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沖縄の若者 選挙のたび増える「自民支持」 調査から見えた別の表情

沖縄知事選の街頭演説で佐喜真淳氏の応援演説後に支持者らと握手する小泉進次郎氏=2018年9月23日午後2時45分、那覇市、小宮路勝撮影
沖縄知事選の街頭演説で佐喜真淳氏の応援演説後に支持者らと握手する小泉進次郎氏=2018年9月23日午後2時45分、那覇市、小宮路勝撮影 出典: 朝日新聞

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7月21日にあった参院選の沖縄選挙区(改選数1)では、米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢力が推す候補が当選しました。一方で、20代や30代の傾向を調べると「別の表情」が浮かび上がります。前回参院選、知事選、そして今回参院選で沖縄に吹いた風の輪郭へ迫ります。(朝日新聞世論調査部・小野智美)

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勝ちパターンは中高年層と無党派層の支持

「オール沖縄」勢力が推す候補は、2016年の前回参院選と昨年9月の沖縄県知事選でも勝利しています。

前回参院選は、オール沖縄が推す無所属新顔の伊波洋一氏が自民現職の島尻安伊子氏ら2氏を破りました。このときの出口調査(県内60カ所、有効回答3281人)では、年代別で見ると20代をのぞく全世代で伊波氏への支持が上回り、なかでも50代以上では6割強の支持が集まりました。

昨年の沖縄県知事選は、翁長雄志知事の急逝に伴い、9月30日に行われました。オール沖縄が推す前衆院議員の玉城デニー氏が、前宜野湾市長の佐喜真淳氏=自民、公明、維新、希望推薦=ら3氏を破り、初当選しました。

このときの出口調査(県内90カ所、有効回答4032人)では、年代別では30代以上で玉城氏への支持が上回り、50代以上では6割台の支持が集まりました。

今回の参院選はオール沖縄が推す無所属新顔の高良鉄美氏が、自民新顔の安里繁信氏=公明推薦=ら3氏を破りました。今回の出口調査(県内60カ所、有効回答2955人)では、年代別で見ると40代以上で高良氏への支持が上回り、50代以上は過半数におよびました。今回の参院選でも、オール沖縄が推す候補は中高年層に浸透していたことがわかります。

 

出口調査で分析した支持政党別の投票先でも、オール沖縄が推す候補の特徴が見て取れます。それは野党の大半を押さえた上で、無党派層の多数を取り込むという少数派の野党候補には必須の「勝ちパターン」を踏んでいることです。

分析結果からは、今回の参院選でも野党支持層を固めたうえで、無党派層から7割近くの支持を集めていることが見えてきました。

 

若年層は自民支持へ

ただし、出口調査からは、前回参院選、昨年の知事選、そして今回参院選と回を重ねるごとに、20代と30代の支持は自民が推す候補に集まっていることもわかります。

前回参院選では、20代も30代も、オール沖縄が推す候補と自民候補への支持がほぼ半々に分かれました。

ところが昨年の知事選では、30代はオール沖縄が推す候補の支持に厚みがあるものの、20代は自民が推す候補へ支持が集まりました。

そして今回の参院選では、20代と30代がともに半数以上が自民候補へ投票したと答えています。20代では特に支持の差が顕著です。

 

女性の支持に変化

出口調査で男女別の投票先を見ると、前回参院選でオール沖縄が推す候補への支持は男女ともほぼ並んでいましたが、知事選では男性より女性の支持に厚みが出ました。今回参院選も同様の傾向です。

 

オール沖縄が提起する米軍基地の問題は、女性がより切実に受け止めています。

知事選の出口調査で米軍普天間飛行場の辺野古移設に対する賛否を問うと、「反対」と答えた人は男性では52%でしたが、女性は62%でした。安部内閣の沖縄の基地問題に対する姿勢についても「評価しない」と答えた人は男性で61%ですが、女性では67%です。

その一方で、今回参院選では、20代と30代の女性の支持に変化も見られました。

前回参院選では、男性は20代でほぼ半々に分かれ、30代では半数以上が自民候補へ投票したと答えていますが、女性は20代でほぼ半々に分かれながら、30代では半数以上がオール沖縄の推す候補へ投票したと答えています。

知事選では、男性の20代、30代はともに過半数が自民が推す候補へ投票したと答え、女性も前回参院選とほぼ同様の傾向でした。

米軍普天間飛行場=2018年3月、ロイター
米軍普天間飛行場=2018年3月、ロイター

今回参院選では、男性は20代、30代ともに自民候補への支持傾向が強まりました。女性は20代でほぼ半々だったのに対し、30代では半数以上が自民候補へ投票したと答えています。

開票結果から見た全体の得票率でもオール沖縄が推す候補と、自民が推す候補との差は縮まっています。前回参院選は57.8%と40.6%で17ポイント台の差がありました。が、知事選になると55.1%と43.9%の11ポイント台に。今回参院選も53.6%と42.1%で11ポイント台になりました。

自民が推す候補への支持が強まる沖縄の20代、30代の男性。オール沖縄の推す候補と自民候補の得票率の差はこのまま縮まるのかどうか。

沖縄では、戦争の記憶が語り継がれてきました。
太平洋戦争末期の1945年3月26日、米軍を主とした連合軍が沖縄へ上陸。激烈な戦闘が始まり、県民の4人に1人が命を奪われました。45年8月15日に終戦を迎えても、沖縄は米国の施政権下に置かれ、米軍により沖縄の人々の土地は強制収用され、家々も解体撤去されました。
72年5月15日、ようやく沖縄は日本へ返還されました。「基地のない平和の島」が祖国復帰を果たす時の沖縄の人々の悲願でした。が、それはかないませんでした。
日本の国土面積の約0.6%しかない沖縄県に、今も、日本国内の米軍専用施設面積の約70.3%を占める米軍専用施設があります。広大な米軍施設の周縁で沖縄の人々は暮らし、上空を米軍機が爆音を立てて行き交います。

基地問題をめぐり、これまでの調査では、沖縄の若年層は基地が集中する沖縄の現状を追認する意識が他の世代と比べて強いことが分かっています。戦中戦後や本土復帰後を知る世代の記憶がどう受け継がれていくかが、今後の若年層の投票行動にもつながってくるように思えます。

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