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#18 #父親のモヤモヤ

育休取るだけで……父親最悪のモヤモヤ「パタハラ」 なぜ起きる?

男性が育休を取得出来る環境づくりに取り組む小室淑恵さん=ワーク・ライフバランス社提供
男性が育休を取得出来る環境づくりに取り組む小室淑恵さん=ワーク・ライフバランス社提供

目次

#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

男性が育休から戻ると、仕事を減らされたり、急な配置転換を言い渡されたり……。父親の子育てをめぐり、「パタニティーハラスメント」も大きな問題になっています。なぜ、パタハラは起きてしまうのでしょうか? これまで1000社の働き方改革コンサルティングに取り組み、この問題に詳しいワーク・ライフバランス社長の小室淑恵さんに聞きました。

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繰り返されるパタハラの連鎖

――なぜ、パタハラは起きるのでしょうか?

パタハラをしている上司の中には、「自分だって、これまで家族を崩壊させるような長時間労働や急な転勤を耐えてきた」という思いがあります。そして無意識に、自分もいろんなものを失ってきたからという理由でこの働き方を正当化してしまうのです。

パタハラをしている側も広い意味では被害者ということになるかもしれません。パタハラの連鎖が繰り返されているのです。

企業は、育児に熱心にかかわろうとする男性社員に理不尽な処遇でパタハラし、他の社員に見せしめをすることで、全社的に休みを言い出しづらい社風を今まで作ってきました。

そのような働き方にも耐えることで経済発展してきた歴史はたしかにあります。

1960~90年代は「人口ボーナス期」(若者が多く、高齢者の比率が小さい社会)だったため、多くの働き手が社会を支える側にあったことで、経済が爆発的に成長していきました。パタハラをしている人たちは、そのような人口構造上の経済成長と、当時の「長時間労働や転勤を耐えて働くこと」を結びつけて考えてしまっているのです。

今は少子高齢化が進み、生産年齢人口の比率が減っていく人口オーナス期(高齢者の比率が高くなり、少ない労働力で、多くの高齢者を支える社会)であり、その時代とは異なります。私たちはどんなに長時間労働に耐えたって、転勤に耐えたって企業の成長とは無関係なのです。

少ない人口で付加価値の高いものを作らなければ勝ち残れない人口オーナス期は、イノベーションを起こして経済成長することが重要です。しかし実は、イノベーションを最も起こしにくい組織というのは、一律な人材がそろっている組織なのです。

育休を取らせないように圧力をかけ、組織を均一化させてきた歴史がまさに今、イノベーションの生まれない日本社会を作ってしまいました。多様な経験を積んだ社員が組織を救うので、男性の育児休業などは、本来は組織をあげて、推進していくべきなのです。

今年はパタハラを企業に訴える裁判が相次いでいる
今年はパタハラを企業に訴える裁判が相次いでいる 出典: 朝日新聞

「パタハラ対策」だけでは駄目

――パタハラには、どんな対策が必要ですか

まず、360度評価を導入し、上からの評価だけでなく部下や同僚からの評価が重要になる評価形態に変えることです。ひどいケースをスピーディーに発見対処するためのホットラインの設置も重要です。しかし、それだけではなく、全体の仕事の仕組みにもメスを入れましょう。

パタハラ問題について、パパだけに何か支援策を打つのは、今まで子どもを持つ女性にだけ支援策を手厚く行って、それが結果的に昇進とは縁遠いキャリアにしてしまう「マミートラック」に陥ったことと同じ状況になってしまいます。「育児をする男性は、制度としては保証されているけど、メインとは別のキャリアね」という話になりかねません。

誰かの休業がチームにとって非常に困る事態になるのは、常日頃からの仕事の進め方が「属人化」しているからです。「自分しか知らない・自分にしかできない」という属人化した仕事をどれだけ減らすかがポイントとなります。

このような仕事の属人化を見直して、自分以外の人が自分の担当業務を問題なくできる組織をつくることで、上司にとっても部下に休みを取られることの「恐怖」を軽減することができるのです。お互いの仕事をいざという時に他の人でもできるようにすれば、「仕事の引き継ぎ」というパスがスムーズにまわって、会社という視点で考えれば、災害やパンデミックなどが起こったとしても、ちゃんと事業が継続できるような組織になれるのです。

小室さんが開いたワークショップでは、企業の人事担当者が「育休を阻む要因」を洗い出していった
小室さんが開いたワークショップでは、企業の人事担当者が「育休を阻む要因」を洗い出していった

投資家の目線も変化

――男性の育児休業に対して、投資家の目線も変わってきたと聞きます

カネカの元社員の妻が、夫の受けたパタハラをツイッターに投稿し、話題となりました。私が注目しているポイントは、そのとき株価が下落したということです。

数年前であれば、男性の育休を取らせなかったというニュース程度で株価が下落することはありませんでした。投資家にとってそれほど重要なテーマだという認識がなかったからです。

しかし、ここ数年で労働時間の管理や女性管理職比率といったものを加味して投資するESG投資(環境や社会問題への配慮を評価し投資すること)が当たり前になってきています。投資家がグローバル視点になったことで、カネカのパタハラに、株価が反応したということは、経営者にもインパクトがあったと思います。

まさに「働き方って経営課題なんだ」と、人事や労務担当だけの問題ではない話だと今後ますます経営者は考えるべきです。社会的責任を果たす企業にしかお金がまわってこないという社会になったことが見える形になったのは、そのいいきっかけになったと思います。パタハラをするような企業は「投資家」という上からの観点と、「入社したい学生」という下からの観点の両方から選ばれない会社となってきているのです。

父親のモヤモヤ、お寄せください

記事に関する感想をお寄せください。「イクメン」というキーワードでも、モヤモヤや体験を募ります。「イクメン」という言葉を前向きにとらえる意見がある一方、「イクメンという言葉が重荷」「そもそもイクメンという言葉が嫌い」という意見もあります。みなさんはどう思いますか?

いずれも連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)、ファクス(03・5540・7354)、または郵便(〒104・8011=住所不要)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。

 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。

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