち、白い髪染めません!「アルビノ=きれい」で済ませない生き方

「アルビノ」の粕谷幸司さん(左)・神原由佳さん(右)と対談した、人気YouTuberのよききさん。等身大の当事者の姿に迫りました。
「アルビノ」の粕谷幸司さん(左)・神原由佳さん(右)と対談した、人気YouTuberのよききさん。等身大の当事者の姿に迫りました。

目次

生まれつき髪や肌の色が薄い「アルビノ」。一般に「きれい」といったイメージが強いかもしれません。一方で、就職活動の際に企業から黒髪にするよう求められるなど、人生で壁にぶつかる人もいます。「この特徴的な見た目は、自分のアイデンティティー。染める気はないです」。そう言い切るのは、二人の当事者です。社会の中で、様々に語られてきたアルビノ。その等身大の姿について知りたいと、人気YouTuberのよききさんが、ストレートな疑問をぶつけました。(朝日新聞記者・岩井建樹)

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当事者は1~2万人に一人

アルビノとは、生まれつきメラニン色素をつくる機能が損なわれている遺伝子疾患です。色素がないため紫外線のダメージを受けやすく、弱視を伴う人もいます。1~2万人に一人という大変珍しい疾患です。

「アルビノ・エンターテイナー」の粕谷幸司さん(36)と、社会福祉士の神原由佳さん(26)は、いずれも当事者。今回、メイク動画などを配信し、10~20代の若者から人気が高いYouTuberのよきさんと、withnewsのYouTubeチャンネル「withよきき」の収録で対談しました。

よききさんには、「アルビノになりたい」と髪の毛を白くした動画を配信し、「炎上」した経験もあります。収録では「アルビノあるある」をテーマに、日々の暮らしぶりなどについて語らいました。

相手の気持ちも、自分の気持ちも大事にしたい

 
アルビノあるある(1)
「きれい」と言われがち

 

よききさん

確かに、きれいですよね……。

 

粕谷さん

ありがとうございます! 僕はきれいって言われると、うれしい! 僕のようなおっさんでも「きれいだね」って言われるのは、僕がアルビノだからですね。

 

神原さん

「アルビノ=きれい」とのイメージはプレッシャーかな。私、そんなきれいじゃないし。

 

神原さん

私も髪色を「きれいね」と言われることもあります。うれしい反面、モヤッとしてしまうことも。大学生のとき、バイトしようと思ったら「髪の毛を染めないと採用できない」と言われた経験があります。

だから、「アルビノ=きれい」と強調されるのは、複雑というか。もちろん、相手の好意はありがたい。相手の気持ちも、自分の気持ちも大切にしたいです。

粕谷さんと神原さんは瞳の色が青く、左右に揺れる眼振(がんしん)と呼ばれる症状があります。収録中、よききさんが二人の瞳をのぞき込む場面もありました。

 

よききさん

目も青くて、きれいだと思います。でも、粕谷さんは喜んでくれるけど、神原さんのように複雑な思いの方もいるわけで、どう言えばいいんでしょうか……。

 

神原さん

変に気を遣わなくてもいいですよ。状況によると思うんです。アルビノの苦労話をしているときに、「でも、きれいじゃん」と言われたらやっぱり複雑です。

でも、今の状況で、よききさんに「目がきれい」と言われるのは嫌ではないです。
カメラに向かって「眼振」の様子を見せる粕谷さん(左)。
カメラに向かって「眼振」の様子を見せる粕谷さん(左)。

後輩に「ドイツ人だ」と伝えたら……

 
アルビノあるある(2)
外国人・ヤンキーに間違えられる

 

よききさん

外国の方に間違えられるのはわかるけど、ヤンキーにも間違えられるんですか?

 

神原さん

学校の入学式に、金髪の同級生がいたらどう思いますか? 4月はざわつきますよ。外国人に間違えられて、英語で道を尋ねられたこともあります。

 

粕谷さん

大学2年生のとき、後輩に「生まれも育ちも日本だけど、ドイツ人」って言っていたら、後輩はずっと信じていました(笑)。

肌に日光が当たり、やけどすることも

 
アルビノあるある(3)
「短命」「病弱」「日にあたれない」?

 

よききさん

ネット上のまとめ記事にいろいろ書いてありますね。「病弱だ」とか、「日に当たると死んでしまう」とか……。

 

神原さん

とんでもありません。たくましく生きています! 私は、夏でも半袖です。野外フェスにだって行きますよ。市販の日焼け止めで対処しています。

 

粕谷さん

僕は、夏も冬も長袖です。肌に太陽光が当たると、やけどしちゃうんですよ。でも日焼け止めを塗るとベタベタするのが嫌なので、僕はいつも長袖です。日傘も使います。
収録は和やかな雰囲気の中で行われた。
収録は和やかな雰囲気の中で行われた。

「出産は、人生の選択肢」

その後、話題は出産の話にも広がりました。

 

神原さん

アルビノは遺伝子疾患ですが、遺伝の確率はとても低いと言われています(片方の親がアルビノの場合、100分の1より低い確率・詳しくはこちら)。私の両親もアルビノではありません。

出産については、人生の選択肢として考えています。

 

粕谷さん

僕は結婚したいし、出産にもネガティブな思いはありません。アルビノの知人が出産した時、「残念ながらアルビノじゃなかったよ」との報告を受け、「残念だったねー」と冗談を言い合いました。

僕のようにアルビノであることを前向きに受け入れている人であれば、遺伝への懸念も小さいと思います。

 

粕谷さん

よききさんの子がアルビノだったらどうですか?

 

よききさん

自分の子だったら、どんな子が生まれてもかわいいから、ちゃんと向き合って育てたい。肯定しまくろうと思います。

見た目を入り口に、いろんな「私」知って

二人には就職活動で、髪色を問題視された経験があります。なぜ黒く染めなかったのでしょうか?

 

神原さん

「就活のために染める」という考えもあるけど、私は染めたくないです。生まれつきの色なのに、染めないといけない社会ってどうなのかなって思います。見かけで判断せず、能力を見てほしいです。

 

粕谷さん

髪の毛を染めてでも入りたい会社があれば染めればいいと思います。その人にとって、大事なことは何なのか。自分で選べることが大事です。

僕は髪色をアイデンティティだと思っているので、「染めろ」と言われても、染めません。

「アルビノ」に対し、様々なイメージが先行している現状にも話が及びました。

 

よききさん

「アルビノ」というだけで、「きれいだ」と評価されるかもしれないですね。

 

神原さん

私にとって「アルビノ」は、自分を構成する要素の一つでしかありません。もちろん、入り口は、この特徴的な見た目であってもいいと思います。

でも、そこにとどまらず、よききさんが私に「好きな食べ物は何ですか?」と聞いてくれたように、いろんな「私」を知ってもらえるとうれしいです。私も人を肩書で判断せず、いろんな側面を知りたいなと思っています。
観覧者は、神原さんたちの言葉に聴き入っていた。
観覧者は、神原さんたちの言葉に聴き入っていた。

イメージではなく、等身大の姿知ろう

粕谷さんと、神原さん。同じアルビノでも考え方や、とらえ方に違いがあります。

アルビノとして生まれたことを、前向きにとらえる粕谷さん。だから「アルビノ=苦労している人」とみられることを嫌います。一方で、神原さんは「黒髪に生まれたかった」とかつて思っていました。バイトの面接で「その髪色では雇えない」と言われた経験もあり、「アルビノ=美しい」と言われても、ちょっと複雑な思いを抱いてしまいます。

親に「かわいい」と言われて育ったことについても、粕谷さんは「おかげで自己肯定感が育まれた」ととらえます。神原さんは「両親にとても感謝している反面で、『普通でない』ことへの不安な気持ちも受け止めてほしかったな」と振り返ります。

二人が一致していたのは、白い髪色を自らのアイデンティティととらえ、「染めない」生き方を選択していることです。とはいえ、アルビノの方々の中には、就職活動のため、精神安定のために染める人もいます。粕谷さんも、神原さんも「本人が選択できることが大事」と言います。

何を言いたいかというと、アルビノの方々も、とても多様だということです。生まれた年代も地域も、性格も家庭環境も、一人一人が違うから当然です。「アルビノ=美しい」「アルビノ=苦労している」という見方は、一面的な見方に過ぎません。

とはいえ、私たちはマイノリティの方々をどうしても、偏ったイメージでとらえがち。それは知らないから。神原さんが「アルビノは自分を構成する要素の一つでしかない」と言っているように、等身大の当事者の姿を知ることが大切です。

メディア側にも反省があります。アルビノをとりあつかったコンテンツは「美しい」や「苦労を乗り越えて幸せになる」との単純な描き方に偏っています。そうした情報に触れる人たちのイメージが偏るのも致し方ありません。これは、外見に症状がある人たちの取材を続け、『この顔と生きるということ』を出版した私自身も問われています。

今後も、当事者の多面的な姿を伝える努力をしていきたいと考えています。

【外見に症状がある人たちの物語を書籍化!】
アルビノや顔の変形、アザ、マヒ……。外見に症状がある人たちの人生を追いかけた「この顔と生きるということ」。当事者がジロジロ見られ、学校や恋愛、就職で苦労する「見た目問題」を描き、向き合い方を考えます。

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