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2018年12月26日

「これは、善意じゃない」東ちづるさんが障害者エンタメを開く理由


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障害者とのエンタメづくりの場は、なぜ生まれたのか?

障害者とのエンタメづくりの場は、なぜ生まれたのか?

出典: (c)Get in touch

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 東ちづるさんは今、障害者とのステージに取り組んでいます。数々のドラマや映画に出演してきた俳優が、なぜ、この道を選んだのか? その動機について「善意ではない」と語る東さん。むしろ自身が抱く「生きづらさ」が原点にあるといいます。「平成の見せ物小屋」という刺激的な言葉で、世の中を揺さぶろうとする生き方から、「不便と不幸をごっちゃにしない」社会について考えてみました。(withnews編集部・神戸郁人)

「平成の見せ物小屋」銘打ち、イベント開催

先頭に立ってイベントを企画した東ちづるさん=岩井建樹撮影

先頭に立ってイベントを企画した東ちづるさん=岩井建樹撮影

<東さんは1年ほど前、障害者アーティストやパフォーマーを中心としたエンタメイベント「月夜のからくりハウス 平成まぜこぜ一座」を開催。テーマは「平成の見せ物小屋」という、刺激的なものでした>

――17年12月に、東京・港区で「月夜のからくりハウス」を開催しました

 30人を超えるアーティストが出演しました。障害者が中心で、他もLGBTなどのマイノリティーが大半です。スタッフを入れると総勢150人ほどが運営に関わりました。

――そもそも、なぜ企画しようと思われたのでしょうか

 2011年に一般社団法人「Get in touch」を立ち上げたのがきっかけです。どんな状態でも、どんな状況でも、誰も排除しない「まぜこぜの社会」の啓発のため、マイノリティーの存在をアートや音楽イベント、映像などを通じて広めてきました。その過程で、障害者パフォーマーたちと出会ったんです。

 全盲の落語家や車いすダンサー、いわゆる「小人症」のプロレスラー。私が思っていた以上に魅力的で、様々な人々がいました。でも、彼らが表舞台に出ることって、あまりにも少ない。「障害者をさらし者にするのか」と批判されることもありますし。

 だから、法人の応援者との懇親会などに来てもらっていたんです。すると、「有無を言わさない、圧倒的なパフォーマンス」と評価されたり、「色んなアーティストが一堂に会する場は無いのか」と要望されたりしたため、「月夜」の開催を決めました。

全盲の落語家など、数多くの障害者アーティストたちがパフォーマンスを披露した

全盲の落語家など、数多くの障害者アーティストたちがパフォーマンスを披露した

出典: (c)Get in touch

――「平成の見せ物小屋」という、刺激的なテーマを掲げられていましたね

 センセーショナルに見せたくて、わざと名付けたんです。障害者パフォーマーは、生きるため人前に出ている。私の仕事もそうです。歌舞伎だって、相撲だって、見てもらわないと成立しない。だから、どうやったら話題になるかを考えた末の判断です。

――どんな反応がありましたか

 批判は無かったですね。耳の聞こえない人や、車いすユーザーを含め、たくさん来てくれて。障害がある人も、無い人も一緒になって楽しむという、まさに「まぜこぜ」状態でした。

「私はさらし者になりたい」というせりふの意味

舞台で躍動する義足のダンサー・森田かずよさん

舞台で躍動する義足のダンサー・森田かずよさん

出典: (c)Get in touch

<公演にあたって、舞台の台本も自ら書いたという東さん。障害があるパフォーマーたち一人一人に「リスペクト」を持って接したそうです>

――印象的だったパフォーマーはいますか

 二分脊椎(せきつい)症で、義足のダンサー・森田かずよさんです。舞台で踊る際に、「私はさらし者になりたい」というせりふを語ってもらいました。

 これは、彼女自身の言葉なんです。以前、街中である親子とすれ違った時のこと。幼い娘さんの方に笑いかけたら、横にいた母親が「見ちゃダメ」と手で目を覆ったそうです。「その時、私は存在しないことになった。だからこそ、さらし者になると決めた」と。

――切実なメッセージですね

 だからこそ間違って受け取られないよう、台本のセリフも丁寧に考え、担当のメンバーと一緒に、20回くらい手直ししました。

――イベントでは障害のある人たちと、どのように向き合ってこられたのでしょう

 たとえば、自閉症の人向けに、パニック状態になったとき、1人になれる個室を用意するなどしました。障害に触れないのはおかしいし、それぞれが何に困っているかをリサーチしました。一方的な「支援」や「施し」ではなく、一緒に活躍できるチャンスを作りたいと思ったんです。そうしたことも合理的配慮ですよね。

 あとイベントの開始前、注意事項の説明を、ろうあ者のふたりにお願いして演出しました。「携帯電話の音は切って下さい」「私たちには聞こえないけどね」などと、手話漫才で(笑)。普段は「聞こえる人」が優位な社会で、存在を主張してもらうという狙いです。

上演中の注意事項について説明する、手話漫才師の「もんちゃん&れんちゃん」

上演中の注意事項について説明する、手話漫才師の「もんちゃん&れんちゃん」

出典: (c)Get in touch

原点は自分自身の生きづらさ

これまでの生き方を振り返る東さん

これまでの生き方を振り返る東さん

<東さんが、障害者アーティストの活躍の場をつくる原点は、自身の感じてきた「生きづらさ」にあるといいます>

――東さんが、そこまで情熱を注げる理由は何なのでしょう

 自分が不安だからですね。芸能界では、「若い」「可愛い」といった価値が重視されますよね。芸歴を重ねるほど生きづらくなる。必ず高齢者になるし、障害者や難病患者になる可能性もあります。そうなった時に、私や家族、大切な人が生きづらさを感じるのは嫌なんです。

――ご自身の人生とリンクしているんですね

 それはすごくあります。昔から、生きづらさを感じることが多かったんです。長女であるがゆえに、母から「しっかりしなさい」「愛される人になりなさい」と言われて。以前は、彼女が望む人間になろうと、無自覚に必死でした。

 高校時代に教師を目指していたんですが、それも母の希望だったような気がします。「人に愛される人間であるべき」「社会の役に立つべき」。親を通じてもたらされる、そんな世間一般の「長女像」を、過剰に受け取っていたんでしょうね。

イベントでは「座長」として司会を務めた

イベントでは「座長」として司会を務めた

出典: (c)Get in touch

――現在の取り組みを始めてから、心持ちは変わってきましたか

 とても楽になりましたね。「月夜」もそうなんですが、「どんどん失敗しよう」「間違おう」という方針で臨んでいるのが大きいと思います。

 私、リーダーなんですが、仕事を他のメンバーに振りまくるんです(笑)。互いに迷惑を掛け合うし、決して一方通行な関係じゃない。それってすごく快適じゃないですか。

 「こう生きなきゃいけない」などの「べき論」が、今の社会にまんえんしていると感じます。「もっと楽に過ごそうよ!」ということは、活動を通じて伝えているつもりです。

不運と不自由、不便と不幸は違う

イベントでは障害者によるプロレスも行われ、観客たちが熱狂した

イベントでは障害者によるプロレスも行われ、観客たちが熱狂した

出典: (c)Get in touch

<障害者は不幸――。そんな見方が残る社会で、その人の存在自体を認める重要性について、東さんは語ってくれました>

――おっしゃったように、「正しさ」への信仰は根強いですよね。時に耳にする「障害者は不幸」という言葉にも通ずる気がします

 不運と不自由、不便と不幸をごっちゃにしている人が多いと思うんです。たとえば平和な時代ではなく、戦時下に生まれるのは不運かもしれません。そして障害があると、今の社会では不便さや不自由さを味わうかもしれない。でも不幸かどうか決めるのは、絶対的にその人の感覚です。

 たとえば、小人症の人とは、「自動販売機で上の方にあるボタンが押せない」「高身長の障害がある人と比べ、自分たちに活躍の場が無い」などといった話になることがあります。そこで初めて気づくんですよね。そこから不便を解消できる対応につながると良いなと思います。

――その労力をかけることは、決して「迷惑」ではないと?

 全然迷惑じゃないですよ!必要な配慮ですから。そうした認識が共有されるためにも、マイノリティの存在を発信し続けたい。その結果、色んな人が生きやすい社会をつくれれば良いな、と考えています。

 「月夜」に参加した自閉症の男性アーティストが、観覧者で同じ障害の男の子から「お兄ちゃん、かっこよかった」と声をかけられていました。その後、話を聞くと「東さんに出会えなかったら、俺は世間や人を恨むことが原動力のアーティストになっていた」と教えてくれた。

 存在を認められてこそ、自分を肯定できる。障害があろうとなかろうと、それって同じですよね。色々な特性を持った人が、目の前にいる。たとえ理解できなかったとしても、それをそのまま認め合えるのが、「まぜこぜの社会」なんだと思っています。

イベントに参加したメンバーたちで記念撮影

イベントに参加したメンバーたちで記念撮影

出典: (c)Get in touch

◆東ちづる(あずま・ちづる):

 広島県出身。俳優・タレントとして、数々のドラマや映画に出演してきた。2011年に起きた東日本大震災をきっかけに、一般社団法人「Get in touch」を設立。理事長として、マイノリティーの存在を広める活動を続けている。自身が企画やインタビューを担当した、LGBT当事者たちの記録映画「私はワタシ~over the rainbow~」が、各地で上映中。


◇ ◇ ◇

 一般に、なじみが薄くなりがちな障害者の存在。でも、ふとしたきっかけで、誰もが当事者になるかもしれません。全ての人が、偏見や無理解にさらされず、安心して暮らせる社会をつくるには?みなさんと考えたくて、withnewsでは連載「#まぜこぜ世界へのカケハシ」を企画しました。国連が定めた12月3日の「国際障害者デー」を皮切りに、障害を巡る、様々な人々の思いを伝えていきます。

「これは、善意じゃない」東ちづるさんが障害者エンタメを開く理由
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「月夜のからくりハウス 平成まぜこぜ一座」の一幕
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出典:(c)Get in touch
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