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2019年08月04日

社内では「育休の先輩」、でも…ロールモデルが少ない父親のモヤモヤ


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長男の手を引き、次男をベビーカーに乗せて保育園から帰る吉川記者

長男の手を引き、次男をベビーカーに乗せて保育園から帰る吉川記者

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#父親のモヤモヤ
※クリックすると特集ページ(朝日新聞デジタル)に移ります。

男性が育休を取るケースは、社会全体でみればまだ珍しいとはいえ、少しずつ増えているのも事実です。すると今度は、職場復帰後の働き方に関心が寄せられるようになりました。不当な扱いを受けたと男性社員が会社を訴える事例も出てきて、社会に問題を投げかけています。筆者(40)は、長男が生まれたときに8カ月、次男のときに7カ月の育休を取りました。育児体験を執筆したり、社内で「育児アドバイザー」を務めたりしましたが、自分自身の今後を考えると「モヤモヤ」することもあります。仕事と家庭の両立を図ろうと模索している一人として、いま感じていることを率直に語りたいと思います。


じゃれあう2人の息子。部屋は片付けてもすぐに散らかってしまう

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同僚が取材、自分は家事

午後2時。同僚の記者が取材に駆け回っているころ、私は自宅の台所に立っています。いま所属している編集センターは夜勤中心の職場で、新聞紙面の見出しやレイアウトを担う仕事です。

出勤前に妻と3歳の長男の夕食を作るのが日課。仕事を終えた妻が夕方、長男と0歳の次男を保育園に迎えに行き、夜の子どもたちの世話は妻のワンオペに頼っています。私は深夜に帰宅し、朝は子どもたちと一緒に起床。朝食を用意して2人を保育園に送った後、仮眠を取って夜の仕事に備える日々です。

と書くと、子育てに優しくない職場のように思えますが、勤務時間が決まっていて、あらかじめ申請すれば休みも取りやすいため、事件・事故の取材に追われる記者の仕事に比べて子育てとの両立はしやすい環境といえます。加えて、勤務配慮制度を使い、週末も動いている新聞社において土日・祝日は勤務を免除してもらっています。

夜勤前に家族に作ったハンバーグとみそ汁

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上司に恵まれた育休

2度目の育休を取ったのは、次男が生まれた昨年8月から今年3月まで。妻は個人事業主で、そもそも給付金の出る育休制度がありません。会社員の私が育休を取るのが合理的だと考え、長男のときに続いて長期の育休を取ることにしました。

育休を取るにあたって心がけたのは、一にも二にも上司の理解を得ること。妻の妊娠がわかった後、早めに家庭の状況を報告し、意向を伝えました。

仕事と育児の両立には、育児に理解のある上司「イクボス」の存在が欠かせないといわれます。なぜなら、育休を取るとなると職場に影響を与えますが、自ら周囲に説明して理解を得るのはなかなか難しいからです。その点、私は長男の誕生以来、上司に恵まれてきたと思います。

「長男の誕生以来、上司に恵まれてきた」という吉川記者(写真はイメージです)

「長男の誕生以来、上司に恵まれてきた」という吉川記者(写真はイメージです)

出典:pixta

確立されていないロールモデル

入社以来、地方や本社で記者として働き、仕事中心の生活を送っていました。それが、36歳で長男を授かり、妻の「仕事も今まで通りってわけにはいかないよ」という言葉に押され、家庭を大事にする生活へ自分の中の価値観が変わりました。

1度目の育休から復帰後、育児体験を執筆することになったとき、同僚から「そういうキャラで見られてもいいの?」と冷ややかに言われたこともあります。でも、私の中の価値観は揺るがなかったし、男性の育休が大切だと世に訴えている新聞社の人間が実行しなくてどうする、という思いもあったので、特に気になりませんでした。

しかし、2度の育休を経て、今後のキャリアへの不安、というか、まさにモヤモヤした気持ちがあることは否めません。それは、新聞社において、家庭で子育てを主体的に担いながらキャリアアップしていくというロールモデルが確立されていないためです。

「子育てを主体的に担いながらキャリアアップしていくというロールモデルが確立されていない」という吉川記者(写真はイメージです)

「子育てを主体的に担いながらキャリアアップしていくというロールモデルが確立されていない」という吉川記者(写真はイメージです)

出典:pixta

「自分は自分」と割り切っても……

新聞記者としてのキャリアアップには、機動的な対応とさまざまな現場を経験することが求められます。でも、妻とともに子育てを担っている今の私には、突発の取材をするのが難しく、転勤も難しいのが現状です。

40歳前後の同期には、海外特派員や地方総局で取材を指揮するデスク(次長)、各分野の最前線を取材する記者たちがいます。また、私が所属する編集センターでも、同期入社の編集者は経験を積み、紙面編集の中核を担っています。

「自分は自分」と割り切る思いの一方で、入社したころの初心を思い出し、モヤモヤすることがあります。そして、多くの女性がそうした気持ちを抱えながら働いてきて、「仕事か、家庭か」の選択を迫られてきたのだと思います。

「自分は自分」と割り切っていても……(写真はイメージです)

「自分は自分」と割り切っていても……(写真はイメージです)

出典:pixta

励みになる存在は

自分の仕事ぶりは中途半端じゃないか――。ネガティブになりがちな私を勇気づけ、前向きな気持ちにさせてくれるのが、育児を糧に社会で活躍している男性たちの姿です。

先日、たまたまテレビで囲碁の林漢傑八段を紹介する番組を見ました。お子さんを抱っこしながら碁盤に向かう写真。長女が生まれてから同じく棋士の妻とともに育児を担い、囲碁に割ける時間は減ったそうです。

でも、子どもの存在がメンタルに良い影響を与え、大事な勝負に勝ったというエピソードを紹介していました。勝ちたい、という力みが減って、自然体で臨めるようになったといいます。次女も生まれ、今が一番充実している、と話していました。

また、思想家の内田樹さんは『困難な結婚』という著書で、自身の育児体験をつづっています。若い頃、フランスの哲学者レヴィナスの本を翻訳したものの意味がわからず、いったん寝かせて、家事育児をしながら働いていた。2年ほどたって読み返してみると、少しわかるようになっていたそうです。

内田さんは、この変化の理由を、育児を経験して「大人」になったから、と説明しています。「生きているだけで勉強なんです。(中略)無駄な時間なんかないんだ。そう思ったら、ぜんぜん焦らなくなりました」

気鋭の囲碁棋士や思想家をひきあいに自分のことを語るのはおこがましい限りですが、私自身も子育てを経て少し成長できたように感じます。周りの人の言動をおおらかに受け止められるようになったりとか、今も苦手ですが、以前より複数の物事を同時に進められるようになったりとか。

家の中で自由に過ごせるのは、2人の息子が眠っている間だけだ

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女性と経験の共有を

私としては、報道の仕事にやりがいを感じていて、今後もどんな形であれ関わっていければと思っています。時に私生活を犠牲にして懸命に働いている同僚に対して、申し訳ない気持ちになることもありますが、私なりの働き方で貢献できないかと考えています。実現するには、男性の間だけで語るのではなく、仕事と育児の両立を当然のこととして果たしてきた女性と経験を共有することも必要だと思います。

長期の育休を経験した男性のみなさんは、どんな思いで仕事に向き合っていますか。育児の担い手が前向きになれる会社、そして社会になってほしいと強く思います。

帰省にまつわるモヤモヤ 募集します

記事の感想のほか、帰省した夫の実家でのモヤモヤや、父子での帰省にまつわる体験を募ります。連絡先を明記のうえ、メール(seikatsu@asahi.com)、ファクス(03・5540・7354)、または郵便(〒104・8011=住所不要)で、朝日新聞文化くらし報道部「父親のモヤモヤ」係へお寄せください。

 

共働き世帯が増え、家事や育児を分かち合うようになり、「父親」もまた、モヤモヤすることがあります。それらを語り、変えようとすることは、誰にとっても生きやすい社会づくりにつながると思い、この企画は始まりました。あなたのモヤモヤ、聞かせてください。

みんなの「#父親のモヤモヤ」を見る

 

赤ちゃんとの関係、恋人に例えると… 漫画から伝わる、育児の過酷さ
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赤ちゃんとの関係を恋人に例えた漫画
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出典:平八さんのツイッターより
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