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#32 #父親のモヤモヤ

予想外の双子育児「4歳までは先見えず」 父親向けの情報探し求めた

工藤啓さんの双子のきょうだい(2歳ごろ)=提供
工藤啓さんの双子のきょうだい(2歳ごろ)=提供

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。
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双子の子育ては分からないことだらけ。しかも、母親向けの情報に比べ、父親向けの情報が足りない――。若い人の就労支援をする認定NPO法人「育て上げネット」理事長で、4歳の双子を育てる工藤啓さん(42)は、そう感じました。双子育児で困ったことは? 父親がほしかった情報とは?(朝日新聞記者・金澤ひかり)

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予想外の双子に戸惑い

工藤さん夫妻は現在、8歳、6歳、4歳(双子)の4人兄弟の子育て中です。

双子が生まれる前から、工藤家では「育児は2人でするもの」という認識が家庭内で共有できていたといいます。自身でNPO法人を運営し、妻も同じ法人内で働いており、仕事もある程度融通が利きやすいという事情もありました。

テレワークで働けるように工夫していたり、飲み会もオンラインで参加する「スカイプ飲み会」が定着していたり――。「子育てするキャラ、というキャラ作りが周りに定着していたのも助かった」と話します。

2014年、2人の男の子の子育て中、妻の妊娠がわかりました。

3番目は男の子かな? 女の子かな? と楽しみにする中、医師から告げられたのは「双子です」――。工藤さんは「双子は予想外だった」と戸惑ったそうです。

赤ちゃんの抱っこの仕方を再現する工藤さん
赤ちゃんの抱っこの仕方を再現する工藤さん 出典: 本人提供

父親向けの情報、探し求めた

双子育児については、知らないことがたくさんありました。

双子の妊娠は、切迫早産の可能性が高まるなどするため、予定日の前から入院生活を送る「管理入院」が必要な場合が多いといいます。

工藤家では、妻が入院した場合、出産までの間、家には上の兄弟と父親が残されます。実際、双子出産までの2カ月間、妻が入院しました。長男と次男、父親の3人での生活は、妹家族の助けもあり、それほど困ることはなかったといいますが、「これから双子を迎える家庭にとっては、双子の出産前には管理入院が必要な場合が多いということを事前に知っておくだけで、何か準備を始められる家庭もあるのでは」と話します。

ほかにも、お風呂はどうすれば? 自転車の安全、2人同時にどう確保する? など疑問は尽きませんでした。

仲がいい4人の子どもたち=2019年3月
仲がいい4人の子どもたち=2019年3月 出典: 工藤さん提供

さらに、「『そのとき父はどうする、どうしてほしい』という情報が弱かったんですよね」と工藤さん。初めてのことはまず先人から学べと、Amazonで双子に関する書籍がないか調べ、数冊購入しました。しかし、どうもしっくり来ませんでした。母親向けの情報がほとんどを占めていたと言います。

「授乳一つとっても、母親が母乳をあげるときにはなんとか二人を抱えて一緒に授乳できるけど、父親は哺乳瓶を持ち、赤ちゃんを支えるだけで二つの手がふさがってしまう。二人同時にミルクを欲しがったらどうすれば良いの?」など、知りたいことはどんどん出てきたといいます。

書籍以外にも、父親が書いているブログをネットで探したりもしましたが、なかなか見つからなかったといいます。「男性は、女性に比べて不安を発信することがあまりないのかもしれません」と工藤さん。

「いまでこそ、仕事などのつながりで出来た双子パパ友が4人いますが、最初は本当に情報が共有できませんでした」

自身の体験、「先が見える」情報に

「ちょっと先のことが見通せた方がいいことはたくさんある」と繰り返す工藤さんは現在、自身の双子育児の体験を出版するためのクラウドファンディングに挑戦しています。

きっかけは、10月に判決が確定した、三つ子の次男を暴行死させた母親の裁判でした。この裁判では、三つ子の育児をする中でうつ状態となった被告に思いを寄せる声が上がり、署名活動も起きました。

【関連記事】三つ子次男死なせた母、実刑判決が確定へ 上告せず

「周りの双子育児中の家庭も不安定になり、『虐待していたかも』と話す親もいました」と工藤さん。自身も、「双子が4歳になるまで、先が見えなかった。なって初めて、『抜けた』感覚があった」と話します。

そんな経験もあって、今回の挑戦は、孤立する双子育児中の家庭に、「関心を寄せている人たちがいる」という思いを届けたくて始めたものでもあると言います。「240万円を募るクラウドファンディングですが、1人に240万円を出してもらうのではなく、できるのなら240万人から1円ずつほしい。そのくらい、たくさんの人たちが支えてくれているんだというメッセージにもしたい」と話します。

「双子本」を作るため、クラウドファンディングに挑戦中
「双子本」を作るため、クラウドファンディングに挑戦中 出典:工藤啓さんのクラウドファンディングページ

出版予定の本の読者は、双子育児に関わる親やその周囲の人までを想定しています。もちろん、父親に必要と思われる情報も盛り込む予定です。「父親と母親、それぞれの視点での見え方の違いも紹介したい」と、これまで双子育児をそれぞれの目線でつづってきた工藤さん夫妻のブログの内容をベースに、本の内容は練り上げていくといいます。

予防接種や保育園入園など、妊娠から3歳くらいまでのイベントを時系列で並べ、その時々の選択について良かったことと、そうでなかったものも盛り込む予定です。

例えば、多くのイベントについてまわる「手書き」の提出書類。工藤家の場合、画数の多い「藤」の字を書くのが結構な苦労だったそう。「保育園に相談した上で『くどう』とひらがな表記にしてもらいました」。他にも、ダブルバギーや、双子を並べて座らせられる「ふたごじてんしゃ」を購入したことで移動の負担が軽減されたことなど、「役にたったもの」も体験を元に紹介するつもりです。

工藤さんは、「情報があれば、備えられる」と話しています。

父親のモヤモヤ、お寄せください

記事に関する感想をお寄せください。母親を子育ての主体とみなす「母性神話」というキーワードでも、モヤモヤや体験を募ります。こうした「母性神話」は根強く残っていますが、「出産と母乳での授乳以外は父親もできる」といった考え方も、少しずつ広まってきました。みなさんはどう思いますか?

いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)、ファクス(03・5540・7354)、または郵便(〒104・8011=住所不要)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。

 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。

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