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2019年10月29日

五輪仕様からメタボ対策まで 生み出す自転車ウェア、年600種の凄腕


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素材メーカーから送られてくる見本から適したものを見つけ出し、新たな生地開発につなげる=東京都墨田区、横関一浩撮影

素材メーカーから送られてくる見本から適したものを見つけ出し、新たな生地開発につなげる=東京都墨田区、横関一浩撮影

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スポーツの秋。最近はサイクリングコースや街中を疾走するロードバイクも多くなってきました。日本最大規模の国際大会「ジャパンカップサイクルロードレース」や、海外のチームが数多く参加する「ツール・ド・フランスさいたまクリテリウム」もこの時期に行われています。

10月20日に行われた国際大会「ジャパンカップ・サイクルロードレース」の様子=宇都宮市

10月20日に行われた国際大会「ジャパンカップ・サイクルロードレース」の様子=宇都宮市

出典: 朝日新聞

サイクリング熱の高まりとともに、着心地や機能性が年々進化しているのがウェアです。自転車ウェアの製造販売会社「パールイズミ」の佐藤充さんは、五輪に出場するトップ選手から一般のサイクリストまで、年間約600種のウェア開発に携わっています。「自分が関わったウェアを着てくれるのがうれしい」。そう語る佐藤さんが大切にしているのは、利用者としての視点です。(朝日新聞記者・吉田貴司)

試作品は必ず着て確かめる

ウェア開発について語る佐藤充さん=東京都墨田区、横関一浩撮影

ウェア開発について語る佐藤充さん=東京都墨田区、横関一浩撮影

 さとう・みつる 1972年生まれ、東京都練馬区出身。専門学校でグラフィックデザインを学んだ後、95年にパールイズミに入社。およそ15年にわたり自転車のウェア開発を担当している。息抜きはアウトドア。高校時代からモーグルなどのフリースタイルスキーをたしなみ、「若い頃は骨折やねんざは日常茶飯事でした」。家族とも一緒に山にのぼったり、キャンプにいったりと多彩だ。


東京・練馬区の自宅から、墨田区両国のオフィスまでよく自転車で通うといいます。休日には150キロ以上、ペダルをこぐこともあるそうですが、「店頭で売られたものを着て走ることはほとんどありません」。

なぜでしょうか? その理由は、手縫いなどの試作品の着心地を試しているから。

社内でデザイナー、型紙作りのパタンナーといった職人たちのまとめ役をつとめる佐藤さん。自分で試すことで「股ずれしやすい」といった修正点がすぐに見つけ「着心地のよいウェア」にまた一歩近づけます。利用者の視点で商品を開発するためには欠かせないそうです。

着心地の良さをどう感じるかは、競技選手から一般のサイクリストまで様々です。

トップ選手ではこれまで、2016年リオ五輪・パラリンピックのロードレースに出場した新城幸也、与那嶺恵理、藤田征樹選手らのウェアを担当。今年の国内最高峰のロードレースツアー「Jプロツアー」でチーム総合優勝したマトリックスパワータグのチームウェアも開発してきました。2020年の東京五輪・パラリンピックに出場する選手のウェアも手がける予定です。

リオパラリンピックの男子個人ロードタイムトライアルで銀メダルを獲得した藤田征樹選手

リオパラリンピックの男子個人ロードタイムトライアルで銀メダルを獲得した藤田征樹選手

出典: 朝日新聞

0.1秒単位のタイムを競う選手たちのウェアなら「より薄く、より丈夫」な素材にこだわります。繊維メーカーと協力してつくるウェアの生地は、最も薄いところで厚さ0.25ミリ。強く引っ張っても破れない丈夫さも欠かせません。

試作品を複数つくると、研究施設で風洞実験を実施。競技のスピードに相当する時速30~40キロで最も空気抵抗が少ないものを選びます。さらに選手に実際に着て走ってもらうと「もものしわをなくしてほしい」といった注文が来ます。それに応えるため、生地やカット方法を変えながら完成へと仕上げていきます。

ルーペを使い、生地サンプルの仕上がり具合もチェックする=東京都墨田区、横関一浩撮影

ルーペを使い、生地サンプルの仕上がり具合もチェックする=東京都墨田区、横関一浩撮影

ニーズは様々

一方、サイクリングの愛好者は、家を出発してから帰宅するまで同じウェアを着続ける人も多いため、着心地の良さを長い間持続させることがより大切になります。中には「おなかが出ているのをなるべく隠したい」「ゆったりとしたウェアがほしい」といった求めも。UVカットや抗菌防臭といった機能性も注目を集めるポイントです。

サイクルウェアには、ジャケット、パンツ、インナーなど様々あり、性別や気温によっても最適なウェアは変わります。こうした様々なニーズに応える結果、開発するウェアは年間約600種にも及ぶといいます。

そんな開発の打ち合わせなどで重宝するのが「裏紙」。仕事では、いつ良いデザインが思い浮かぶか分からないため、すでに片面は利用されたコピー用紙で裏が無地のものを持ち歩いています。

会議中にデザインを描きながら話し合うときに重宝するといい、「ノートだとすぐに使い終わっちゃうんですよね」と佐藤さんは話します。その紙に書き出す時に用いるドイツ製の製図用シャーペンは、入社当時から使い続けている相棒といいます。

打ち合わせなどでは使用したコピー用紙の裏側を再利用する。この「裏紙」をいつも持ち歩いているという=東京都墨田区、横関一浩撮影

打ち合わせなどでは使用したコピー用紙の裏側を再利用する。この「裏紙」をいつも持ち歩いているという=東京都墨田区、横関一浩撮影

着ている人を見て達成感

専門学校でデザインを学んで入社した佐藤さんは、当初はウェアにつけるプリントロゴを描く担当でした。そのため、服飾についての知識はなく、商品開発を任されるようになってから先輩や取引先から必死に学んで生地などの知識を身につけていきました。

ウェアの試着は20回以上に及ぶことも。佐藤さんは自転車ウェアの開発について「トライ&エラーの連続です」と語る=東京都墨田区、横関一浩撮影

ウェアの試着は20回以上に及ぶことも。佐藤さんは自転車ウェアの開発について「トライ&エラーの連続です」と語る=東京都墨田区、横関一浩撮影

開発で忘れられないこととして、佐藤さんは2006年の冬物のウェアづくりを挙げました。

「ごわごわしている」といわれた冬物の改良のため、佐藤さんはポリウレタンを入れたより柔らかい生地を開発しました。しかし、発注した台湾メーカーの工場から届いたのは不良品ばかり。冬物シーズンが短いことに焦り、何度も現地に通って納期に間に合わせる努力をしました。

トラブルの原因は、工程間の連携不足だとわかり、佐藤さんは生地そのものの知識だけではダメだと痛感。この失敗が、各工程のきめの細かい把握が欠かせないことを理解する「ターニングポイント」になったといいます。

サイクリング人気が高まり、開発に携わったウェアを着た人を見かけることが増えてきました。佐藤さんは開発したウェアを着ている人を見かけたり、商品が棚に並んでいるところを見ると「大変だったけれど、がんばって良かった」と達成感にひたれると話します。

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