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「SCHOOL OF LOCK!」遠山さん、しんどい君へ厳選3曲
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「起立!礼!叫べー!!」でおなじみ、「SCHOOL OF LOCK!」(TOKYO FM)の、とーやま校長(グランジ遠山大輔さん)は、人付き合いが苦手だった高校時代、音楽が居場所になっていたそうです。そんな遠山さんが、学生時代、救われた曲とは? そして、学校に行きたくないな、なんかしんどいな…そんなときに聴いてもらいたい3曲を厳選していただきました。
――遠山さんにとって音楽とは
僕は人付き合いがそんなにうまい方ではなくて。高校のときも、「なんとなく話したいけど話しに行くのもつかれるし…」っていうときがあった。
どこのグループにも属していなくて、いろんなグループに顔を出すってやつだったんですよ。そういうのって、深く付き合えていないってことだよな、っていまもたまに思うんですけど。
そんなとき、音楽とお笑いの存在が大きかった。そこだったんですよ、僕の居場所は。
――居場所だったんですね
60分のカセットテープに、登下校用の、いまでいうプレーリストを夜な夜なつくってて、今日はこれ、明日はこれ、というように気分に合わせて持って行って携帯音楽プレーヤーで聴いていた。それが心地がよかった。
――それを聞いている間は人付き合いから離れて楽になれる?
そうっすね。
音楽でつながった友達もいます。ある日、それまで2人でしゃべることがなかった子が、携帯音楽プレーヤーを持っていたので、「何聴いてんの」となんとなく話しかけたら、まったく同じ曲を聴いてたんですよね。
「えっ」てなった。そういうのも、いま思えば居場所をつくってくれたのかなと思う。
その友達がつくってくれた居場所でもあるし、そのアーティストがつくってくれたものでもあるし。
ミッシェル・ガン・エレファントがめっちゃ好きです。高校3年の秋に3枚目のアルバム「チキン・ゾンビーズ」が出ました。
僕はそれをフラゲで手に入れていて、その音楽の友達と「うちでちょっと聴こうよ」と一緒に聴きました。
でも、2曲目のイントロで、その友達が「ちょっとまって、これ止めて。これ自分で買うわ。もったいなすぎる」と。
21年経ってもいまだにその光景を覚えてるんですよ。好きだから聴きたいのに、それを「止めて」ってすごい行為じゃないですか。自分でちゃんと買って聴きたいからって。
それくら熱量があつまったアルバムを好きな自分も誇らしいと思えるし。
――音楽は自分を認めるものでもある
そうですね。
その友達はいまでもツイッターフォローしたりしていて、投稿をみると、いまだにおしゃれな音楽を聴いたりしていることがわかって、「あーこんな曲聴いてるんだ」とか思います。
――しんどい10代に聴いてほしい曲3曲厳選してもらいたのですが
奥田民生さんは、中2からずっと大好き。
奥田さんはこの曲を作ったときまだ30歳なんですけど、「おれなんかもう年だから、あとは若い世代の君たちの活躍に期待しているよ」っていう曲だと解釈しています。
曲のはじまりが「手を抜け気を抜くな」。
最初は俺、「これどういう意味なんだろう」って思ったんだけど、年を重ねれば重ねるほど、すごい言葉だなと思ってきて。
「手を抜くな」ってみんな言うじゃないですか。でもそうじゃなくて、「手を抜いてもいいんだよ」と。まあ民生さんの生き方でもあると思うんですけど。
常に気を張りすぎてたら思ったもの出せないし。根本さえちゃんとしっかりしていれば、他のところは別に楽しく緩くやって良いし、ってことなのかなと思った。
民生さんにそう聞いても多分「そんな深い意味はないよ」って、かっこよくさらっと言うと思うんですけど。
――めちゃ好きなんですね
めっちゃ好きっす。最高なんですよ。ほんっと聴いてください。素晴らしいです。人柄も。発売日は1995年の5月21日です。
――発売日も覚えてるんですね。やばい
ははははは!そのへんのやつ僕全部数字覚えちゃってるんで。
思春期のとき、自分の好きな人のCDのリリースの日を。待ちわびてたっていうのもあるんですけど。
――他にもありますか
ちょっとiPodみてもいいですか。いや、あるんすよたくさん。
えーどうしようでも、民生さんと、えーどうしよう。ちょっと待っててください。
えーどうしようなんだろうな。
あ、じゃあこれで。
「涙が落ちて海に注いで何時しか空まで戻るよな」という歌詞が、すごく好きなんですよ。
ごっちさん(作詞作曲を担当している後藤正文さん)もシニカルでクレバーな方ですが、こんなロマンチックな歌を歌うんだなと思って…そういうところも好きなんですけど。
歌詞は、まさにその通りです。僕が言うと恥ずかしいんですけど、「悲しい」とか「悔しい」という感情の涙が落ちて、海にわたって、それがいつしか蒸発して虹になると。
明日なのか何年後になるのかわからないけど、悔しい涙や悲しい涙は、その先にちゃんと、自分や誰かを素敵な気持ちをさせるものに「させるんだよ」と言い切っているのではなく、そうなるように祈っているという歌だと思っています。
「素敵な気持ちにさせる」と、断言したらそんな適当なことってないですから。
これ最高です。全部最高です。
2001年発売のアルバムに入っていて、そのときによく聴いていた。
「おれはまだ死んでないぜ」って歌っているんですけど、(それに続く歌詞では)頭の中でハエがぶんぶん「お前はだせえよ終わってるよ」っていってる。だけど、サビでそれを「うるせえ」と蹴散らす歌だと解釈しています。
ずっと好きで聴いてたんですけど、後輩で怪獣(元・少年少女)の坂口(真弓)って女芸人も真心ブラザーズが好きで。
坂口は10代の時ひきこもりで、学校行かずにマンガばっかり描いていた。で、あるとき、「これまずい」「この人生まずい」ってなったときに、坂口もお笑いが好きだから、吉本(吉本興業)の養成所に入る決心をする。
でも、いざ入学式になって電車乗っていこうとするんだけど、外に出るのも久しぶりだし人と話すのもめちゃめちゃ久しぶりで「行けるの?わたし」ってなったんですって。
でも電車は進んでいるし…でも勇気はないし…ってときに、携帯音楽プレーヤーにこの曲が入ってて。歌詞にあるように、「うるせえ」って自分を奮い立たせて向かったんですって。
その話をきいて、「うわ、すごい話だ」と思って、次の日だったと思いますが「SCHOOL OF LOCK!」の放送で、その曲と話を紹介した。
それも結局、坂口は真心ブラザーズに助けられたんですよね。
その場は見てないけど、電車で震えている坂口も見えた。
――前を向ける曲が多いですね
そうですね。
――前って向かないといけないんでしょうか
全然向かなくっていいすよ。でも、人生で何回かは、全勢力振り絞って向かないといけない瞬間があります。人によって回数は違うけど。
そのここぞというときは、自分一人じゃ無理なときもあると思うんで。
何かしらの力を借りる内の一つに音楽は、大きいと思います。
◇ ◇ ◇
とおやま・だいすけ 1979年生まれ。TOKYO FMのラジオ番組「SCHOOL OF LOCK!」(スクール・オブ・ロック!)のパーソナリティー。「とーやま校長」の愛称で中高生リスナーから支持されている。お笑いトリオ「グランジ」の一員。39歳。
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