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「骨になってもプリンセスに……」中国で話題になった日本の終活製品
9月、中国のSNSで日本の「意外なもの」が話題になりました。卵型の容器に小さなバッグ調のポーチが組み合わされたセット。「日本の流行」として、微博(weibo)では1億を超えるビューが集まる投稿も生まれました。「ロマンチック」「無くしたら大変」「色はピンクで、骨になってもプリンセスになりたい」。日中両国で話題になったアイテムからは、現代人の「終活」への思いが見えてきます。
中国で話題になっている卵型のフォルムの商品名は「ポポ」。
実はミニ骨つぼです。
デザインの見た目と骨つぼのギャップから、中国版ツイッターの微博では、「#日本流行骨灰盒(日本ではミニ骨つぼが流行っている)」という言葉で拡散し、「熱捜」(よく検索される項目)にもランクインしました。投稿の中には2万件以上の「いいね」が付いているものもあり、ビュー数は累計で1.4億を超えています。
注目されているのは、まず色です。
「日本ではミニの骨つぼが流行し、色は10色もあるが、値段は856元(定価税込み12960円※9月時点)。広告は『亡くなった家族を連れて海に行きませんか』」
ほかの投稿でも「色のバリエーションが豊富、携帯も便利」と紹介され、「亡くなった後でも可愛くきれいでいたい」という感想も。
コメントを見ると、「可愛く、ロマンチック」と好意的なものが目立つ一方、「紛失したらたいへんだ」というものも。
「(未来の)子どもや孫たちへ、死んだらピンクのものを買ってくれ。骨になってもプリンセスになりたい」
「とてもいい。死ぬことも怖くなくなります。生と死は隔たりではなく、愛する人が永遠にそばにいるような気がします」
また、「最期までどの色を選ぶのか悩むかもしれない」という心配のコメントもありました。
一方で、中国での伝統的な埋葬であるの「入土為安」(土葬の影響で伝わってきた墓に入れる風俗)に悩む人も見られました。
「『入土為安』という風俗がなければ、お父さんの遺骨を持って、彼の行ったことないところへ連れていってあげたい」
中国で注目された「ポポ」は、東京都新宿区にある株式会社メモリアルアートの大野屋が作っています。
商品開発企画部の上原ちひろさんによると、ミニ骨つぼが日本で使われはじめたのは、2005年ごろからだと言います。
最初はペンダントに遺骨を入れるなど、ジュエリーの形が多かったそうです。故人の遺骨を納めて身近に置くミニ骨つぼへのニーズは、その当時からあったそうですが、商品のデザインや生産数が「自信を持ってお客さまにご紹介するようなレベルではありませんでした」と説明します。
それなら「デザインと品質にこだわる自社のオリジナル商品を開発しよう」と決断。
2010年から、本格的にミニ骨つぼなどオリジナル商品を開発し、2015年4月からは、「ソウルジュエリー」「ソウルプチポット」「ソウルステージ」の三つのブランドからなるソウルシリーズを生み出しました。
「ソウルジュエリー」ではペンダント、ブレスレットなどが人気で、ソウルシリーズの販売数は今年10万個を超えたそうです。
そして、2018年、「ソウルプチポット」ブランドから「ポポ」が発売されました。
「ポポ」は卵型のフォルムと豊富なカラーバリエーションが特徴で、真鍮製でありながら重さはわずか70gにおさえられています。部屋に置いても、持ち運びにも便利なように作られています。
ポポの名前は、「プチポット」の「ポ」と、「ポーチ」の「ポ」からとられています。
ポポの開発にあたって大事にしたのは、「いつでもどこでも大切な方をしのびたい」というニーズでした。
上原さんは、「思い出の場所や、生前、病気が治ったら行く予定だった旅行先などに、一緒に行っていただき、大切な時間を過ごしてもらえるように考えました」と振り返ります。
ちなみに、中国では、一部の農村地域では土葬がまだ残っていますが、火葬が主流になっています。
火葬した後、遺骨を骨つぼに入れ、家には置かず、お墓に埋葬するのが一般的です。そして中国の骨つぼで多いのは、「骨灰盒」と呼ばれる四角い箱型のものです。
そんな中、中国で「ポポ」が話題になったことについて、上原さんは「商品の考え方やデザインを評価してもらっていることは、うれしいです」と話します。
「日本も中国も家族を大事にしたいという気持ちは共通していると思っています」
最近では、ネット経由で「ポポ」を買う外国人が増えているそうです。上原さんは、「まだ日本語しかありませんが、英語と中国語のサイトを検討中です」と話します。
近い将来、ポポのような新しいデザインとアイデアの商品が、直接、中国のマーケットに届けられる日が来るかもしれません。
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