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連載

#35 夜廻り猫

年寄りを「いないもの扱い」、俺の話は俺にしろ 夜廻り猫が描く無視

目次

「お父さんの胃は…」「息子さんいらっしゃいます?」。高齢の男性が、自分が〝蚊帳の外〟になっている状況に「こっちの話はこっちにしろ」と憤っています。「ハガネの女」「カンナさーん!」などで知られ、ツイッターで「夜廻り猫」を発表してきた漫画家の深谷かほるさんが「無視」を描きました。

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リフォームや医師の話も、町内会の集金も……

心の涙の匂いをかぎつける猫の遠藤平蔵は、きょうも街を夜周り中に、ある高齢男性の涙に気づきます。

業者から差し出された自宅リフォームの見積もり。「基礎工事が高いですね」と声をかけると、業者は「まず現状のコンクリートを…」と自分の息子に向かって答えます。

「お父さんの胃のポリープは…」。自分の身体の話も、医師は息子に向かって話します。

「町内会の集金です~息子さんいらっしゃいます?」と訪ねてきた近所の女性には、自分でも払えるのに…とイライラしてしまいます。

男性は「年寄りというだけで ここまで相手にされなくなるとは」と憤り、思わずテーブルをたたいて「分かっても分からなくても、こっちの話はこっちにしろ」と声を荒らげます。

テーブルの上にいたのに気づいてもらえなかった子猫の重郎はおびえて男性を見上げます。男性は、ハッと我に返って謝りながら「無視は寂しい」とつぶやくのでした。

「出来ない扱い」をしすぎないように

作者の深谷かほるさんは「自分が年をとって初めて分かったことがあります。肉体的な老化の大きさに驚きつつ、気持ちとしては若い頃と全く変わらないことです。我ながら驚くことが多いです」と話します。

お年寄りが無視される場面を見かけることがありますが、
「失礼なだけではなく、『若返る』ことはできませんし、お年寄りをひどく傷つけるのではないかと心配です。『出来ない扱い』をし過ぎないよう気を付けたいと思います」。

【マンガ「夜廻り猫」】
猫の遠藤平蔵が、心で泣いている人や動物たちの匂いをキャッチし、話を聞くマンガ「夜廻(まわ)り猫」。
泣いているひとたちは、病気を抱えていたり、離婚したばかりだったり、新しい家族にどう溶け込んでいいか分からなかったり、幸せを分けてあげられないと悩んでいたり…。
そんな悩みに、遠藤たちはそっと寄り添います。
遠藤とともに夜廻りするのは、片目の子猫「重郎」。姑獲鳥(こかくちょう)に襲われ、けがをしていたところを遠藤たちが助けました。
ツイッター上では、「遠藤、自分のところにも来てほしい」といった声が寄せられ、人気が広がっています。

     ◇

深谷かほる(ふかや・かおる) 漫画家。1962年、福島生まれ。代表作に「ハガネの女」「エデンの東北」など。2015年10月から、ツイッター(@fukaya91)で漫画「夜廻り猫」を発表し始めた。第21回手塚治虫文化賞・短編賞を受賞。単行本5巻(講談社)が4月23日に発売された。

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