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猫と警備員の攻防、「ゴッちゃん」引退 旧友が去って警備員の思いは
あの美術館猫のうち1匹が引退していたことがわかりました。
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あの美術館猫のうち1匹が引退していたことがわかりました。
美術館に入ろうとする猫と、防ごうとする警備員のやりとりで話題になった尾道市立美術館(広島県)。2匹いた名物猫のうちの1匹「ゴッちゃん」が、飼い猫として新たな生活を送っていることがわかりました。その後の美術館の様子について話を聞きました。
『ごめんナァ〜。I'm sorry. 』(H301026)スタッフ撮影の美術館周辺の猫スナップをご紹介。(spin off 2018、不定期配信) #尾道 #千光寺公園 #尾道市立美術館 #猫 #茶トラ #cat #onomichi pic.twitter.com/Ln9S61RS7m
— 尾道市立美術館 (@bijutsu1) 2018年10月27日
尾道市立美術館が最初に話題になったのは2017年3月。
近くのレストランで飼われている黒猫「ケンちゃん」が、開催中だった「猫まみれ展」の会場に入ろうとして警備員に阻止される様子がツイッターで紹介され、注目を集めました。
それから約1年半後の2018年10月。今度は茶トラの「ゴッちゃん」が入ろうとして同じ警備員に抱きかかえられ、優しく外に出される姿が話題になりました。
「玄関付近はケンちゃんのテリトリーなので、入ろうとするのはケンちゃんがほとんど。このときのゴッちゃんは珍しい姿だったんですよ」
そう話すのは、撮影やツイッターを担当した美術館のスタッフです。
にらみ合いー突撃ー防御ー再突破ー捕獲ーお見送り。本日も近所の黒猫と警備の方の攻防がありました。特別展「招き猫亭コレクションー猫まみれ」なので入館を許可したいところですが、作品保全のため、丁重にお帰りいただきました。展覧会HPはコチラ:https://t.co/LJMNYF9Vog pic.twitter.com/11m7mWVr3I
— 尾道市立美術館 (@bijutsu1) 2017年3月22日
4年ぐらい前から美術館周辺に姿を見せるようになったゴッちゃん。
最初のうちは定期的に世話をしている人がいたものの、次第に姿を見かけなくなり「地域猫なのかな」と思っていたそうです。
ケンちゃんが玄関付近をテリトリーにしているのに対して、ゴッちゃんは事務所近くを自分の縄張りに。
最初のうちは、顔を合わせると威嚇するようなしぐさを見せていた2匹でしたが、次第に打ち解けていったそうです。
ツイッターで紹介されて話題になるとテレビ取材も相次ぎ、海外でも取り上げられるほど2匹は有名になりました。
『ニュース😺news 』(2019/06/10) 🎨シブ5時さんをはじめ、皆さま、ありがとうござました。ゴッちゃん来館については負担の少ない方法を模索中。後日、ツイートにてご案内しますニャ。#尾道 #千光寺公園 #尾道市立美術館 #黒猫 #茶トラ #cat #onomichi #シブ5時 pic.twitter.com/kzGEQc5Zja
— 尾道市立美術館 (@bijutsu1) 2019年6月10日
そんなゴッちゃんには数年前から「里親として我が家に迎え入れたい」という相談が寄せられていました。
話題になってからも飼い主として名乗り出る人はおらず、ここで地域猫として暮らすよりも幸せになれるのではないか? そうして飼い猫として暮らすことが決まりました。
美術館周辺で過ごした最後の日が5月18日。その2日前、美術館スタッフがケンちゃんと一緒にいるところを見つけて動画を撮影し、ツイッターに投稿しています。
タイトルは「また会おうニャ~」。階段の上にいるゴッちゃんのところに、ケンちゃんが近づいてきて「ニャー」と鳴きながら、顔を近づける様子が映っています。
「2日後のことなんて分かってないはずなのに、なんだか別れを惜しんでいるように見えてしまいました」
Memories 032『お別れの日😿 farewell day 』(2019/5/16)🎨ゴッちゃんが離れる2日前。いつにもまして会話していたように思います。#尾道 #千光寺公園 #尾道市立美術館 #黒猫 #茶トラ #cat pic.twitter.com/qih65UBt40
— 尾道市立美術館 (@bijutsu1) 2019年6月10日
ゴッちゃんが去った後の美術館はどんな様子なのでしょうか。
「ケンちゃんは相変わらず、玄関付近に来ると入ろうとしてます。それから、ゴッちゃんと入れ替わるようにして古株の猫が顔を出すようになったんです」
その古株とは、近所で飼われているキジトラの「クウちゃん」。
美術館に入ろうとはしないものの、夕方になると玄関付近に現れて毛繕いをしているそうです。
「スタッフの間では『ゴッちゃんが引き継ぎしたのかな?』なんて話になってます」
『クウちゃん!😺Kuu-chan! 』(2019/06/10) 🎨夕方までには、お家に帰って、Ken & Goの活躍をみてやってニャー (^O^)/ #尾道 #千光寺公園 #尾道市立美術館 #キジトラ #cat #onomichi pic.twitter.com/Si6zbEOvfC
— 尾道市立美術館 (@bijutsu1) 2019年6月10日
ゴッちゃんやケンちゃんが話題になる時、警備を担当していたのはいつも馬屋原定雄さんでした。
特別展などに合わせて警備を担当しており、猫に話しかける様子や、優しく抱きかかえる姿が印象的です。
ゴッちゃんがいなくなる前後の時期は特別展は開催されておらず、美術館スタッフから電話で知らされたそうです。
「事務所の裏に行くと、いつもゴッちゃんが近づいてきて、足元でスリスリしてきたことを思い出しました。会えなくなると思うと、やっぱり寂しいですね」
Memories 024『大きな三毛猫😺big calico cat 』(2017/6/7) 🎨 3年前、日本橋三越本店からやってきました。尾道で第2の猫生を送っていますニャ(9/1まで展示)。#尾道 #千光寺公園 #尾道市立美術館 #茶トラ #黒猫 #cat #日本橋三越本店 pic.twitter.com/VsY0CYCSbu
— 尾道市立美術館 (@bijutsu1) 2019年6月7日
ゴッちゃんの新しい飼い主からは、定期的に写真が送られてきており、新しい家で幸せに暮らしているようです。
美術館としては、ゴッちゃんの負担にならない範囲で来館してもらうことも検討しているといいます。
約4年にわたってゴッちゃんの写真を撮り続けてきた美術館スタッフは、こう話します。
「ほぼ毎日顔を合わせていたので、学生時代の友人と別れたようです。ゴッちゃんの人生ならぬ猫生を祝福して、お互いに新しい一歩を踏み出そうね。そんな気持ちです」
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