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感動

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「除雪」の動画でこんなに感動するとは……深夜に動く「プロ集団」

動画では、札幌市除雪センターの日常作業が描かれる=サントリー提供
動画では、札幌市除雪センターの日常作業が描かれる=サントリー提供

目次

札幌市を舞台にした「ある動画」が話題になりました。人通りがなくなった深夜、人知れず取り除く縁の下の力持ち。その名も「札幌市除雪センター」です。時に、市民から寄せられる苦情に耳を傾けながら、ひたむきに仕事に打ち込む。除雪のプロが一番うれしい瞬間とは?再生回数が25万回を超えた動画の主人公たちに話を聞きました。(朝日新聞北海道報道センター記者・田之畑仁)

3分の映像

動画の発信源となったのは、サントリーの缶コーヒー「BOSS」のCMです。

実在の「札幌市中央区中地区除雪センター」を舞台に、深夜の除雪や、市民からの苦情に対応する様子などが描かれます。

約3分の映像の後半には、苦労が報われるシーンもあり、登場人物が前を向くというストーリーになっています。

除雪センター長の太田克之さん(41)と、動画に出演して主役を務めたセンター職員の成田俊一さん(43)に話をうかがいました。

「実は最初は、お断りしようと思っていたんです」

――最初にCMの話が来たのはいつごろだったのでしょうか?

太田さん「確か昨年の11月末ごろだったと思います。札幌市の担当課を通じて、除雪センターの仕事について取材と撮影をしたいと、そんな話だったと思います」


――その時は、どう思われましたか?

太田さん「実は最初は、お断りしようと思っていたんです。実際の現場の撮影や取材をしたいということだったのですが、希望があった1月というのは、現場作業がまさにピークを迎えるころなので、それどころではないだろうと。ただ、事前に絵コンテというんですか、台本のようなものが送られてきたので、とりあえず除雪の現場経験が15年とセンターの中でいちばん長い、成田さんに相談しました」

成田さん「相談を受けて絵コンテを見せてもらったのですが、そこに描かれていた内容に驚きました。『これはまさに自分たちのことじゃないか。おもしろいぞ』と。ぜひ依頼を受けるべきだと思いました」


――それで、主役として出演することも快諾されたと。

成田さん「まあ、そうなりますね」

太田さん(左)と成田さん=札幌市中央区
太田さん(左)と成田さん=札幌市中央区

ほろ泣きのラストも実話

――動画では、電話で市民からの苦情を受けるシーンがあります。実際にそういうことはあるのですか?

成田さん「苦情というよりも、問い合わせというかたちでご意見をいただくことは、私たちの日常では普通にありますね。動画でもあったように、道路から取り除いた後の雪の置き場のことだとか、あとは雪が解け始めるころになると、雪解け水や滑り止めの砂で道がジャリジャリになってしまっているのでなんとかしてくれ、といった内容が多いです」


――動画では、苦情を受けた方と除雪現場で再会し、そして……という展開がありますが、あんなことも実際にあるのですか?

成田さん「はい。実は私も実際に現場で経験したことがあります。動画の内容は私たちの経験談と言ってもいいかもしれません」


――撮影日数はどれくらいかかったのですか?

太田さん「1週間くらいだったと思います。私たちの仕事ぶりを映像で表現するため、ちょうどいい雪の降り方になるまで待つなど、撮影スタッフの方もいろいろと苦労されていたようでした」

CM動画では「札幌市中央区中地区除雪センター」の夜の風景が登場する=サントリー提供
CM動画では「札幌市中央区中地区除雪センター」の夜の風景が登場する=サントリー提供

「さっぽろ雪まつり」腕の見せどころ

――演技をするのはたいへんだったのでは?

成田さん「いつもの職場でいつもの仕事をするだけということもあったのでしょうか、実はほとんど緊張しませんでした。ずっとカメラが回っているなど初めての経験ばかりでしたが、どちらかといえば楽しませてもらいました」


――除雪作業でたいへんなことは何ですか?

成田さん「市民の方のお役に立てるように頑張っていますが、実際には、先ほどあったように様々なご意見をいただいてしまうのが現実です。雪の捨て場の問題が特にそうですが、すべての人に満足してもらえる解決法は見つからない、というのが悩みどころです」

CM動画に出演する成田さん=サントリー提供
CM動画に出演する成田さん=サントリー提供

――除雪作業のやりがいとは?

太田さん「やはり市民の方から感謝の声を寄せていただけることが、何よりの励みになります。私たちのセンターは『さっぽろ雪まつり』の会場も除雪エリアに入っており、開催に影響が出ないように除雪するのが腕の見せどころです。北海道でも一二を争う有名イベントを私たちが支えている、という自負も、少しはありますね」

成田さん「作業をやり終えた朝、自分たちが除雪した道に車や人が通っているのを見ると、やはり感慨深いものがあります。ただ、CMのラストシーンは、ちょっと大げさかもしれませんが……」


――今回の動画を通じて、もっとも伝えたいことは何ですか?

成田さん「多くの人にとって、目にすることが少ない除雪作業ですが、裏ではたいへんなことや苦労もあるということが、少しでも伝わればうれしいです」

太田さん「除雪センターというものの存在、そして、現場で作業をしている人だけでなく、私たちのように中で支えている人もいて除雪作業が成り立っていることを、少しでも多くの人に知ってもらえるとうれしいですね」

CM動画では苦労の末に、成田さんのこのホッとした笑顔が……=サントリー提供
CM動画では苦労の末に、成田さんのこのホッとした笑顔が……=サントリー提供

「CMにしてくれてありがとう」感謝の声

人口200万人規模の都市が豪雪地帯にあるという、世界でもあまり例がない特徴を持つ札幌市。転勤して初めての冬、噂に違わぬ雪の量に圧倒されつつ、夜に積もったはずの雪が朝になるときれいに除雪されていることに、ずっと興味を持っていました。

除雪センターは9社による共同企業体で、札幌市から除雪作業を請け負うのは12月1日から3月20日まで。

オフシーズンには、職員はそれぞれの企業に戻ります。太田さんと成田さんも所属企業は別々。センター職員の日常を収めた約1週間の撮影は、「今シーズンのいい思い出になりました」と声をそろえます。

サントリー広報部によると、BOSSは「働く人の相棒」として様々なプロモーションを進めてきたそうです。

今回は、さっぽろ雪まつりにブースを出したことをきっかけに、北海道をテーマにしたCM作成を企画。「冬の北海道で『働く人』といえば、やっぱり除雪でしょう」という意見があり、除雪作業に注目することを思いついたそうです。

緊張感のあるシーンの後、最後にちょっとホロっとする展開。サントリーには、動画を見た別の除雪作業者の方から「CMにしてくれてありがとう」と感謝の声も届いたそうです。

実は私が住んでいるマンションも、今回取材した中地区除雪センターの除雪エリア。取材の最後に、一市民として「いつもありがとうございます」とお礼を言うと、動画で見た「はにかんだような笑顔」で応えてくれました。

CMはインターネット(https://www.youtube.com/watch?v=NLcUnssRhXo)のみ公開されています。

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