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2019年07月18日

上野千鶴子さんに気づかされた、長女の翼を折りかけていた父の反省


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日本の女性学・ジェンダー研究のパイオニア、上野千鶴子・東大名誉教授=瀬戸口翼撮影

日本の女性学・ジェンダー研究のパイオニア、上野千鶴子・東大名誉教授=瀬戸口翼撮影

出典: 朝日新聞

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女性議員はなぜ増えないのか? 上野千鶴子・東大名誉教授(71)が、「閉鎖的」と言われる鹿児島で女性議員を増やす活動を続ける住民団体の代表と語りました。普段目にする、父と母の関係。そして、子どもへのすり込み……。孤軍奮闘する活動に対して、上野さんが飛び出した言葉は「バイキングが女性議員を生む!」という教えでした。(朝日新聞記者・福井悠介)

【動画】バイキングが女性議員を生む?  上野千鶴子さんが語る=瀬戸口翼撮影


「それ、生前後家楽っていうんです」

取材は、女性議員の現状について、上野さんに語ってもらうため、6月に企画されました。上野さんと話したのは、鹿児島県内の女性議員を100人にする会代表の平神純子さん(62)さん。担当記者として傍らで聞きながら、心の残ったやりとりを振り返ります。

     ◇

平神「もしかしたら、お父さん、お母さんを見ていて、母親の夫に対する不満、ジェンダーの問題を、私も感じたのかもしれない。父親は船員で、母親は専業主婦。退職をした父が母に『俺から食べさせられてきたのに、何を文句言うのか』みたいなことを言ったんですよね。そうしたら、母は『誰が子どもを育ててきたかって』と反論を」

上野「ほうほう……」

平神「私はこれから自由にします。毎日、温泉に行きますから、あなたはチンしてご飯を食べてくださいね、って」

上野「熟年になってから」

平神「母が60いくつだったでしょうか。それから母は毎日のように、単車で、温泉に行って。父親はチン。『つめたかもんじゃ。父さんに、チンして食べさせて』って、おじ、おばが言ってましたけど。私は父がそういう風に言ったのは、おかしいと思いました。大好きな父でしたけどね。母よ、よくぞ言ったと」

上野「おもしろいですね。私流の解釈をしていいですか? それ、『生前後家楽』っていうんです」

平神「せいぜんごけらく?」

「鹿児島県内の女性議員を100人にする会」代表の平神純子さん=瀬戸口翼撮影

「鹿児島県内の女性議員を100人にする会」代表の平神純子さん=瀬戸口翼撮影

出典: 朝日新聞

「バイキング社会では、女が仕切って、社会が回っている」

上野「日本は、後家の天下なんです。後家さんになったら、温泉に行こうがお詣(まい)りに行こうが、好き放題できる。息子をマザコンに仕立てあげて、跡取りにする。『皇太后権力』って言って、日本の女の上がりなんです。将来、後家天国があるから、嫁の務めに耐えられるっていうね。でも、夫が死ぬのを待っていられないから、夫が生きている間に、今日から私は、後家同然のふるまいをしますっていうのを、生前後家楽っていうんですよ。それを実行なさったわけね。もう一つおもしろいなと思ったのは、平神さんのお父さんは船員さん、遠洋漁業ですよね。船員さんってのは、1年の大半いらっしゃらないでしょ。一時期帰ってくるだけで、ふだんは、ひとり親家庭ですよね」

平神「そうですね」

上野「そうすると、その間は母が家長でしょ。母が仕切って、家が回っているって実感しておられるわけね」

平神「はい」

上野「ということは、家父長制っていうか、おやじがデカいツラしているっていうのを、平神さんは子どものころに経験しないで育っておられるんだ」

平神「父は優しかったです。すごく」

上野「たまに帰ってくると、優しいパパが帰ってきて」

平神「大好きでした」

上野千鶴子・東大名誉教授=瀬戸口翼撮影

上野千鶴子・東大名誉教授=瀬戸口翼撮影

出典: 朝日新聞

上野「普段は、お母さんが女家長をやっておられる」

平神「鬼みたいな人でした、母が」

上野「でしょ。実際そうだと思いますよ。いかに、夫の給料があったとしても、ひとりで子育てして、シングルマザー同然じゃないですか。そこで、家をちゃんと仕切っていくって、並大抵の能力じゃない。それね、バイキングの家庭と同じなんです。北欧で、なんであんなに、女が力をつけたかといったら、北欧のバイキング社会では、男はみんな出払っているから、家に残っているのはみんな女家長ばかり。女が仕切って、社会が回っている。男はたまに帰ってくるだけなんですよ。だから、女が強くなったんだっていう話を、スウェーデンで聞いたことがあってね。ほぉ、なるほどって思った。平神さんも、バイキングの家庭ですよね。それも、戦士じゃなくて、優しいパパ。最高じゃないですか。家庭内家父長制の経験がないんだ。私なんて、おやじが目の前にいて、おっかさんがおやじの顔色を見てた。母って普通、子どもの前に立ちはだかる最強の権力者でしょ。最強の権力者がもう1人の男が出てくると、へぇこら始めるのを見るわけです。そうか、最強の権力者にまだ上がいたんだ、ということを子どもは学ぶ。それを平神さんは学ばなかったのね」

平神「そうですね」

上野「はははは。なるほど」

参院選で過去に女性の当選がゼロか1回の選挙区

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出典: 朝日新聞

長女が言った「私はどこに嫁げばいい?」

実はこの話、取材した僕自身、思い当たる節がありました。垂水市のことを取材したり、上野さんに会いに行く企画を考えたりするくらいなので、頭の中では「男女平等」って大事だなと思っています。

11歳になる長女には「女の子らしさ」を求めないように意識して接してきたつもりでした。しかし、昨年末。旅行先のお城で、「城主になって住みたいなぁ」と冗談を言った僕に、長女がこんなことを言いました。「じゃ、私はどこに嫁げばいい?」。驚きつつ、「いやいや、王様目指して頑張って」としどろもどろで答えましたが……。

大好きなディズニーのテレビか映画の影響なのか、それとも何かそんな物語を図書館で借りてきた本ででも読んだのか。男女の役割分担を、知らぬ間に身につけてしまうんだなぁ、などと首をかしげていました。

この日の取材終了後に雑談をしていると、上野さんに突っ込まれました。「それはあなたの問題なんだ」と。得意な英語を生かすなどして仕事をたくさんしたいと思いながらも、子どものことに時間を割かれて、長年、専業主婦を続ける羽目になった、(というか僕がそうしてしまった)パートナーの話をしたときでした。

上野さんは「両親を見ていれば、そうなるよ。女の人生、夫次第と思っちゃうのよ」。

今春話題になった、上野先生の東大での祝辞では、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイさんのお父さんが「娘の翼を折らないようにしてきた」と語ったことを紹介していました。さらに上野さんは、「多くの娘たちは、子どもなら誰でも持っている翼を折られてきた」とも。

平神さんも、祝辞の中でこのくだりが特に印象に残ったといいます。「翼を折らない」。娘を持つ40歳の父親が、その難しさを突きつけられた取材でした。

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