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#15 #withyou 悩み相談

居場所がない女の子へ 千人以上の悩みに向き合う支援団体代表の答え

「BONDプロジェクト」代表の橘ジュンさんは、多くの悩みの背景には「居場所を求める」不安があると言います。橘さんは「新しい関係を作るために踏みだそう」と語りかけます。

イラスト:(c)根本清佳、前田真由美(innovation team dot) 写真:山根久美子
イラスト:(c)根本清佳、前田真由美(innovation team dot) 写真:山根久美子

目次

これまで何千人もの女性の生きづらさに向き合ってきたNPO法人「BONDプロジェクト」代表の橘ジュンさん(48)は、多くの悩みの背景には「居場所を求める」不安があると言います。自分の居場所がないと感じる女の子に、橘さんは「新しい関係を作るために踏みだそう」と語りかけます。自分の居場所にどうやってたどり着くのか。困難にあい、橘さんの元で居場所を探す18歳の女性(Aさん)とともに、話を聞きました。
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<橘ジュン(たちばな・じゅん)>
1971年生まれ。ルポライター。2009年、NPO法人BONDプロジェクトを設立。繁華街の「夜回り」やメール、ライン、電話で少女たちの話を聞き、必要に応じて一時的に保護したり、医療機関や警察、行政につないだりする活動を続ける。

繁華街、居場所求めて集まる子たち

――BONDプロジェクトを始めたきっかけを教えてください。

橘さん:元々ライターとして夜の繁華街にいる女の子たちの声を取材していました。死にたい、消えたい、寂しい。そんな生きづらさを抱える彼女たちの声をありのままに伝えることで、何かが動けばという気持ちからです。でも取材で彼女たちの話に耳を傾けるうち、聞いて終わりにできなくなってきて。それが今の活動につながっています。
――女の子たちの生きづらさの根底に共通するものはありますか。

橘さん:どこにも居場所がないという思いじゃないかな。家や学校、職場で何かトラブルがあって、居場所がないと感じる。だから寂しい。そんな時、夜の繁華街はいつまでも明るくて寂しくない感じがする。だから居場所を求めて集まる子が多いんだろうね。

――「居場所がない」という女の子へのアドバイスは?

橘さん:居場所は自分の作る人間関係から生まれるものだと私は思っています。人間関係は与えられるものでなくて作るもの。だから今の人間関係に不満があるなら、新しい関係を作るために行動するしかない。親がひどい、周囲が変わってくれない、だから居場所がない。本当にひどいんだと思う。でもそう感じるなら、自分で居場所を探して行動してみるのはどうかな。自分の力で新しい居場所にたどり着けるかもしれないよ。
――自分の力では解決できない深刻なケースの場合はどうすれば?

橘さん:自分だけで動けない時は児童相談所や周囲の大人を頼ってほしい。ただし大人の選び方には気をつけて。夜の街やSNS、あちこちに女の子を利用しようとする大人もいる。大人の選び方で、人生が180度変わることもあるんだから。
写真はイメージ=PIXTA
写真はイメージ=PIXTA

繁華街、疲れるけど寂しくなかった

――Aさんはどうしてどこにも居場所がないと感じていたのでしょうか。

Aさん:私を産んだ母は、私が小学生の時に男作って出て行っちゃったんです。母親がいなくなって、朝起きるのが遅くなるなど、少しずつ生活が乱れていきました。中学に入ると髪を染めたり深夜に出歩いたり。学校もさぼるようになって、不良っぽい子たちと遊び歩くようになりました。
――なぜ、夜の街に足が向いたのでしょう?

Aさん:家にもどこにも居場所がなかった。そんな時に夜の繁華街にいると、なんか寂しくない。夜12時を過ぎても明るい。ナンパしてくる人と適当に話して。ご飯おごってくれる人、出会い系サイト使って探して。疲れるけど、その時はそんな夜の繁華街が私の居場所だった。

――それで居場所は見つかりましたか?

Aさん:同じように家に居場所がない子が自然と集まる。環境が似ている子同士が一緒にいるとホッとする。その時は、そこが居場所でした。でも毎日「死にたい」とも思っていました。
写真はイメージ=PIXTA
写真はイメージ=PIXTA

「よくここまでたどり着いてくれたね」

橘さん:夜外に出て遊び歩くと、人間関係が毎日変わるからね。毎日新しい人付き合いしてたら疲れる。でも1人になりたくない。だから外に出て新しい人間関係作って、また疲れて、の繰り返し。

Aさん:うん、そうだった。めんどくさい、死んでもいいってずっと思ってた。中学を出て働き出して、そのうち彼氏ができて妊娠したんだけど、彼と一緒に暮らし始めてすぐ、妊婦の私へのDVが始まりました。彼の元から逃げて、前にネットで見たことのあるBONDプロジェクトを思い出して連絡しました。

橘さん:よくここまでたどり着いてくれたね。それからAは私たちを通して、保護施設に入って昨年末に出産。生活を立て直すため今は子どもを施設に預け、BONDのスタッフとして相談員をしてくれています。自分もつらい思いをしたから、今しんどい女の子たちの話、ほんとよく聞いてくれる。
――実家に帰るという選択肢はあったのですか?

Aさん:実家に私の場所はないんです。父は再婚して、新しく子どもが生まれたし。父は私のことを大事にしてくれるけど、相手の女性は私のことを良く思っていなくて。帰るところがない。

橘さん:普通なら実家を頼る。でもこの子みたいに、「普通なら」をあてはめづらいケースもあるんですよね。行政に相談すると、理想論の支援を提案してくる。「それはイヤ」という子に、「でも、こうじゃないとおかしいよ」と行政が思う正しい道に修正しようとする。できる子もいれば、できない子もいるのが人間ですよね。それぞれの現状を否定するだけでなく、受け入れた上で支援してくれるようになればいいなと思います。
写真はイメージ=PIXTA
写真はイメージ=PIXTA

「あなたが今していることは無駄じゃない」

――Aさん、今は居場所は見つかったんですか?

Aさん:まだかなぁ。子どもの存在は大きいけれど、昔も今も、ずっと居場所を探し続けています。

橘さん:居場所は大人が見つけてあげることができない。自分で探し続けるしかないんだから。Aは居場所を探してずっと動いてきたね。今はまだ見つからなくても、やってきたことすべてが居場所を見つけることにつながる行動だよ。

――居場所を求めて動き続ける。10~20代の少女だけでなく、大人にも当てはまりそうですね。

橘さん:そうですね。大人になってもつまずいたり、失敗したりすることは必ずある。いろんな人にあっていろんな経験を積んでいく時、できるだけ傷つかない方がいいけれど、悲しいことやイヤなことは絶対にある。それでもいい。いつか自分の居場所にたどり着くために、あなたが今していることは無駄じゃない。居場所を探して動き続けてほしいと思います。

いろんな相談先があります

・24時間こどもSOSダイヤル 0120-0-78310(なやみ言おう)
・こどものSOS相談窓口(文部科学省サイト
・いのち支える窓口一覧(自殺総合対策推進センターサイト
 

withnewsでは、生きづらさを抱える10代への企画「#withyou ~きみとともに~」を続けています。

今年のテーマは「#居場所」。 

 目に見える「場所」でなくても、本や音楽…好きなことや、救いになった言葉でもいいです。生きづらい時間や不安な日々をしのげる「居場所」をみなさんと共有できたらと思います。 以下のツイートボタンで、「#居場所」について聞かせてください。


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