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#7 金正男暗殺を追う

<金正男暗殺を追う>2週間前の遅刻、マカオで漏らした「裏人脈」

2015年、マカオで食事する金正男氏=関係者提供
2015年、マカオで食事する金正男氏=関係者提供

目次

 金正男(キム・ジョンナム)氏は、2017年2月に殺害されるまで、中国南部の「マカオ」を拠点に暮らしていた。豪華なカジノが立ち並び、「東洋のラスベガス」とも呼ばれる観光都市。ここで正男氏は、意外な人物と接触していた。殺害される18日前のことだ。(朝日新聞国際報道部記者・乗京真知)

マカオにはカジノ施設が立ち並ぶ=ロイター
マカオにはカジノ施設が立ち並ぶ=ロイター

珍しい遅刻

 2017年1月25日。パリを訪ねていた正男氏は、マレーシアに立ち寄った後、自宅のあるマカオに戻った。

 翌26日、友人を夕食に誘った。珍しく約束の時間に30分ほど遅れてきた正男氏は、友人に「申し訳ない。北朝鮮では遅刻したら命がない。5分でも許されない」と律義にわびたという。

 正男氏は好物のスシをつまみながら、遅れた理由を説明した。「ついさっきまで、米国のカジノ関係者と会っていた」。世界有数の米カジノ運営会社「ウィン・リゾーツ」系のホテルで接触し、お酒を飲んでいたという。

 友人が「米国でカジノと言えば、もしかしてトランプ大統領のメッセンジャー?」と尋ねると、正男氏は驚いた様子で顔を見合わせ、「どうして分かるの?」とだけ答えたという。

2017年1月26日、「米国のカジノ関係者と会っていた」と語った金正男氏=関係者提供
2017年1月26日、「米国のカジノ関係者と会っていた」と語った金正男氏=関係者提供

朝鮮料理でもてなし

 北朝鮮を追われた正男氏は、北京で過ごした後、マカオに落ち着いた。マカオには家族と住む自宅のほかに、交際女性が暮らすマンションがあった。

 正男氏は高級ホテルのレストランやバーを好んだが、マンションに気の知れた仲間を招くこともあったという。ガラスのテーブルにキムチやナムルが並ぶ食卓。リビングには白い愛犬がおとなしく座っていた。

2015年、金正男氏が暮らしていたマカオのマンションでの食事=関係者提供
2015年、金正男氏が暮らしていたマカオのマンションでの食事=関係者提供

危険の足音

 冒頭の米国人との接触の直後、正男氏が周囲に語ったことが、もう一つある。「2月6日にマレーシアに行くことになった」。渡航目的は告げなかったが、米国人との接触によって、何らかの約束が入った可能性をうかがわせる。

 正男氏はマレーシア行きの航空券を押さえ、空港の送迎車両も手配した。

 ちょうどこの頃、正男氏の行動を見透かしたかのように、ある一団がマレーシア入りした。北朝鮮の工作員グループ。暗殺の準備が大詰めを迎えていたことなど、正男氏には知るよしもなかった。

     ◇
【金正男氏とマカオ】正男氏がマカオの家賃をどうやって払っていたかは謎だが、中国政府が支援していたとの説が有力だ。メディアでは「海の見える高級住宅」が自宅として取り上げられたが、本人は知人に「あそこには住んでいない」と語っている。マカオは北朝鮮の資金洗浄の拠点としても知られ、米政府は2005年、資金洗浄に関与した疑いでマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)に金融制裁を科した。

北朝鮮の資金洗浄に関与した疑いで米政府の制裁を受けたマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の事務所。2007年撮影=ロイター
北朝鮮の資金洗浄に関与した疑いで米政府の制裁を受けたマカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)の事務所。2007年撮影=ロイター

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