連載
#3 東日本大震災8年
燃えやすい街「木密地域」品川・荒川……首都直下地震への備えは?
想定される首都直下地震など大災害への備えを厚くする事業を、東京都内の自治体が新年度予算案に計上している。東日本大震災でも必要となった避難所のスムーズな運営など、災害時の対応改善もその一つだ。都内に多い木造住宅密集地域の対策も続ける。
避難者の受け付けや誘導、炊き出し、仮設便所の設置、夜間の門の開閉……。板橋区は、避難所運営に必要なこうしたノウハウを動画で説明するDVDを作る。関連経費402万円を計上した。
全73の区立小中学校を災害時の避難所に指定し、その運営責任者を町会・自治会長らとしているが、慣れない施設の利用や運営に不安の声があるという。担当者は「自助、共助の意識を高める内容にしたい」と話す。
都内で災害時の避難所に指定された施設は、学校など2663カ所。東京湾北部が震源の首都直下地震が起きた場合、都は最大で死者約9700人の被害を想定する。
そうした大災害での混乱の中、炊き出し場所などの情報を正確に伝えるため、狛江市はFM送信装置(593万円)を導入する予定だ。今は防災行政無線のスピーカー27基やツイッターなどのSNS、市のウェブサイトなどで伝えているが、高齢者でもラジオで手軽に聴けるFM放送を加えるという。
一方、都内に約1万3千ヘクタール(都の面積の約7%)ある木造住宅密集地域の対策も重要だ。
危険度の高い「整備地域」の面積が都内で最大の品川区は、中でも危険とされる「不燃化特区(重点整備地域)」を減らすため、約12億円の事業費を計上。住宅の解体や耐火建物への建て替えなどの費用を一部助成する。
都と区で折半するこの助成制度は近年、同区で年100件を超す利用が続いているが、20年度で終わる予定。
「制度の認知度を上げ、利用者増を図りたい」と区の担当者はいう。
荒川区は、区の面積のうち58%が「整備地域」で、その割合は都内最高(15年度)。老朽建物の除去などを続けており、対策済みの面積の割合は2カ所の不燃化特区で今月末に62〜67%まで上がる予定だが、担当者は「20年度末の目標が70%。加速させたい」。
新年度は取り組みを広げる予定で、不燃化特区整備促進(約8億2千万円)などの予算を計上した。
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