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2018年08月30日

いじめられたとき、僕は音楽に救われた 伊東歌詞太郎さんが歌う意味

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中高生に人気の伊東歌詞太郎さん。狐のお面がトレードマーク=神戸郁人撮影

中高生に人気の伊東歌詞太郎さん。狐のお面がトレードマーク=神戸郁人撮影

 伸びやかで力強い歌声やメッセージ性のある歌詞が中高生の共感を集め、ツイッターのフォロワーが73万を超えるシンガー・ソングライター伊東歌詞太郎さんは、小学生の時にいじめを受けていました。「休み時間は音楽準備室に隠れていた。音楽が救いだった」と振り返る歌詞太郎さん。つらい経験があったからこそ、今は誰かの人生がプラスになるよう、歌い続けています。

全部読めなくてもいいです、これだけ覚えておいて

【伊東歌詞太郎さんのメッセージ】
音楽は気分を変える特効薬
・休み時間は自分の居場所に隠れた
・いじめられた経験、プラスにできる

中高生に語ったいじめられた過去

 歌詞太郎さんは、ニコニコ動画の人気コンテンツ「歌ってみた」で人気に火がつき、路上ライブを重ね、4年前にメジャーデビューを果たしました。ラジオのパーソナリティを務めたり、初の小説を5月に出版したりと、活動の幅も広がり、「めっちゃイケボ(イケメンボイス)」「いつも勇気づけられています」と中高生から熱い支持を集めています。

 記者が初めて会ったのは昨年の12月。中高生向け講演会の取材でした。その講演会で歌詞太郎さんは「小学生の時、いじめを受けていた」と来場者に語りました。

「今でもいじめのニュースは報道されるけど、それと変わらない、ひどいいじめだった。そして、いじめている側は何にも覚えていないことが多い。僕の場合はそうだった」

 いじめられた過去について、「生きている上で知る必要がない、つらいこと。本当にひどかった」と振り返る歌詞太郎さん。それでも、「しっかりと向き合えるようになって、その経験が自分にとってプラスになった」と語りました。「人の痛みを知ることができたから。僕は人の悪口は言えない。たとえ冗談のつもりでも、言ってはいけないと思うんですよ」

 笑いに包まれた講演会でしたが、この時は350人の中高生や保護者たちが、真剣に耳を傾けていました。あの時に伝えきれなかったメッセージを伝えたいと、改めて話を聞きました。

中高生らを前に、初めて小学生からの過去を語った歌詞太郎さん

中高生らを前に、初めて小学生からの過去を語った歌詞太郎さん

助けてくれる人、いなかった

ーー歌詞太郎さんにとって、学校が一番つらかったのは、いつですか

 都内の公立小学校に通っていたんですけど、6年生の時のいじめが一番ひどくて、つらかったですね。

 常に無視をされ、上履きに画びょうを入れられたり、机がなくなっていたり。ニュースになるような嫌がらせは、だいたい受けました。

 いじめグループとは、塾で受ける模試が一緒だったんです。点数が良くて僕の名前が出ることがあると、さらに攻撃をされました。

ーー助けてくれる人はいなかったのですか

 いませんでした。いじめの中心は5~6人でしたが、その人たちが強いから、クラスの誰も逆らえない。全員が無視に加わっていました。

 先生には相談しませんでした。言ったところで解決できないと思ったから。親にも心配させたくなかったから、言いませんでした。

小学生の時にいじめにあっていた歌詞太郎さん

小学生の時にいじめにあっていた歌詞太郎さん

音楽準備室が安息の場所

ーーつらい毎日の中で、何が歌詞太郎さんの支えになっていたのですか

 間違いなく、自分の場合は音楽でした。休み時間、音楽準備室に隠れていたんです。

 学校に居づらい人は分かると思うんですけど、休み時間が一番つらかった。無視されるか、ひどいことをされるか、だったので。

 だから、5分休みは仕方がないけど、2時間目と3時間目の間にあった20分間の休みや給食を食べた後の昼休みは、クラスにいたくなくて。自分の居場所を探しました。

 でも、小学校ってそんなに広くない。屋上は施錠されているし、安全地帯になる場所って少ないんですよ。どこかないかなと探していたら「あっ、音楽準備室がいいな」って思ったんです。

 音楽室だと隠れる場所がないからダメ。準備室がいいんです。楽器がたくさんあって、ピアノの下によく隠れていました。誰も来ないし、先生もその時間はいない。僕にとって、安息の場所でした。

楽器がたくさんある音楽準備室が安息の場所だった(写真はイメージです)

楽器がたくさんある音楽準備室が安息の場所だった(写真はイメージです)

出典:https://pixta.jp/

 準備室には、合唱で歌う曲の楽譜がたくさんありました。グリーングリーンや赤いやねの家、小さな木の実……。今も楽譜は読めないんですけど、「おたまじゃくし(音符)がここにあったら高い音、ここなら低い音」というのは何となく分かるから、知らない曲でも口ずさんでいました。

 ただただ、歌うのが楽しくて、つらいことを忘れられた。卒業するまで、休み時間は音楽準備室でしのいでいましたね。

 今思うと、学校を休めたらよかったんですけど、親に心配をかけたくなかったから、その選択肢はなかった。音楽があって、本当によかったです。

音楽準備室の思い出を語る歌詞太郎さん

音楽準備室の思い出を語る歌詞太郎さん

中学受験も支えに

――他にも支えはありましたか

 中学受験をしたのですが、それも支えになりましたね。「別の中学校になったら、いじめが全部終わる」と出口を作ることができた。もちろん、「落ちたら、中学校も同じになる」というプレッシャーもありましたが、受験合格が暗闇からの出口になると強く思っていました。

 志望校には無事、合格しました。だから、卒業した時はめちゃくちゃ嬉しかった。いじめグループと離れられたので、中学校からはいじめられることもなくなりました。

――その後、いじめグループとは

 成人式の時に再会しました。向こうは、「俺、お前のことをいじめていたらしいんだけどさ、そんなつもり全然なくて。悪かったな」と言って、まったく気にしていませんでした。

 びっくりしましたよ。「あっ、この程度なんだ」って。自分がきつかったあの過去は、他人からみたらこんなに軽いんだって。怒りはわかず、ひたすら驚きましたね。

過去にもいじめられた経験がプラスになったとツイートしていた歌詞太郎さん

過去にもいじめられた経験がプラスになったとツイートしていた歌詞太郎さん

出典:伊東歌詞太郎さんのツイッター

いじめられた経験、今はプラスに

――いじめられた経験がプラスになっていると話していましたが、どうして、そう思えるのですか

 いじめられるって、ものすごく傷つけられることなんですよ。めちゃめちゃに傷つけられる。

 だから、いじめがどれほど人を傷つけるのかというのは、いじめをしている側、もしくはいじめを受けていない人たちより、僕はたくさん知っているつもりです。

 僕の思考の根幹に、「他人の立場になって考える」というのがあります。いじめの経験はまさにそうです。あれだけつらい思いをしたから、同じことを人には絶対にできない。人が何をされたら傷つくのか。それが分かってから、僕は人に優しくできるようになりました。


『弱くなんてない君は とても強い人なんだ
今日まで生きてきたでしょう ひとりきりで
涙を流すたび 優しくなれただろう
もう君はひとりじゃない 僕が歌うよ』

出典: 作詞・作曲:伊東歌詞太郎「酸素の海」から。いじめられた経験を基に作られた

誰かの人生を1ミリでもプラスにする音楽を

――ミュージシャンの活動にも、いじめられた経験が影響を与えていますか

 僕にとって音楽活動をする意味は色々あるんですけど、その一つが誰かの人生をプラスにすること。1ミリでも、10メートルでも、とにかくプラス方向にする。そういう音楽が作っていくのが、僕が生きる一つの意味だと思うんです。

 ライブに来てくれた中学生の女の子が「歌詞太郎さんのライブをきっかけに外に出られた」と言ってくれたことがありました。それまで、引きこもっていた子が、僕の曲をきっかけに部屋を出られるようになった。それを聞いた時は、すごくうれしかったな。

 いじめられた時、僕は音楽を聴いたり歌ったりして、落ち込んだ気分を変えることが何度もできた。音楽って、特効薬だと思うんですよ。そういう音楽を作れたらミュージシャンとしては本望です。


あなたの居場所が見つかりますように

――悩みを抱える子どもたちに伝えたいことはありますか

 あなたがなぜ、そんなにつらい思いをしているか。それは色んな原因があると思います。僕の場合はいじめだったけど、他の原因で、しんどい思いをしている人もいると思います。

 そうした人たちに、甘い言葉は言えないです。だって、つらいもん。

 「今はつらいけど、この先いいことあるさ」とは絶対に言いたくない。そんなこと言われたら、「お前このつらさ分かんの?」って当時の僕だったら思いますよ。

 小学生の時、僕のつらさを分かってくれる人はいなかった。でも、僕には音楽があった。音楽が僕のことを分かってくれたと勝手に思っていました。

 ゲームでも読書でも、あなたにとって居心地がよければ何でも構わない。見つけてみようなんて無責任なことは言えないけど、あなたの居場所が見つかるよう、僕は祈っています。

     ◇

 いとう・かしたろう 狐のお面がトレードマーク。抜群の歌唱力を武器に、動画投稿の総再生数は8千万回を超え、アルバムは3作連続でオリコンランキングTOP10入りした。声帯結節の手術から7月に復帰し、原点となる全国路上ツアーを実施中。山陰放送をキー局に全国11局で放送中のラジオ番組「僕だけのロックスター☆ラジオ」では、パーソナリティーを務めている。5月には初の小説『家庭教室』(KADOKAWA)を出版した。

最後に「あなたの居場所が見つかるよう、祈っている」と語った歌詞太郎さん

最後に「あなたの居場所が見つかるよう、祈っている」と語った歌詞太郎さん

この記事は9月1日発行予定の朝日新聞夕刊(一部地域2日朝刊)ココハツ面と連動して配信しました。

 

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「毎日背中を押してくれています」 中高生のカリスマ・伊東歌詞太郎
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