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2018年11月30日

「私のクラスばかり…」不登校抱え、職員室で孤立 学校介入どこまで


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不登校指導が思うように進まず「毎日が地獄のようだった」と女性は話す(写真はイメージ)

不登校指導が思うように進まず「毎日が地獄のようだった」と女性は話す(写真はイメージ)

出典: PIXTA

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 文部科学省の調査によると、2017年度の不登校の小中学生の数は、14.4万人。前年に比べて1万人近く増え、過去最多になりました。忘れてはいけないのは、その数字の向こう側に担任の先生たちがいるということです。withnewsが教員を対象に実施したアンケートから見えてきたのは、生徒の保護者との関係に悩み、「死んでしまいたい」と思うほど孤立してしまう先生たちの現状でした。


教員を対象にアンケートを実施

 文科省の調べでは、2017年度の不登校の小学生は35,032人(1千人あたり5.4人)、中学生が108,999人(同32.5人)でした。少子化で子どもの数は減っているにもかかわらず、不登校の小中学生の数は過去最多です。2017年に教育機会確保法が施行され、休養の必要性や、フリースクールなどの学校以外の場での学びの重要性が認められたことが背景にあるとみられます。

 14.4万人という不登校の子どもたちには、担任の先生がいます。

 withnewsが、インターネット上で教員を対象に調べたアンケートには44件の回答が集まりました。アンケートでは、最初に教員であるかどうか自己申告してもらい、不登校についての考えなどを聞きました。

withnewsが教員を対象に行ったウェブアンケートより

withnewsが教員を対象に行ったウェブアンケートより

 その中で「不登校の生徒への対応について、困ったことがありますか」という質問には、不登校の子どもの担任経験がある39人全員が「ある」と答えています。

 先生たちが抱えている悩みとは、どんなものなのでしょうか。

「学校が大好き」で教師になった

 「一生懸命やっているつもりでも、親御さんとうまくいかない。何度も『死んでしまいたい』と思いました」

 そんな悲痛な思いを語るのは、高校教師の女性(30代)です。中学で不登校だった生徒を多く受け入れる私立高校に勤めています。

 女性はもともと「学校が大好き」。高校の雰囲気や理念に共感して就職しました。ところが、教師になってからの3年間は、毎日が地獄のようだったと振り返ります。

 自分が担任するクラスの生徒ばかり、学校に登校しなくなったのです。

 「理由を聞いても、『そんなことで?』と思ってしまった。学校に行けない子どもの気持ちが理解できていなかったのが、いけなかったんです」

「毎日が地獄のようだった」と女性はふりかえる(写真はイメージ)

「毎日が地獄のようだった」と女性はふりかえる(写真はイメージ)

出典: PIXTA

「あなたの技量が足りない」と言われ…

 「生徒をサポートしなければ」と思うほど空回りし、女性は劣等感にさいなまれました。

 比べてしまうのは、生徒から人気がある先生。多くは体育会系の教師でした。一方、文化系のバックグラウンドを持つ女性は、自分を出せずにいたといいます。

 職員室は居心地が悪く、他の先生にも助けを求めづらかった女性。不登校の生徒に対しても「自分でなんとかしなくては」という焦りばかりが募りました。

他の教員にも相談しづらかったという女性(写真はイメージ)

他の教員にも相談しづらかったという女性(写真はイメージ)

出典: PIXTA

 不登校の生徒の保護者との関係にも、さらに心をそがれました。

 離れて暮らす生徒の親に代わって、朝が苦手な生徒のために、自転車で下宿先を毎朝訪問。それでも起こせず生徒の母親に電話すると、「あなたの技量が足りない」と叱責されました。

 「もっと先生から言ってやってください」。でも、女性はできる限りのことはしているつもりです。親の思うように事が進まず、しまいには「子どものいないあなたに何がわかるの」と言われ、泣いて過ごす日々を送りました。

 女性は「同じ思いをする子どもが増えないように、償いのために働いてるんです」と、10年近く経ったいまも、自分を責めています。

学校だけで対処「自分の首をしめている」

 この先生のケースだけでなく、教員を対象としたアンケートでは、不登校の生徒の保護者との関係に悩む声が目立ちました。

 「不登校になった原因がわからず、学校・担任に問題ありとしてくる場合がある(20代男性)」「保護者と連絡が取れない(30代女性)」「どこまで家庭に立ち入るべきかわからない(60代男性)」など。担任の教師と生徒の保護者という、極めて閉じられた関係で起こる葛藤には、逃げ場がありません。

 東京大学の本田由紀教授(教育社会学)は、「カウンセリングなどの心得がない教師が、家庭という密室に介入することのリスクは非常に高い」と指摘します。

本田由紀教授

本田由紀教授

 家庭訪問によるコミュニケーションは特に難しく、カウンセリングなどの高い専門性を持つ人であっても「対象者や家族の防衛心や抵抗が強くなりやすい」「対象者にとって守られた空間に踏み込まれてしまうことへの反発」など、多数の困難性が指摘されているといいます。

 「対応力を上げるための研修も役に立つかもしれないが、学校だけで対処しようとして自分の首をしめている。決して、教師を研修すればうまくいく関係性ではないのです」

 不登校をめぐっては家庭と学校との間に利害や考えが対立しがちであるため、第三者を介在させる必要がある、と本田教授は話します。

 「最近では不登校の児童・生徒を『学校復帰させるべき』という流れも見直されてきました。外部の手を借りて学校で抱え込まない、という方針を文部科学省や教育委員会が明らかにしていくべきです」

「学校が対応できなければ、保護者ががんばるしか…」

 文科省はスクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーなどの、専門スタッフを学校に配置し連携する体制を目指しています。しかし、現場の教員の負担を軽減できるほど、拡充されるには時間がかかりそうです。

 では、学校がいまできることとはどんなことなのでしょうか。

 多くの学校では、不登校など特別な配慮が必要な児童・生徒に対応する教師や担当者の会議が設置されています。スクールカウンセラーが学校にいる限られた時間を活用しながら、不登校に組織として対応している先生たちがいます。

 中学校で働く、教師の女性(30代)は「学校で対応できなければ、現状、保護者ががんばるしかない。そうならないためにも、学校でできることを考えたい」と話します。

生徒をサポートできる実感を持つ教師も(写真はイメージ)

生徒をサポートできる実感を持つ教師も(写真はイメージ)

出典: PIXTA

 女性は前任の学校で、学年の教育相談担当として不登校やその傾向のある生徒の対応にあたっていました。週1回行われる会議は、特別なカウンセリングの研修を受けた主任を中心に、学年の担当や校長、教頭、スクールカウンセラーや相談員など、10人前後で構成されていました。

 スクールカウンセラーが来校するのは月に2回でしたが、女性は「高い専門性を持つスクールカウンセラーの意見をもとに、対応を考える流れができていた」と振り返ります。

 例えば、ほとんど登校せず学校と距離を置いているが、学校行事には参加する生徒について。別の教師が「楽しいときだけ来るなんて」と発言すると、スクールカウンセラーは「行事には参加したい、という生徒の気持ちを認めた方がいい」とアドバイスします。「では、行事のときは誘ってみようか」と、その生徒に関しては行事が学校との接点になりうるという意識に変わりました。

「スクールカウンセラーの意見をもとに、対応を考える流れができていた」と女性は話す(写真はイメージ)

「スクールカウンセラーの意見をもとに、対応を考える流れができていた」と女性は話す(写真はイメージ)

出典: PIXTA

 管理職が議論に入っていることで、「個人のペースで学び、登校にこだわらない」ということを組織として共有できたことも大きいと話します。不登校の生徒を否定的にとらえる教師もいなかったそうです。

 「組織で対応を考える枠組みがあれば、たとえ管理職の異動があっても体制はなくなりません。情報共有が習慣づけられるので、担任の悩みを発散するきっかけにもなります」

 女性は、前任の学校で不登校の生徒が、自分で進路を決めることができたとき、言葉にならない喜びがあったといいます。

 アンケートからも「校長が担任の力になり、生徒にもうまく関わってくれて、生徒も安心していった。担任以外でパイプを作ることが重要(40代女性)」「管理職や学年主任などがサポートしてくれ、みんなで生徒のことを考えているというチーム力は、担任として安心できた(40代女性)」など、担任だけで抱え込まない体制の重要性が見えました。

学校によって変わる対応

 ところが、女性が異動した先の学校では、違う価値観が広がっていました。

 まず、「我が校の課題は不登校の多さだ」と数字のみを問題視する校長に疑問を持ちました。前任校と同様の会議も、教育相談の経験が浅い教師が主任としてとりまとめていたことにも不安を抱いたといいます。担任をやらないかわりに引き受けたという主任のモチベーションの低さは、明らかでした。

異動先の学校の組織運営に驚いたという女性(写真はイメージ)

異動先の学校の組織運営に驚いたという女性(写真はイメージ)

出典: PIXTA

 「大事なのは受験を控えた3年生だから、1年生の生徒は後回しにするんだって」

 異動してすぐの頃、女性は会議の進め方を聞き驚いたそうです。生徒数が多く、手が回らない現状は理解できますが、組織運営を改善しようとしないことにも違和感がありました。どうせ議論されないだろうと、資料をほとんど白紙で提出する教師もいたそうです。

異動先の中学では、構造的に担任が抱え込みやすい状態だったという(写真はイメージ)

異動先の中学では、構造的に担任が抱え込みやすい状態だったという(写真はイメージ)

出典: PIXTA

 方針も学年によってばらばらで共有されないまま、自然と対応は担任任せとなり、新任の教師が悩みを抱え込んでしまっているのを感じたといいます。

 教員を対象としたアンケートでも、管理職をはじめ、周囲の支援がなかったという声が集まりました。

 「学年主任や生徒指導担当に相談しても、情報をくれたり一緒に対応を考えたりということがなかった(30代女性)」という意見や、「あなたの熱意が足りない」と根性論に持ち込まるケース(30代女性)もあったようです。「周囲に相談しても意味がない」と感じてしまう雰囲気が伺えます。

 また周囲の教員が思うことがあっても「担任には口出しできない(40代女性)」という声もあり、外からのアプローチが難しいこともわかります。一方、「教員たちがどう対応したらいいかわからず、保健室に押しつけられた」という養護教諭(50代女性)もいました。

 「学校が違うだけで、こんなに違うんだ……」。女性はいまは個人として、他の教師をサポートするしかないと肩を落とします。

先生に、どこまでの役割を求めるべきか

 取材やアンケートから見えてきたのは、学校の中に情報を共有する体制が整っていないために、教員が孤立しているということです。

 また、不登校の子どもや保護者への対応は、カウンセリングなど高度な技術が求められる場面が少なくありません。授業や部活なども担う教員に、どこまでの役割を求めるべきか、考えるべきではないかと感じました。

 不登校そのものを問題視しないことが、教員が相談しやすい雰囲気にもつながります。情報共有を促す仕組みをつくり、教員が「相談してよかった」と思えるような、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門家の活用法が広がればと願います。


「あなたの熱意が足りない」と言われ…アンケートで見えた先生の苦悩
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教員を対象にした不登校指導に関するアンケートより
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