閉

これフカボリしてほしい

リクエストする

閉

2018年09月13日

なめてた!育休明けの「落とし穴」 大事なのは「三つの『あ』」

  • 10826

 まもなく秋の「保活戦線」が始まります。子育てや教育を10年取材してきた私は、一昨年9月に出産し、昨年4月に職場復帰しました。知識をフル活用し、妊娠中から保育園を見学し、実家の支援も取り付け、育児休業から復帰する時は夫が有給休暇を1カ月取ることにし、カンペキに準備していたはずでした。しかし実際に育休が明けてみると、いたるところに「落とし穴」。募るイライラに、自己嫌悪。どうすればよかったの? ドタバタ復職を、育休後のプロに斬ってもらいました。(朝日新聞文化くらし報道部記者、見市紀世子)


まるで仕事、エクセルで保育所リスト

 妊娠7カ月のとき、我が家が「区内屈指の保活激戦地」にあることが分かりました。

 最も希望者が集中する1歳児クラスはもちろん、生後半年で0歳児クラスに預けたとしても、認可保育所には入れそうにない。本当は育児休業を1年間取りたかったのですが、区役所でそう聞いた翌日から、徒歩30分圏内の認証保育所に片端から電話し、見学を申し込みました。エクセルで一覧表を作り、もはや仕事の勢い。

 預け先が見つからなければ職場に戻れず、育休が切れて失業する可能性も。同業者の夫も、条件は同じ。

 出産前後に9カ所見学し、1カ所以外はすべて申し込みました。
 認可保育所は全滅でした。予想通りの結果とは言え、「ひっくり返って泣いた(夫談)」私。しかし、幸いにもその後、認証保育所から受け入れの連絡があり、改めて夫と見学して確認し、預ける先を決めました。

保育園を見学した時のメモ。「1歳児は新規の受け入れがない年もある」と聞き、衝撃を受けた

保育園を見学した時のメモ。「1歳児は新規の受け入れがない年もある」と聞き、衝撃を受けた



モヤモヤの原因、「気持ちの壁」とは

 復職後の働き方を考えるのに役に立ったのが、NPO法人ファザーリングジャパンのマザーリングプロジェクトが出した『ママの仕事復帰のために』(労働調査会)という本でした。特に自分の気持ちを書き出してみる欄が面白く、モヤモヤした「気持ちの壁」が見えてきました。

 「0歳児の4月に復職しないと保育園には入れない」という記者の目で見た分析と、「もっと一緒にいたいのに」という気持ちにズレがあるのが分かりました。

 いろんな課題を書き出していくうちに、「子どもと一緒にいる時間を少しでも長くしたいので、短時間勤務(時短)制度を使わせてもらいたい」と整理できました。

復帰に向けてのモヤモヤ。「もっと一緒にいたい」「でも保育園事情が許さない」と自分の本音が見えてきた

復帰に向けてのモヤモヤ。「もっと一緒にいたい」「でも保育園事情が許さない」と自分の本音が見えてきた

総仕上げは上司面談

 保育園の当落が分かり始めた昨年2月、直属の上司と職場復帰に向けた面談をしました。

 その際、育休後コンサルタントの山口理栄さんが考案した「職場復帰面談シート」を渡しました。
 シートには、時短勤務の有無、保育時間、保育園の送り迎えのサポート、家族の協力状況、通勤時間、復職への意気込み、といった項目を書き込んでおきました。今後どんな働き方がしたいのか整理できました。面談シートがなかったら、形式的な話で終わってしまったかもしれません。

 上司からは「復帰を待ってるよ!」と声を掛けてもらい、「休ませてもらった分、頑張るぞ」という気持ちになれました。

 復職時には夫が有給休暇を1カ月取ることにしました。子育てに備えて実家から徒歩5分の場所に住み、母に支援もお願いしました。実家にも事情があるため、頼りきりにはできず、念のため、地域の有償ボランティアに子育てを手伝ってもらえる「ファミリー・サポート・センター」の研修を妊娠中に受け、会員登録しました。

 できる準備はすべてやり終え、いざ復帰へ。しかし、育休後は「落とし穴」の連続だったのです。

復帰直後には、子どもが保育園でまさかの「ハンスト」をして焦ったことも(写真はイメージ=PIXTA)

復帰直後には、子どもが保育園でまさかの「ハンスト」をして焦ったことも(写真はイメージ=PIXTA)

取材先の玄関で、保育園から電話

 昨年4月に職場復帰しました。親子ともに慣れてきたと思った矢先の8月、取材先の玄関に着いた瞬間に携帯電話が鳴りました。

 「熱が39度あるので、迎えに来てください」

 保育園からの呼び出し電話です。その取材先には、前月に取材をお願いした際も、子どもの突然の高熱で、再度、取材を設定してもらったばかり。同じ相手に2度目のドタキャンなんて……頭が白くなりました。

 出勤途中だった夫が子どもを保育園に迎えに行き、実家の母にバトンタッチしてしばらく預かってもらい、私が取材を終えて急いで自宅に戻る「綱渡り」で乗り切りました。

取材先で呼び出し電話を受けた日の育児日記。発疹が出始め、手足口病と診断された

取材先で呼び出し電話を受けた日の育児日記。発疹が出始め、手足口病と診断された

「楽しい」保育園の送り迎えがイライラに

 子どもの保育園への送迎は、基本的に朝は夫、夕方は私が行くことにして、都合が付かない時は実家の母に相談することにしていました。
 でも朝は、夜が遅い夫と家族3人で一緒に過ごせる貴重な時間。楽しくもあり、私も一緒に保育園への送りに行っていました。

 ところが、今年5月にフルタイム勤務に戻したとたんに、私が朝の送りを負担に感じ始め、イライラして夫に当たる始末。

 自己嫌悪に陥りました。

いつまで続く……短時間勤務

 「時短で復帰するけど、半年後に子どもが1歳になったら残業なしのフルタイムにする」という計画で、家族や上司にもそう伝えていました。

 しかし復帰後の生活は、思い描いたようにはなりませんでした。待っていたのは、終わりの見えない子どもの激しい夜泣き。夜早く寝ても、2~3時間おきに泣きます。風邪を引くと、1~2時間おきに起こされます。

 医師や助産師、保育士、どこに相談しても解決しませんでした。私も、細切れ睡眠のためなかなか体力が戻らず、ずるずると時短を続けることに。

 ニュースの取材現場にいるのに、急な仕事に対応しづらく、職場に貢献できない自分がふがいなく感じ、同僚たちへの罪悪感も募りました。

 結局、復帰後1年間は時短を続け、フルタイム勤務に戻せたのは、想定よりも半年遅い、夜泣きが治まった今年5月でした。

1歳になる頃には、フルタイム勤務に戻そうと思っていたものの……

1歳になる頃には、フルタイム勤務に戻そうと思っていたものの……

 どうしたらよかったの? 後進に役立ててもらうべく、育休後コンサルタントの山口理栄さんに助言をもらいました。

育休後コンサルタントの山口理栄さん=諫山卓弥撮影

育休後コンサルタントの山口理栄さん=諫山卓弥撮影


あせらない、あわてない、そして

 

記者

思い描いたような育休明けができませんでした……

 

山口さん

育休後は「三つの『あ』」ですよ!

 

記者

……と、言いますと?

 

山口さん

出産前と同じように働けなくても「あせらない」、予期せぬことが起きても「あわてない」、将来の夢を「あきらめない」こと。育休後からのキャリアアップは、あなた次第ですよ。

 

記者

でも正直、復職直後は仕事にならず……。保育園からの呼び出しばかりで。

 

山口さん

本当によくあるんです。私が復帰したときも、直後に子どもが肺炎で1週間入院しました。

 

記者

大事な仕事が入っている日は、保育園からの電話が鳴らないのを祈る気持ちです。

 

山口さん

保育園からの「第一連絡先」を夫の携帯にしてみたらどう?

 

記者

夫が迎えに行かれなくても、ですか?

 

山口さん

そう。夫が迎えに行かれなくても、妻に連絡して翌日休む準備ができます。夫が直接電話を受けると、職場に状況を伝えやすくなりますし、妻は「呼び出し対応は自分」という制約が緩和されて楽になります。

パパたちの意識も変わってきている

 

記者

フルタイム勤務に戻した直後、保育園の送り迎えを両方やるのが苦しくなってしまいました。

 

山口さん

自分でやらなきゃ、と抱え込んでしまったのね。そういう人は多いです。朝も夕も拘束されるのは大変。役割分担した方が余裕はできますよ。ほら、こんなふうに。

山口さんが見せてくれた保育園送り迎えパターンの図。朝夕が送迎で拘束された場合と、どちらかだけを担当した場合では、仕事に充てられる時間が大きく変わる

山口さんが見せてくれた保育園送り迎えパターンの図。朝夕が送迎で拘束された場合と、どちらかだけを担当した場合では、仕事に充てられる時間が大きく変わる

 

記者

夫は長時間労働なので、遠慮もしていました。

 

山口さん

パパたちの意識は変わってきているから、まずは頼んでみましょう。

 

記者

今は夫ともう一度相談して、朝は夫が送り、夕方は私がお迎え。行かれない時は実家の母に相談しています。朝の30分、早く出社できるし、家事もできる。気持ちがすごく楽になりました。

 

山口さん

よかった! 子どもを保育園に送る男性を見かけても驚かなくなりましたよね。セミナーでは「週1回くらいはパパがお迎えを!」と呼びかけていますよ。

「申し訳ない」と悩まない

 

記者

育休明けに、時短勤務が長引いたのが一番つらかったです。

 

山口さん

焦らないで。「人生100年時代」と言われるくらい長いですから。どこからでもアクセルは踏めますよ。

 

記者

職場の同僚たちに申し訳なくて。

 

山口さん

「申し訳ない」と思い悩まないこと。会社や職場に「貸し借り」の感覚を持って。

 

記者

貸し借りですか?

 

山口さん

そう。5年先、10年先に「借り」を返すのでもOK! それに、毎日は無理でも、繁忙期は少し残るとか、職場や家族と相談しながら工夫してみましょう。

【イラスト解説】育休明けなめてた……面談、分担、こうすれば
前へ
次へ
1/6
前へ
次へ


コメント

あわせて読みたい

髪の毛を失ったアイドル 「女の子やめなきゃ…」葛藤越え公表
髪の毛を失ったアイドル 「女の子やめなきゃ…」葛藤越え公表
あのウィンナーの「中身」だけ販売! シャウエッセン新商品が話題に
あのウィンナーの「中身」だけ販売! シャウエッセン新商品が話題に
障害者の兄、隠し続けた葛藤 一緒に歩いた披露宴で出した答え
障害者の兄、隠し続けた葛藤 一緒に歩いた披露宴で出した答え
この3歳児は天才か! カレンダーのめくり方が画期的 母親に聞いた
この3歳児は天才か! カレンダーのめくり方が画期的 母親に聞いた
万博開催で暮らしはどうなる?関西1位のマンション企業に聞いてみた
万博開催で暮らしはどうなる?関西1位のマンション企業に聞いてみた
PR
「食パン袋とめるアレ」、実は埼玉の名産品...
「食パン袋とめるアレ」、実は埼玉の名産品...
なんとしても奈良に泊まって! ストレート...
なんとしても奈良に泊まって! ストレート...
「数学で社会課題を解決する」 不思議な錯覚の世界
「数学で社会課題を解決する」 不思議な錯覚の世界
PR
学年トップ5入りは間違いなし!と思ったのに…卒業式で知った現実
学年トップ5入りは間違いなし!と思ったのに…卒業式で知った現実
この発想はなかった!野球少年が絶賛する練習器具 町工場の力が結集
この発想はなかった!野球少年が絶賛する練習器具 町工場の力が結集
出入り口がない駅? 本日開業、岩国「清流...
出入り口がない駅? 本日開業、岩国「清流...
外国人観光客が撮った写真を調査したら…ある飲み物の「謎さ」を認識
外国人観光客が撮った写真を調査したら…ある飲み物の「謎さ」を認識

人気

もっと見る