そんな村田さん、実は今、また接客の仕事に挑戦しようとしています。それは村田さんが現在、秘書としてリモート勤務をするオリィ研究所主催の『分身ロボットカフェ』。病気や障害で身体に不自由がある人たちが“パイロット”として、同研究所が開発する分身(人型)ロボット『OriHime-D』を操縦して接客をする、新しい試みです。
20018年に第一弾を開催、10日間(1日4時間)の開催期間で約1000人の来店がありました。パイロットは村田さんを含む10人で、寝たきりの重度身体障害者や、筋萎縮性側索硬化症(ALS)という運動機能が衰える難病患者など、通常の方法では就労が困難な人たち。中には接客業や、仕事、つまり働いて対価を得ること自体が、生まれて初めての人もいました。記者が取材したパイロットたちは、後にこんな感想を残しています。
“自分が接客ができるなんて、人生で一度も考えたことがありませんでした。 今はそれが嘘のように毎日たくさんのお客さまと出会い、やりがいと充実感でいっぱい! 自分には何もできないと思ってた高校生の時の自分に教えてあげたい… 明日からも楽しみです! -
@fukomalu ”
“ALSになり、自由が奪われていく中で娘にも、手助けしてもらう事が増え、母親らしいことをしてあげられないと悔しい思いでいました。 このカフェで、働いたお給料で、私から娘へプレゼントしたいと思っています。 まだまだ母親として世話をやきたいのです。 -
@mikarinnomahou ”
記者もこのカフェを体験しました。カフェの席につくと、パイロットの操縦するOriHime-Dが「ウィーン」と音を立てながら、注文を取りに来てくれます。注文を聞き、バックヤードに戻るOriHIme-D。生身のスタッフがOriHIme-Dの持つトレイにコーヒーを置くと、それをまた「ウィーン」とテーブルまで届けてくれました。内蔵されたカメラとマイクで、パイロットと会話も可能です。村田さんは第一弾の開催を「身体障害がある人の働く可能性が広がった」と振り返ります。
「これまで身体障害者の雇用には事務職が多く、接客はまずありませんでした。私自身、接客が好きなこともあり、『身体障害者に接客はできないもの』という固定概念を打破したいとずっと思っていて。当事者からすると、障害があるからと言って、仕事の幅を狭めないでほしいという想いがあります。そういう壁をポジティブに越えていけるプロジェクトだったのではないでしょうか」