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#114 #withyou ~きみとともに~
恋愛小説に胸キュン、同性愛の子は? 圧倒的に少ないレズビアン作品
若い時に恋愛小説に心躍らせる経験は、かけがえのないものです。でも、同性を好きな人は? 自分を投影できる恋愛小説の選択肢はとても少ないのが現実です。「レズビアンの10代の子にも、恋愛小説を楽しんでほしい」。そんな思いから、アメリカの作家が書いた原作書を翻訳しようとしている会社があります。
翻訳化が計画されているのは、2012年にアメリカで刊行された『The Miseducation of Cameron Post』(エミリー・M・ダンフォース作)です。出版社「サウザンブックス」は、この翻訳書を日本の10代に届けようとクラウドファンディング(7月21日まで)を続けています。
サウザンブックスによると、物語のあらすじはこうです。
この小説は、2018年に映画化されており、主人公のキャメロンをクロエ・グレース・モレッツが演じています。映画は高く評価され、同年に開催されたアメリカのサンダンス映画祭ではUSドラマ・コンペティション部門でグランプリを受賞しています。日本では劇場公開こそされなかったものの、「ミスエデュケーション」という題でDVDが発売されています。
サウザンブックスで、LGBTQ関連の著作を出版するPRIDE叢書(そうしょ)の編集者は、『The Miseducation of Cameron Post』についてこう語ります。
「10代は家族や友人との関係、学校のことなど、向き合わなければいけない悩みの種が多く、生きるだけで大変。そんな日々の描写が細かくてリアルなのがこの小説です。10代の、女の子が好きな女の子に、悩んでいるのはあなただけじゃないんだよと伝わってほしい」
また、この小説について語り合う場で、40代女性がこんなことを言ったそうです。
「これまで読んできたレズビアンが登場する小説は、結末が悲劇的なものばかりだった。でも、希望が持てる話が読みたかったんです」
この小説の主人公キャメロンは、「自分は自分」という芯を持っています。そのため、小説の最後も希望に満ちたものだといいます。
サウザンブックスの代表取締役の古賀一孝さんは、小説が10代のために書かれたヤングアダルト(YA)であることで、多くの10代が共感できる内容なのではないかと指摘します。
「経済的な自立がまだできていない10代は、自分で取捨選択することが難しく、自分では変えることのできない状況が圧倒的に多い。主人公・キャメロンは『同性愛の矯正施設』に送られてしまうのですが、その状況も、自分では変えることのできない状況。そのストーリーに重ねて自分を投影することもできるかもしれない」と話します。
YAを中心に取り扱っている大阪の古本屋「大吉堂」の店主・戸井律郎さんは「YAや児童書でセクシャルマイノリティをテーマにしているものが増えてきていますが、そのほとんどがゲイセクシャルかトランスジェンダーのことで、レズビアンを取り上げたものは少ない。YAや児童書はひとつのテーマに絞り込んで、先鋭化して書けるのも特徴だと思っています。だから多種多様なテーマが描ける。これもそのひとつとして応援しています」と話します。
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