連載
#11 コミチ漫画コラボ
「ぼっち」よりいいと思ってたのに…クリスマスバイトで見た「地獄」
「カチカチカチカチ」
死んだような目でひたすら何かを押し続ける男性。
クリスマスの日、アルバイトでイベントに来るカップル(リア充)の数をひたすらカウントしています。
にしもとさんは4年前、大学の先輩に「クリスマス空いてるんやったらバイトせえへん?」と、アルバイトを紹介されました。その先輩は前の年に同じバイトを経験していて、先輩によると「クリスマスの日にリア充をカウントするだけのバイトやで」。
アルバイト場所は、クリスマスにちなんでフィンランドの商品や食べ物を出店するイベントでした。
「引き受ける時は、正直何も予定のない僕の救済だと勝手に思ってました。お金ももらえるし、『クリスマスはぼっち(独り身)だった』より、『クリスマスはバイトで忙しかった』って言ってたほうが耐えられるなと(精神的に)」
「クリスマスに予定がない時点でかなりもってかれてるので(心が)、なんとか予定を入れたかったという気持ちだったので地獄なのは承知の上でした」
しかし、いざバイトが始まると想像を超える地獄が待っていました。
カップルをカウントしながら、先輩とのやり取りを思い出します。
「先輩が紹介してくれた時に『あのバイトはカウントするたびに生命力が吸い取られるで』って言ってたので『どんなスイッチなんっすかw』ってツッコミ入れたら、『生命力吸収スイッチや』って言ったので厨二感が凄すぎて2人で爆笑してました」
知り合いにも声を掛けられ、「ものすごく汚い言葉」を心の中で吐きます。
「実際にやってみて思ったのが、イベントにくるリア充(カップル)が思ってるよりも遥かに多く、もう正直、少子化なんとかなるんじゃないかって思えるくらいの数がいて。逆にぼっちの自分が浮き彫りになるような虚無感が襲ってきました」
「あと何人か僕を見て笑ってた人は未だに許しません」
中盤、イベントで働く人たちの姿に気づき、にしもとさんの心境が変わります。
「本当のリア充は人生を懸命に生きている彼らなんだ」
いま、にしもとさんはリア充とはどういう人たちのことだと感じているのでしょうか。
「これに関しては色々考えました」
「懸命に人生を生きている人達が本当に充実している人達なのではないか、そもそも充実するというのは自分の心が決めるものであって、周りから見たら充実してる人達が『全然人生充実してない』というのならそれはリア充じゃないと思うし、逆に充実してないように見える人達が『すごく人生充実してる』というのならそれはリア充なんじゃないかと」
「色々考えましたが、結論を言うと『イチャイチャしてるカップル』がリア充だと思います」
翌年、にしもとさんはあるイベントを主催します。
「この経験(クリスマスのアルバイト)を経て変化したことはあまり感じませんが、翌年のクリマスイブに『独り身が集まって闇の帝王を召喚する厨二イベント』を主催したので何か変わったのかもしれません」
「独り身が集まって闇の帝王を召喚する厨二イベント」は「クリスマスの夜に闇の帝王『ディアボロス』を呼ぶ儀式をするっていうその厨二病的闇感がおもしろい!ってだけで企画したイベント」でした。
イベント内容はというと、
という最初はお笑いイベントのようだったそうです。
「その闇の話が皆どんどん自分の中の暗い過去の話になっていき、いつしか皆が自分の苦しみをさらけ出す会になりました」
「厨二病チックに集まるのが面白さだったと思ってたんですが、実際にお互いの苦しみさらけ出し合うとても良いイベントになりました」
にしもとさんには、作品を描く際に大切にしているものがあります。
「僕の作品を読んでくれた人が、笑えたり、今の自分でいいんだって思えたり、頑張ろって思えたり、何か、その人の現実が良い方向へ向かうきっかけになれたらいいなって願いながら描いてます」
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