連載
#1 ○○の世論
「進次郎の世論」初登場1位だった「次の総裁」 入閣後に「失速」?
【連載:○○の世論】滝川クリステルさんとの電撃婚や環境大臣就任など、何かとネットやメディアをざわつかせる政治家・小泉進次郎氏。将来の首相候補として期待を集める一方で、最近の言動には批判も出ています。そんな進次郎氏が「次の自民党総裁としてふさわしい」人物として、世論調査で初めて名前が挙がったのが2018年10月でした。最新の調査でもトップ。とはいえその間の世論調査の数字の動きを見ると、進次郎氏の「勢い」にはやや陰りがあるようです。小泉進次郎氏の世論、1年間の変化と父・純一郎氏との違いを探りました。(朝日新聞記者・磯部佳孝)
朝日新聞の世論調査では、次の首相・総裁候補、いわゆる「ポスト安倍」にだれがふさわしいのかを定期的に尋ねています。初めて名前が出た2018年10月の調査では、進次郎氏は石破茂氏を引き離しトップでした。
2019年5月の調査では進次郎氏はさらに差を広げました。
環境大臣として初入閣した直後の2019年9月調査で、進次郎氏を含む7人の候補から選んでもらったところ、結果はこうなりました。
調査時期によって顔ぶれが変わっているため単純な比較はできませんが、初入閣して政治家としてステップアップした進次郎氏の数字が若干下がっています。
ちなみに父親の小泉純一郎氏が首相になる前はどうだったのでしょうか。
「ポスト橋本(龍太郎)」を争った1998年7月の調査を見てみましょう。
当時56歳、厚生相(現厚労相)の小泉純一郎氏は世論調査ではほぼ横並びのトップでした。しかし、その後の自民党総裁選では党国会議員と県連代表による投票で、小渕氏に大差で破れました。有権者の人気はある程度あっても、党内で一匹狼的な存在だった小泉純一郎氏は国会議員を大きく動かすことはできなかったのです。
2000年4月に小渕首相が病に倒れ、森喜朗氏が政権幹部による「密室談合」で後継に選ばれると、世論の逆風を受けます。森内閣は2001年2月の調査で、内閣支持率がわずか9%を記録し、4月に退陣。4月調査は次のような結果となりました。
小泉純一郎氏は「自民党をぶっ壊す」と訴え、世論の大きな支持を得ました。4月の総裁選では地方票が小泉支持に雪崩を打ち、国会議員も追随して圧勝しました。
一方の進次郎氏。父親譲りとも言われる発言の歯切れの良さは、売りの一つです。環境大臣になる前、安倍内閣の不祥事が国会で焦点となった2018年5月には、進次郎氏は我々記者団にこう言い切りました。「(安倍首相が)『うみを出し切る』と言ったわけですから、その通りの行動をしなければいけない。疑惑払拭(ふっしょく)、国民が納得してくれるために必要なことはちゃんとやるべきだと思いますね」
だが最近は、その持ち味が影を潜めているように見えます。進次郎氏は今年9月の入閣後、環境大臣として初めての外遊先で「気候変動問題に取り組むことはセクシー」と発言し、さらに記者から具体策を問われて答えに窮する場面もありました。国会で野党から安倍内閣の不祥事に対する入閣前の発言を問われると、進次郎氏は「安倍内閣の一員」という言葉を使い、以前のような政権批判を封印しています。
世論はそんな進次郎氏をどう見ているのでしょうか。10月調査でこう尋ねました。
一見すると、進次郎さんのイメージは変わっていないようです。ただ、「悪くなった」が「よくなった」を上回っています。
加えて、2019年9月調査の「ポスト安倍」では、石破氏との差は縮まっています。父親の純一郎氏が、森内閣への世論の批判という「追い風」に乗って、右肩上がりにポイント上げて総裁選の勝利という「ゴール」に行き着いたのに比べると、その動きはいまのところ対照的ともいえます。
38歳で閣僚になって、2カ月余り。そもそも、59歳で総理になった父親と同じ道を歩むなら、20年以上の時間があります。父親のように、有権者を味方につける言葉の力や、国のリーダーとして期待できるような実績を積むにはまだ時間が必要なのかもしれません。
1/5枚