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沖縄知事選「#去った日曜日軍団」事件 政治家の「コピペツイート」
今年9月にあった沖縄知事選で、あるハッシュタグが静かに広まりました。「#去った日曜日軍団」。投稿では、沖縄県の複数の自民党議員らが一言一句同じツイートをしたことを取り上げ「コピペ」などと批判するものでした。ツイートがすぐに削除されたことでさらに注目を集める結果になりました。SNS上では誤情報も飛び交った沖縄知事選。「#去った日曜日軍団」騒動から、SNSに向き合う政治家の姿勢について考えてみました。(朝日新聞記者・宮野拓也)
一連のツイートがあったのは10月5日の日中。
「去った日曜日、沖縄県知事選挙、さきま淳氏の勝利は叶いませんでしたが、ご協力を頂きました皆様には大変感謝をしております。ありがとうございました。」
そんな内容で、数日前にあった沖縄県知事選挙で落選した佐喜真淳氏への応援に感謝を伝えるものでした。
まったく同じ文言のツイートが複数の自民党議員らのアカウントから発信されたため「コピペで感謝を伝えるとは」などの批判を呼びました。
投稿はその日のうちに一斉に削除されました。
該当のツイートをしたのは、沖縄県選出の西銘恒三郎・衆院議員、島尻安伊子・元参院議員、宮崎政久・元衆院議員(当時)、渡具知武豊・名護市長の4氏のツイッターです。
アカウントの持ち主のうち、宮崎氏を除く3氏が秘書や事務所の担当者を通じて取材に応じ、いずれも自らのアカウントだと認めました。
宮崎氏とみられるアカウントには認証マークがついており、悪質な成りすましなどが無ければ、宮崎氏本人のアカウントだと考えられます。
結果、私が確認した4氏全員が、コピペツイートを投稿していた可能性が高いことがわかりました。
SNSの情報は、有権者にとって政治家の資質や人柄を判断するため、重要な情報です。2013年7月の参院選からは、ホームページ(HP)やツイッター、フェイスブックなどを利用した選挙運動も解禁されています。
今回の沖縄知事選でも、当選した玉城デニー知事や敗れた佐喜真淳氏らもツイッターを頻繁に更新。一部では不正確または中傷する情報も流れました。
そんな中、選挙後に突如、現れたのが一言一句同じツイートが国会議員を含むアカウントから投稿されるという「#去った日曜日軍団」でした。
いったい、なぜ、そんな投稿をしたのでしょうか?
西銘氏の事務所担当者は当初、該当のツイッターアカウントについて「確認が取れない」と説明していましたが、1週間ほどして「本人が自身の選挙用につくったアカウントで間違いない」と回答しました。
該当のツイートについては「誰がツイートしたのか分からない」と説明。理由として「自身の選挙用につくったアカウントだが、選挙後何人かにログインのパスワードを伝えた。今になっては直近の沖縄知事選中も含め誰がツイートしていたか把握できない。アカウントを削除することにした」と説明しました。
島尻、渡具知両氏は、アカウントの運用は本人や事務所スタッフがしていると回答しました。
「去った日曜日」のツイートについて経緯を尋ねると「関係者と調整を行うなど、支持者にメッセージが届くように適切に対応しています」というほぼ同内容の回答が、両事務所からファクスで送られてきました。後日、西銘氏にも今後の運用方法などを尋ねると同趣旨の回答が返ってきました。
沖縄の選挙活動に関わった関係者は「たまたま一言一句同じツイートをするなんて奇跡はなかなかない」と話します。一般論とした上で、「議員たちのアカウントを陣営の担当者がまとめて管理して発信することもあるのでは」と説明します。
「元々発信する考えが無い人にその意義を教えて発信してもらうよりずっと効率がいいですから」
ツイッターが選挙中に街頭演説の時間や場所をリアルタイムで伝え、候補者の訴えを届ける機会を増やすのに役立っているのは事実です。今回の沖縄知事選では、出所不明の情報に候補者本人が迅速に反論する場面もありました。
「効率」を考えるなら、ツイッターの運用を一元的に管理した方が正解なのかもしれません。
しかし、「言葉」は政治家が有権者に訴える最大の武器です。ツイッターとは言え、政治家が他人の投稿をコピペすることは「言葉」を軽んじていることにならないでしょうか。自分のアカウントを誰が使っていたのか分からないという管理体制にも問題を感じます。
もし、自分の選挙区の立候補者が「コピペ」を繰り返すロボットみたいな人だったら……。沖縄知事選で起きた「#去った日曜日軍団」騒動は、一票を託したい政治家の資質について考えさせられる一件として記憶に残りました。
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