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感動

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ツリーが見られない子どもたち…病気と闘う「もう一つのクリスマス」

入院患者の子どもたちや付き添う親、病院スタッフ、地域の人たちが作った「おりがみツリー」=東京都世田谷区の国立成育医療研究センター
入院患者の子どもたちや付き添う親、病院スタッフ、地域の人たちが作った「おりがみツリー」=東京都世田谷区の国立成育医療研究センター

目次

 全国から小児がんや難病の子どもたちが集まる国立成育医療研究センター(東京都世田谷区)のロビーに、高さ7メートルの「おりがみツリー」がつるされています。病気に立ち向かう子、それを支える家族らが折った約5000枚。実は、メッセージの多くは、自分の回復よりみんなの回復を願う言葉です。今、病院のスタッフがサンタクロースに願うのは、子どもたちに一つ一つの想いがつながった大きなツリーを見てもらうこと。病棟で過ごす子どもたちを思う「もう一つのクリスマス」を追いました。

「おりがみツリー」の高さは7メートル
「おりがみツリー」の高さは7メートル

「思い出を共有したい」と若手医師が提案

 「はやくよくなりますように」
 「Get Well」
 「ひとりじゃないよ! たくさん支えてくれる人がいるからね」
 「千羽つるっていいよね」
 「ぜったい元気になる」
 「たいいんして焼き肉食べたい」

 地下1階のカフェテリアから見上げる「おりがみツリー」には、こんな願いが書き込まれています。

 このツリーが始まったのは、2012年。当時、小児科医として後期研修をこの病院の総合診療科でしていた橋本直也さん(34)が同期の医師と一緒に始めました。

 橋本さんは「クリスマスを病院で過ごす子どもがいます。大変だけど、いい思い出ができるようなことが何かないかな」と考えたそうです。

想いが込められたおりがみ
想いが込められたおりがみ

プレゼントはちょっと違う

 後期研修1年目の前年は、昼間、100円ショップで買った「ながぐつ」を子どもたちの枕元に配りました。すると、深夜、何人ものサンタクロースがぬいぐるみを入れていったそうです。

 ただ、橋本さんたちには、何か引っかかるものがありました。

 「子どもたちが年齢を問わず、誰でもできる何かを、僕たちも一緒にやりたいよね」

 みんなが参加できるクリスマス。その答えが、「おりがみツリー」でした。

 「病院という特殊な環境で入院生活を送ってふさぎ込んでいるのではなくて、みんなが明るくなれることはないかな、と考えました」

 こう振り返る橋本さんですが、書かれたメッセージを見ると、「ここにいるみんなが元気になるように」と書いている人が多いことに気付きました。

 「手術室や集中治療室の前で、子どもに付き添うママが、『みんなが元気でありますように』と願いを込めたメッセージを書き込みながら折っている姿に、思いやりを感じました。自分の子のとてつもないタイミングに、自己中心的ではなく、他の子を思いやっている親の気持ちはすごいものがあります」

集められたおりがみを整理する病院スタッフ
集められたおりがみを整理する病院スタッフ 出典: 国立成育医療研究センター提供

スタッフも患者も家族も「孤独じゃない」

 この「おりがみツリー」。1回目に病院スタッフにアンケートをしたところ、モチベーションアップの効果があったそうです。

 「夜点灯したツリーを見て、明日も頑張ろうと思いました」

 そして、入院中の子どもに付き添うママからは、こんな声が寄せられたそうです。

 「孤独じゃない。同じように頑張っている人がこんなにいるんだ」

集められたおりがみは、病院スタッフらがはり付けていった
集められたおりがみは、病院スタッフらがはり付けていった 出典: 国立成育医療研究センター提供

地域の学校も参加

 地域にも開かれた、地域に支えられた病院にしようという目的でスタートした国立成育医療研究センター。2年前から、近隣の目黒星美学園中学高等学校や、東京都市大学付属中学・高等学校の生徒など、地域の人たちにも、入院中の子どもたちのためにと、折ってもらっているそうです。

 橋本さんはこう話します。

 「入院している子どもたちも、いずれは社会に戻っていきます。戻りやすい社会になったらいいな、こういう頑張っている子どもたちがいるんだ、と社会が関わりを持ってくれたらいいですね」

「おりがみツリー」を発案した小児科医の橋本直也さん(左)と、引き継いだ同センター総務部の佐藤徹さん
「おりがみツリー」を発案した小児科医の橋本直也さん(左)と、引き継いだ同センター総務部の佐藤徹さん

毎年お焚き上げ

 後期研修を終えた橋本さんが病院を離れた今、「おりがみツリー」を「プロデューサー」として引き継いでいるのが、同センター総務部の佐藤徹さん(33)です。

 今年は12月12日に点灯式があり、1月末日まで展示されています。その後は毎年、地元の神社で「お焚き上げ」をしてもらっているそうです。

「思いが詰まっているものなので、燃えるゴミとして捨てられません」

多くの人の善意

 小児医療の現場では、難しい疾患の場合、地元のこども病院や大学病院ではなく、ナショナルセンターである国立成育医療研究センターの病院に転院してくるケースが少なくありません。豊富な症例数を持つからです。最近は、海外からの患者も増えています。

 「国立」という冠が付いていますが、クラウドファンディングに取り組んだこともあります。

 2016年9月、「小児がんと戦う、みんなの願い。不足する無菌室をつくろう!」と呼びかけ、3116万2000円を集めました。

 目標の1500万円は、2日と6時間で達成し、その後も続々と支援の輪が広がっていきました。最終的には1861人が参加。今年9月下旬に、新しい無菌室2部屋が完成しました。

点灯された「おりがみツリー」
点灯された「おりがみツリー」 出典: 国立成育医療研究センター提供

折った子どもたちが見られますように

 7年目となる「おりがみツリー」。実は、乗り越えられない「大きな壁」があります。

 ここで入院治療を受けている子どもたちは、治療による免疫力の低下などを抱え、感染管理が徹底された病棟で過ごしています。そのため、きょうだいであっても、子どもは病棟に入れないのがルールです。

 また、感染管理がされた病棟から、治療や検査以外で許可なく院内を散歩することもできません。

 ツリーの前に立つと、誰しも、その想いの重さ、大きさに圧倒されます。そして、1枚では小さなおりがみですが、5000枚のおりがみがつながると、大きな勇気に変わっていきます。

 おりがみを折った子どもたちが、この大きな「おりがみツリー」を見て勇気をもらう方法がまだ見つかっていません。

 佐藤さんたちが願う、サンタから子どもたちへのプレゼント。

 「今年も約300人の子どもたちがこの病院でクリスマスを過ごします。この大きな『おりがみツリー』を何らかの方法で子どもたちと共有できればいいですね」

国立成育医療研究センター=東京都世田谷区
国立成育医療研究センター=東京都世田谷区

みんなが折った折り紙が、クリスマスツリーになります。医療の現場にいる子どもの願いを、医療機関の中だけではなく、より広く世の中とつながったものになってくれればと思っております。

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