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ツイッターで世相を斬りまくる落語家・立川雲水「今の政治は面白い」
「今の政治は面白い。突っ込みどころが多いでしょ」――。こう語るのは、落語家の立川雲水さん(48)です。毎日のようにツイッターで、日々のニュースに突っ込みを入れています。「うそやはったりは噺家がやるもの」という雲水さんに、最近のツイートを振り返りつつ、その心を聞いてみました。
例えば、東京都港区の南青山に建設が計画されている児童相談所を巡る住民と自治体の対立は、多くの人が記憶に新しいでしょう。
このツイートについて、雲水さんに尋ねてみると、「児童相談所ができて何が困る? 土地が高くて、住民はハイソ? いい土地に住んでいるから裕福ってのは違うと思うんですけどね」と言います。
そもそも立川雲水さんはどんな人なのでしょうか。
徳島県出身。1988年、落語立川流家元の立川談志さんの弟子になりました。談志さんは元参院議員です。1971年から1期務めています。政治家の集会に、弁士として招かれた談志さんに同行したこともあったそうです。「家元は、演説で田舎の年寄りを盛り上げるのは得意技。当然のことながら名人芸です」
雲水さんは、2010年7月からツイッターを始めました。
「言葉遊びや小噺で、ちょっとした落ちを付けるのが面白いのでツイッターをやっています」
「スポーツや芸能の方よりも、政治の世界の方が面白い。突っ込みどころが多いでしょ。僕がツイッターで政治のことをつぶやいているのは職業病かもしれないですね」
「でも信念に反することは書いていないですよ。こういう風に切り返したらいいかな、という感じで書いています」
ツイートの中には、政治の話題が多く出てきます。
これは、沖縄県名護市の辺野古沿岸部に米軍飛行場を移設するため、政府が埋め立て工事を始めたことにまつわるツイートです。
今年2月の県民投票の投開票まで工事の中止を求めるアメリカ政府への請願に、モデルのローラさんがSNSを使って署名を呼びかける書き込みをしたことで話題になりました。イギリスのロックバンド「Queen」のブライアン・メイさんらも署名を呼びかけています。
雲水さんは「私らこんな商売で、言いたいことを言いたくて噺家になった。いろんな人間がいて当たり前。個々人が自立して、自分の考えを言えばいいじゃない。おかしなことがあればおかしいという者がいてもいいんじゃない」と言います。
このツイートにあるように、昨年、テレビを捨てたそうです。
「テレビを持っている以上、NHKにカネ払えってどうなんですかね?」
一方、有料コンテンツにお金を払って見る視聴方法には理解を示しています。
「ペイ・パー・ビューなら払いますよ。見た分だけ払えって言うなら」
「ただ、勝手に番組つくって、受像機持っているなら払えってのはね。僕は新聞も取っていないから、何時に何をやっているのかもわからない」
「新聞は必要があれば、コンビニに買いに行くし、ネットニュースで情報を得るのに困らないからね」
「ユーチューブは見ることありますよ。でも、自宅ではほぼほぼテレビは見ないし」
福岡県内のコンビニで 100円を支払って150円のカフェラテを注いだとして、窃盗容疑で男性が逮捕された事件が、テレビ番組やネットニュースで話題になったのは、1月21日のことでした。
辛辣であるとともに、言い当てている面があります。
雲水さんは、「周りの人たちは後始末に困っているんじゃないかな」と語ります。落語に出てくる若旦那を例に、こんな例え話をしてくれました。
「落語でよく出てくる若旦那は、道楽者と決まっている。お店としては若旦那に遊んでいてくれていた方がいい。番頭がうまくやりくりした方がいいからね。若旦那が『お店の商売の改革を…』とか言い出したら、却って老舗の大店の屋台骨が揺らぐっていう話ですよ」
日本とロシアの北方領土返還と平和条約締結を巡る交渉も、こんな小噺にしていました。
雲水さんは「プーチンさんと、ちゃんと話せているんですかね」と首をかしげています。
沖縄県の県民投票を巡り、当時5市が参加しない方針を打ち出し、署名を集めた市民団体代表の大学院生が、翻意してもらおうとハンストに入りました。大きなニュースになり、ネット上では色々な臆測が流れました。また政治家を含め、推進する側の人たちから、その手法に厳しい意見が寄せられました。ツイートについて聞いてみると、雲水さんはこんな見方をしていました。
「ハンストをやっている人を、やいのやいのと言って叩くのはおかしいと思うよ」
「戦争の時は自由に飲み食いできなかったんでしょ。ああやって頑張ってくれる人がいるから、ブレーキもかかる。自分の意思で飲み食いしないんじゃなく、自分の意思でなくて飲み食いできなくなっちゃった先人の言うことは、うそではないと思いますよ」
2019年は亥年。亥年は選挙が多い年と言われています。昨年の暮れ、ネットニュースで、大相撲の元貴乃花親方への参院議員選挙の立候補要請を巡る記事が流れました。
雲水さんは「芸能人や著名人を選挙に出す方も、投票する方も、何を期待するの?」と疑問を投げかけます。
「もっと言うなら、政治家の方が芸能人化しているよね。政治家が芸能人に寄ってきているところがある。それも、これも、その人に投票する人がいるからしゃあない」
「いろんな人がいるのはいいけど、あまりにもそういう人の数が多いのもね」
「立川談志の弟子が言うなって言われそうですけど」
2月14日、「お江戸上野広小路亭」であった雲水さんの落語を聞きに行きました。古典落語一色です。ツイートにあるような政治の風刺はありません。
「高座を見に来てくれる人は、不特定多数ですからね。お金を払って見に来て頂いたお客様の気分を害する可能性のあることはなるべく避けたいと思います。ツイッターは、基本的に私の考えを良しと思っている人が見に来てくれる。対面でもないですしね」
「ツイートを見て、笑って欲しいですね」
ツイッターなどSNSは若い世代のコミュニケーションツールです。そのツールを使ってツイートする雲水さん。若い世代と政治の関係について、尋ねてみました。
「3.11を考えると、原発事故の処理とか、どうやっても避けられない。これからの世代もかかわっていくこと。あのような事故を二度と起こさないためにも、どのような人を選ぶかは大事ですよね」
「お上はちゃんとしているんだという意識があると思うけど、ちゃんとしていない人はいないという思い込みがあったんだよね」
「うそやはったりは、噺家がやるもの。国やマスコミがしっかりしてくれないと、我々の存立基盤が揺らいじゃう」
雲水さんは、立川流での話を例えにして、こう言いました。
「家元が亡くなってからは、立川流という団体として、所属する者のなるべく多くの者が納得するように運営をしていかなければならないという考えがありました。なるべく多くの市民・国民が満足して生活できるようにするのが政治ですよね」
では、市井の人たちはどうしたらいいのでしょうか。
「選挙の投票率を上げようと思ったら、簡単ですよ。『徴兵制を復活するぞ』とか極端なことを言えば、わんさか投票所に押し寄せるかもしれない。『それだけはさせない!』『あいつらだけは当選させるなー!』ってね。これ、家元が選挙の立ち会い演説会でよく言っていたネタです。でもね、一つの情報に頼って若い人がわーっと投票に押し寄せるのも、政情不安な社会かもしれない」
「僕はね、投票率が上がって、みんなが安全で楽しく暮らせる社会が理想だと思いますよ」
ツイッターで政治を風刺しつつ、こう考えています。
「今の政治は疑ったうえで国民が自分の足で調べようとなるなら、成長するいい機会じゃないですかね」
平成時代の「ええゃじゃないか」は、SNSで始まるのかもしれない。
ピエール瀧のご尊父にインタビューしてなんの得るもんがあるねんな?それやったら酒井法子でも槇原敬之にでも突撃せんかいな。身内の話が欲しいねやったら中村玉緒でもおるやん。
— 立川雲水 (@tatekawaunsui) 2019年3月14日
朝日新聞「声」欄では、若い世代のみなさんがつくる「#Youth川柳」(#Y川柳)を始めます。
初回テーマは「新学期」。自由に五・七・五にまとめてください。
締め切りは4月7日(必着)。23日の朝日新聞「声」欄で一部を紹介する予定です。
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