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「諸派」から考える参院選「安楽死制度を考える会」の前身、実は……
「雑草という草はない」という伝でいけば、「諸派」という団体はない、と言えるかもしれません。7月4日公示、21日投開票の参院選には、新聞では「諸派」と書かれるさまざまな団体が候補者を立てそうです。「諸派」って何?国政選挙で考えてみます。(朝日新聞編集委員・藤田直央)
参院選の日程が決まった翌日の6月27日、東京都内である「諸派」が立候補予定者を発表しました。「安楽死制度を考える会」です。
全国を一つの選挙区とみて団体同士で競う「比例区」と、都道府県ごとに候補者同士で競う「選挙区」に、まず計10人を擁立。全員が新顔のまだ新しい団体ですが、計10人を出すことで比例区に立候補でき、団体としてテレビで全国に流れる政見放送にも出られます。
実はこの団体の代表、3年前の前回参院選で比例区に出た団体「支持政党なし」の代表と同じ人です。
前回は法案ごとにネットで賛否を尋ねて国会での投票に反映させる「直接民主制」を掲げ、当選者ゼロながら64万票余りを獲得。でも先輩の政治家に「支持政党なしの人の声をどう国政に届けるの」と諭され、今回は「原点に返って」自身がこだわる安楽死制度の法制化を政見放送も活用して訴えるそうです。
現職の国会議員がいる政党と違って身軽なものですが、それでも計10人を立候補させるには結構な額の「供託金(きょうたくきん)」が必要です。売名目的などの立候補で選挙が混乱するのを防ぐためで、参院選では比例区1人600万円、選挙区1人300万円。一定の得票がないと没収されるので、いい加減な姿勢では臨めません。
今回の参院選には「NHKから国民を守る党」という「諸派」も出ます。2013年に発足し、受信料を支払った人だけ視聴できる「スクランブル放送化」の実現などを訴えます。
NHK批判という単一争点に訴えを絞る戦略が、受信料を払いたくない有権者に響いているようで、これまで39人の地方議員を誕生させました。地方の足場をいかし、参院選でめざすのは国政での初議席。6月28日現在、比例区に代表ら4人、選挙区に19人を擁立する予定で、こちらも供託金は相当な額にのぼります。
そこまでして今回の参院選に臨むこの2団体ですが、朝日新聞の紙面では政党とは扱わず、前述のように「諸派」とひとくくりにします。政党については法律上、交付金を受ける場合など目的に応じた基準はあっても、画一的な定義はありません。このため選挙報道では各メディアがそれぞれの基準で政党扱いする団体を決めます。
朝日新聞では「主要政党」を国会議員の数や組織の広がりなどから判断します。今回の参院選では6月28日現在で、自民党、公明党、立憲民主党、国民民主党、共産党、日本維新の会、希望の党、社民党、れいわ新選組の9団体がそれにあたり、すべて参院で議席を持っています。
一方、それ以外の団体は「諸派」扱いとなります。上記の2団体以外に、オリーブの木、労働の解放をめざす労働者党、幸福実現党が名乗りを上げ、いずれも現職の国会議員はいません。主要政党の候補者と競う選挙区で「諸派」が勝つのは至難のワザ。比例区では1議席を得るには100万票ほどが目安です。
相当高いハードルですが、今回1人でも当選者を出せば各メディアに一目置かれ、「主要政党」への道が開けるかもしれません。
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