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2018年08月28日

子どもが心を閉ざす「言葉」とは? 「6割が不登校経験」高校の教え

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学生ボランティアと生徒会による、学校近くの海辺の掃除の様子。北海道余市町は海も山もある、自然豊かな環境です=北星学園余市高校提供

学生ボランティアと生徒会による、学校近くの海辺の掃除の様子。北海道余市町は海も山もある、自然豊かな環境です=北星学園余市高校提供

 学校に通い続けるのがしんどいなあと感じている人もいるかもしれません。いまいるところと「別の道」を選んだ人が多く通う高校が北海道にあります。不登校の子、やんちゃしていた子、発達障害と診断された子、特待生だった子。そんな子どもたちが心を閉ざしてしまう言葉があるそうです。子どもたちと日々向き合う先生に「別の道」を選ぶ大切さについて聞きました。(朝日新聞社会部記者・山根久美子)

大人に心閉ざした子どもたち

北星学園余市高校
 1965年創立。不登校や高校中退生など様々な事情を持つ子を受け入れてきた。創立当時から勉強に伸び悩む子どもを、88年からは全国から高校中退者の転入、編入を受け入れている。その教育方針が次第に注目され、テレビや新聞でも取り上げられている。

「教員免許を取った後にそんなドキュメンタリーをテレビで見て、『こういう学校、面白そうだな』と思って就職したのが私です」

 そう話すのは、同校で教員として働いて18年目、一昨年まで教頭を務め、今は学校の広報全般を担当する英語教諭の田中亨さん(41)。学生の約6割が不登校を、4人に1人は非行を経験してきたといい、幼い頃から大人に心を閉ざしてきた子も少なくありません。そんな子どもたちとどうやって向き合っているのか。田中さんに話を聞いてみました。

北星学園余市高校の田中亨さん。生徒からは「とおるちゃん」と呼ばれることも

北星学園余市高校の田中亨さん。生徒からは「とおるちゃん」と呼ばれることも

距離感、取りたいように取れる環境

 ――どんな生徒が通っているのでしょう。

 不登校の子、やんちゃしていた子、発達障害と診断された子。勉強やスポーツができて特待生として入学したもののつまずいて転校してくる子、家族との間に葛藤を抱えていてとにかく家から出たい子、非行グループから抜け出すため地元から離れたいという子もいます。いろんな子がいます。

 年齢層も幅広い。いわゆる現役で進学してくる子は7割強。あとは高校1年の年齢よりも上で、20歳前後の子もいます。


 ――入学当初はどのような雰囲気?

 やんちゃっ気のある子は、最初は同じやんちゃ同士で友達になっているケースが多いですね。おとなしい子は、半月くらいは休み時間も席を立たず様子を伺っている子が多いですね。

 でも先輩もみんな同じ思いをしてきたので、下宿先や校内でフォローしてくれます。まずは下宿先でつながりができ、次は学校で、という形で徐々につながりを増やしていますね。

 生徒に多様性があるということは、どこかに合わせなくても生きていけるということです。これまで他人の目を気にしてきた子が、自分の空間や他人との距離感を取りたいように取れる。それが特徴かもしれません。

毎年恒例の名物行事、強歩遠足。全校生徒や教師らが30、50、70キロのどれかのコースを歩く。励ましてもらったり、誰かと一緒に歩いたり。最後は自分の足でゴールまで歩く様子は、「まさに人生と一緒」(田中さん)=北星学園余市高校提供

毎年恒例の名物行事、強歩遠足。全校生徒や教師らが30、50、70キロのどれかのコースを歩く。励ましてもらったり、誰かと一緒に歩いたり。最後は自分の足でゴールまで歩く様子は、「まさに人生と一緒」(田中さん)=北星学園余市高校提供

一人の教師が向き合うのではなく

 ――教師はどうやってコミュニケーションを取っているのでしょう。

 全員、とことん生徒と向き合います。

 例えば深く考え過ぎて言葉が出ない子。「これ好き?」と聞かれて「好きではないけど嫌いってほどでも……」と考え出すと、言葉が出てこない。そういう子とは一緒に考えるプロセスを大事にします。

 迷いながら少しずつ言葉を引き出していくと、「あ、自分はこういうことを考えていたのか」と、その子が自分の考えと向き合っていけるようになる。

 誰に話しても理解してもらえない、と閉ざす子も当然います。日常生活の中で少しずつとっかかりを見つけて話しかけるのですが、そこで大事なのが1人の教師で抱えないこと。

 人間だから合う合わないは絶対ある。クラス、学年、部活、趣味、下宿先。いろんな単位の集団の大人が少しずつその子に話していくんです。誰か1人に自分を開示できると、最初は能面みたいだった子も、その周りの人や最初に開示した人に似た人にも広げていけるようになるんですよ。

子育て、親だけではできないことたくさん

 ――自分の子どもが突然親に心を閉ざした時、親もあの手この手で向き合おうとすると思うのですが、田中さんから見て「これはまずいな」という声かけは?

 子どもと向き合う時はまず、最後までしっかり聞いて共感してあげるのが大事。子どもが話している途中で「わかるけど、それ違うじゃん」とか言っちゃったらもう、台無しですね。

 関係が近い親ほど、そういうことを言ってしまう傾向があるように感じます。うちの学校の面談でも、子どもに質問しているのに親が答えようとして、「お母さんに聞いているんじゃない、この子だから!」っていうの、多いですよ。親心はわかりますが、まずは聞くのが大事です。

 ――まずは聞く。簡単そうで難しいですね。

 結局親もひとりの人間なので、自分の人生ベースでしか物事を見られない。自分がどう育ててもらったか、でしか人生を知らない。
 こんな家庭もある、あんな家庭もある、というサンプルはたくさん知った方が良いですね。もちろん最初は首をかしげるようなことも多いでしょうが、自分だってそう見られているかもしれない。

 外で悪い仲間作ってやんちゃする子って、やんちゃが楽しいって子もいるんですが、家の中の関係が悪くて家にいたくなくて外に飛び出すパターンも多いんです。子育ては親がするものだけど、親だけではできないことがたくさんある。それを認めて、外の力を借りる勇気が必要ですね。

北星学園余市高校での授業の様子=北星学園余市高校提供

北星学園余市高校での授業の様子=北星学園余市高校提供

自分の人生ベースで判断しない

 ――親子関係だけでなく人間関係全般に当てはまりそうです。

 そうなんです。人間は大人も子どもも、それまでの人生で得た、生き方の拠り所となる「杖」を持っていると思うんです。それを突然取られそうになると、どうやって生きていけば良いのかわからない不安に襲われる。

 だからその杖を離すのを怖がって、みんな自分の人生ベースで物事を判断する。大人は子どもの考えを切り捨て、子どもは心を閉ざしてしまう。けど、子どもも親もたくさんのサンプルを知れば、新しい杖はいくらでも作れるんです。
 
 うちの学校に子どもを通わせる保護者にも、ここに来て自分の人生を総ざらいした、という人がいっぱいいます。
 子どもは、親だけでなくできるだけいろんな大人が関わって育つ方がいいと思います。地域のコミュニティー、親戚、子どもに関する施設。親も子どももいろんな人生のサンプルを知っていけば、生きづらいと思うことがあっても新しいよりどころを作れると思います。

生きているだけで幸せ、必ず来る

 田中さんへの取材に先立ち、北星余市の卒業生の女性と彼女の父親に話を聞く機会がありました。
 女性は自分も周囲も大事にして、父親は娘の選択を尊重して見守っている姿が印象的でした。かつては激しくぶつかり合い、どん底まで傷つけ合ったからこその関係です。

 生きるのがしんどい…そんな思いを抱えるみなさんへ。
 つらい時、いつ楽になれるかわからなくて投げ出したくなることもあると思います。
 親や友達とうまくコミュニケーションが取れなくても、勉強や仕事で思うような成果が出せなくても、それでも、ただ生きているだけで幸せだと思える時間は誰にも必ず来ます。それまで、時には北星学園余市高校のような施設の手も借りて、自分を守ってください。

北星学園余市高校の紹介動画

出典:北星学園余市高校ホームページ

 

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