連載
#14 ざんねんじゃない!マンボウの世界
「マンボウをさばきましょう!」料理実況に騒然 寄生虫も塩焼きに…
さばいた理由は『そこにマンボウがいたから』

「じゃマンボウをさばきましょうか!」
11月半ば、突然の「マンボウさばき宣言」とともに、台所に置かれたマンボウ丸ごと一匹の写真を投稿したのがみなせさん。このツイートを起点に、マンボウをさばいて調理する様子を写真や動画とともに実況するスレッドが始まります。
みんな、冬コミが近いんだから、原稿しなきゃダメだよ!
— みなせ★コミケ 12/30 C97_3日目_南4_ニ-04a (@Ton_beri) November 13, 2019
私もこれから原稿です!
じゃマンボウをさばきましょうか! pic.twitter.com/nU9ze1fhcm
「さばけるのが普通にすごい」「このスレ閲覧注意だけど見ごたえある」「おいしそう」「マンボウ解体ショーからマンボウ御膳まで」「これだからtwitterはやめられない」などの反響があり、7千件以上のリツイート、1.4万件以上のいいねが集まっています。

理由は「そこにマンボウがいたから」
「まず前提として、私には『変わった物を調理して食べる』という趣味があります。このため、近所の魚屋さんにて、マンボウを見た瞬間に購入してさばいて食べることが決まりました。さばいた理由は『そこにマンボウがいたから』というのが正しい表現になります」
今回までマンボウに触れたこともなかったというみなせさん。「おそらく、別の珍しい魚がいた場合、確実に同じように購入してさばいています」という力強い返答をもらいました。これまでも、ザリガニやカミツキガメ、ウツボや飼料用トウモロコシなどを調理して食べたことがあるという強者です。
ではこれより
— みなせ★コミケ 12/30 C97_3日目_南4_ニ-04a (@Ton_beri) August 31, 2019
米国産の飼料用トウモロコシの調理を始めます!
果たして、人間が食べられる食味のものが作れるのでしょうか!?
さぁ実験と行こう! pic.twitter.com/V1jrWzqRBa
マンボウには小骨がなく、背骨を含む骨も柔らかいため、簡単に包丁で切ることができたといいます。マンボウは独特の臭いがすると聞きますが、生臭さはあまりなかったとのこと。しかし、さばき方はイワシやサンマなどの一般的な魚とは大きく異なり、かなり苦労したようです。それでも、実況をしながらでも、2時間半程度で3枚におろすことができたというのが、みなせさんのすごいところ。
から揚げや天ぷら、味噌汁にも…
調理方法はこれまでの豊富な調理経験や、ウェブで検索するなどして、即興で決めていくのがみなせさんのスタイル。マンボウは白身で水分が多く、脂っ気がない特徴から、水を抜いたり、油で揚げたりする方法を試していったそうです。

マンボウの身は生だとかなり水っぽく、柔らかいそうですが、火を通すと引き締まって更においしいとのこと。少しコリコリした触感で、味はヒラメの縁側に似ているそうです。
あえて順位をつけるとすれば、「マンボウの腸のみそ炒め」が一番おいしかったそう。実況ツイートでも「コリコリした食感ながら噛み切りやすい」「最高にビールにあいますよこれは!」と紹介されています。

おそるべし、寄生虫まで…!

「若干の抵抗はありましたが、毒はないとの事なので、あまり考えずに口に放り込みました」(みなせさん)。もうさすが、としか言いようがありません。
澤井さんによると、マンボウには他にもさまざまな寄生虫がいるため、火を完全に通すなど処理には注意が必要だといいます。
江戸時代にもマンボウ料理があった
定置網漁が行われている地域では、他の魚に混ざってマンボウが漁獲されることもあります。特に東北地方や三重、高知県などでは、季節によってはスーパーでマンボウの切り身が並び、食材として親しまれています。東北地方では、マンボウの刺し身を酢味噌で食べるのが伝統的だそう。マンボウ自体の味はかなり淡泊なので、濃い味付けが好まれたのでしょうか。

澤井さんによると、日本のマンボウ料理の歴史は長く、江戸時代の料理本「料理物語(寛永十三年版)」にも、マンボウは「うきき(マンボウの地方名)」として登場しているそうです。そこには、お湯をかけて、冷やしてから生姜酢で食べるという、冷しゃぶのようなレシピが紹介されています。

海外に目を向けると、台湾にはマンボウ料理の専門店があるなど、より身近な存在のようです。
マンボウの知見、冬コミで
マンボウはネットで「最弱生物」とネタにされることも多いですが、そういった情報のほとんどは誤ったもの。正しい情報に触れる機会が少ないため、イメージも先行しやすいのかもしれません。しかし、生の情報を得て、生物多様性への理解を深めることは、環境保護を考える上でも大事なことです。
みなせさんの料理は、そんなマンボウの存在に目をむける大事なきっかけになりました。
みなせさんは、12月に東京国際展示場で開催されるコミックマーケットに出展し、今回得られた知見を含む、食べ物関連の評論本を販売する予定です。みなせさんの食にかける飽くなき挑戦に、今後も目が離せません。
【withnewsからのお知らせ】マンボウのトークイベントを開催します

■イベント概要
「最弱伝説」にされたマンボウと「最強生物」と呼ばれたクマムシ
~インターネットで「ネタ」にされてきた生き物たち~
「マンボウは上を向いてねむるのか」(ポプラ社)刊行記念
■日時:2019年12月6日(金)20時~22時
■場所:本屋B&B 東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F
■チケット:本屋B&Bのサイトでお申し込みください
前売 1,500円 + ドリンク500円(税別)
当日店頭2,000円 + ドリンク500円(税別)
■出演
澤井悦郎(マンボウ研究者)
鈴木忠(クマムシ研究者)
野口みな子(司会、朝日新聞「withnews」編集部)
お申し込みは【こちら】からどうぞ。