地元
出身地で格差はある? 東京と奈良で比べてみたらやっぱり違った
奈良県出身の私は、就職するまで東京に人が住んでいることがリアルに感じられませんでした。私にとっての東京は、テレビなどの影響を受けすぎて「遠い世界」。内定式で同期が「中野区出身」と聞いた時、「東京って住めるんや」と思ったくらいです。新陳代謝を繰り返し何でも「ある」街・東京で生まれ育った人は、どんな人生を送るのでしょうか。地方都市で育った私の人生と比べてみました。
東京・錦糸町の「下町」で育ったAさんは、中学生から渋谷の中高一貫の女子校に通いました。隣の席の子の出身は恵比寿。仲良くなった子は西麻布。どちらも地名の馴染みがない場所で「人が住めるんだ」と衝撃を受けたといいます。
友人の小学校の同級生に有名人の子どもがいたり、友だちの兄が有名人と付き合っていたり。そこはAさんにとっての「東京」だったといいます。渋谷の学校に徒歩で通学する子や原宿から通って来る子もいました。
予備校にいくとさらに「気品あふれる人たち」と出会います。小学校から私立の人たちは、今でも憧れ。親の職業を聞くと「言えない」と言われることもあり、別世界だったそうです。
Aさんは就職してしばらくすると、一人暮らしを始めました。これまで住んだのは目黒や新大久保や品川。地方出身者の憧れの街、三茶(三軒茶屋)や渋谷は避けました。
「東京人の意地。住んだら負け。たとえそれが職場へのアクセスが悪かろうと、地方出身者の憧れの街にわざわざ住む東京人ではありたくない」
私は就職するまで、生まれ育った奈良市に住んでいました。私の場合は県外で「奈良県出身」と聞くだけで親近感がわきますが、話を聞いたAさんには、そういう同郷意識は芽生えないそうです。
それよりも、中高一貫でもどこの学校か。その学校の校風が、その人のキャラクターを語る上で大きな要素になってくるそうです。
私は高校まで公立で過ごし、大半の生徒が公立高校へ進んでいたので、学校が属性になるというのは新鮮でした。高校というのは単に偏差値を表すものでしかないと思っていたからです。
学生時代に有名人とのつながりはありません。友だちのお姉ちゃんがSPEEDのひろちゃん(島袋寛子さん)と同い年で、自慢されて心底うらやましかった。そこまでしないと芸能人と繫がりをもてなかった(お姉ちゃんが同い年というのが繫がりかどうかは微妙ですが)のです。
Aさんによると、東京では街で芸能人を見かけることは珍しくなく、「たまたま人に誘われて行った渋谷のライブハウスに出演したバンドが後に有名になった」ということもあったそうです。
自然とマニアックなものを掘っていけて「モチベーションがなくても、やりたいことがあればできる環境だった」。
今ではインターネットで調べられるようになりましたが、それが発達していなかった時代、テレビの放送局も限られているような地方にいたら「私の熱量では今いる場所にたどり着けなかった」と語るAさん。だからこそ、圧倒的に情報量が劣る地方出身の人は趣味にしても相当な努力をしたんだと感じるといいます。
一方で、Aさんの話を聞きながら私も、あの環境でなければ今の自分はないと感じています。
周りにあるのは寺ばかりで、シカにはすぐ会えますが、渋谷のような刺激的な偶然の出会いはありません。目的をもって動かなければチャンスは巡ってこないので、興福寺の五重塔を見上げながら自分は何をしたいのか自問自答を続けていました。
あるものの中から選んだものが自分の個性につながるのが都会。地方は必死にその何かを探さなければなりません。そこが大きな差かなと感じました。
発見だったのは、東京というのは一つのイメージでしかなかったのですが、中でもいろんなグラデーションがあることがわかりました。
東京出身同士が会っても、それだけでは一体感は得られず、どの属性かその先を掘り下げるそうです。東京出身の人も感じる「東京」は、まさに私がこれまでイメージしてきた姿。都内出身でも同じ思いを抱く人はいるんですね。「ほかの人に聞いたらまた全然違う意見が聞けますよ」とAさんは言います。東京、奥が深い街です。
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