IT・科学
甲子園にAI記者、1秒で記事に データ8万件、金足農の結末どう表現
「AI、戦評書くってよ」
第100回全国高校野球選手権大会から、朝日新聞社が新しい取り組みを始めました。
勝敗の分かれ目や経過を評し、原則的に試合終了と同時にデスクへの提出が求められる「戦評」を人工知能のAI記者「おーとりぃ」が1秒で書くのです。
3回戦からニュースサイト「朝日新聞デジタル」で公開しています。
準々決勝の4試合について、実際に記者が書いた戦評と比べてみると……。
4試合の中で、個人的に一番差が出たと思うのは、29年ぶりの秋田勢4強を決めた金足農の攻撃。劇的な幕切れとなった「逆転サヨナラ2ランスクイズ」です。
記者戦評では「奇襲」と表現しています。確かにこれは、めったに見られるプレーではありません。AI記者「おーとりぃ」は、事前に約8万件の戦評を学習しているそうですが、その中にもなかったのではないでしょうか。
ただ、これを機にAIが学習すると、次に同じプレーが起きたときに「逆転サヨナラ2ランスクイズ」と書いてくるかもしれません。
残りの3試合も比べていきます。
【記者執筆】済美が報徳学園の追い上げを振り切った。九回無死一塁、報徳学園・糸井の左越え適時二塁打で1点差に。なお一死三塁となったが、五回途中から救援したエース山口直が後続を断った。打っては芦谷が2打点の活躍。九回の中前適時打が結果的に大きかった。
いかがでしたか。
AI記者「おーとりぃ」は先述したとおり、事前に、過去に書かれた約8万件の戦評とイニングを学習しています。その上で電子化されたスコアブックを読み込み、「こういう展開は、こういう戦評が多い」という傾向を分析し、文を作り出しているそうです。
「あと一本が出なかった」という表現、確かに記者が書く戦評でもよく見かけますね。
当然のことながら、「おーとりぃ」は試合を見ていません。そのため「速球主体」「球が浮いた」「特大の本塁打」のような、見ていないと分からない情報は書けません。ただし電子スコアをもとにしたデータを誤ることは、絶対にありません。
実際に記者の戦評と比べてみると、済美―報徳学園のように、ちょっと似ているものもあれば、大阪桐蔭―浦和学院のように試合の分岐点となる視点が異なるものもあります。
これからAI記者の精度が高まれば高まるほど、現場の記者に求められる仕事の質も、変わってくるかもしれない。「書けたらスポーツ記者として一人前」と言われる戦評。将来的に仕事を奪われないために、これからも野球を見る目を養い、精進あるのみです!
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