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海水魚がなぜ?「ヤリマンボウ」が川で発見!「何とも言えない」理由
「太陽光で死ぬ」「直進でしか泳げず死ぬ」「3億個の卵を産卵しても、生き残るのは2匹」など、マンボウにまつわる数々のデマを暴いてきたメディア「withnews」ですが、今回、新たな情報を入手しました。「マンボウ、近所の川に現れる(そして死ぬ)」。海水魚なのに何やってんのマンボウ! その真相を探りました
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「太陽光で死ぬ」「直進でしか泳げず死ぬ」「3億個の卵を産卵しても、生き残るのは2匹」など、マンボウにまつわる数々のデマを暴いてきたメディア「withnews」ですが、今回、新たな情報を入手しました。「マンボウ、近所の川に現れる(そして死ぬ)」。海水魚なのに何やってんのマンボウ! その真相を探りました
「太陽光で死ぬ」「直進でしか泳げず死ぬ」「3億個の卵を産卵しても、生き残るのは2匹」など、マンボウにまつわる数々のデマを暴いてきたメディア「withnews」ですが、驚くべき情報を入手しました。「マンボウ、近所の川に現れる(そして死ぬ)」。2014年の出来事ですが、今年に入って論文として掲載されました。海水魚なのに何やってんのマンボウ! その真相を探りました。
今回、川で見つかったのは「ヤリマンボウ」。マンボウ科ヤリマンボウ属の魚のことで、一般的に知られている「マンボウ(マンボウ属に属する)」とは属が異なる親戚です。
見た目は「マンボウ」に似ているので混同されることも多いそうですが、通常の魚の「尾びれ」の位置にある「舵びれ」に、やりのような突出部があるのが特徴です。
当時、西海国立公園九十九島水族館・海きららで魚類を担当し、本件の対応にあたったという、粟生(あわう)恵理子さんに話を聞きました。
2014年11月22日、始まりは近隣の住民の方からの電話でした。
「『マンボウのような生き物が川にいる。エイかもしれない』と電話をもらいました。マンボウの目撃例が多い地域ではないので、驚きました。『えっ!川で!?』って」
半信半疑で現場に向かったところ、既に人が集まっていたといいます。連絡されていた場所は、江迎湾から4キロほど遡上した、江迎川の下流。海水は少し混じっていますが、淡水の状態にきわめて近い河川汽水域です。水路が深く、上からのぞき込むと遠目にそれらしきものが見えたそうです。
「白い丸いものがバタバタしていて、最初はエイなのかマンボウなのか判然としませんでした。近付いてやっとマンボウ、舵びれの突出部を見てヤリマンボウだとわかりました」(粟生さん)
粟生さんは、ヤリマンボウを現場で目の当たりにしても「信じられない」と思ったそうです。ヤリマンボウは浅瀬に横たわって衰弱しており、既に瀕死の状態でした。
助けることは困難な状態で、粟生さんは「水族館まで持ち帰ることができれば、貴重な資料として記録に残すことができる」と考えたそうです。集まっていた人たちに手伝ってもらいながら、ブルーシートにくるみ、ヤリマンボウを川から吊り上げ、水族館に運びました。
水族館に到着する頃には、ヤリマンボウは息を引き取っていました。この地域で見つかるのは珍しい魚で、「川で」という境遇も特殊だったため、粟生さんは澤井さんに連絡し、正しい記録の取り方や、標本の作成方法を教えてもらったそうです。
連絡を受けた澤井さんも驚いたといいます。「私はマンボウ類の調査のために、いつも海に行っているのですが、『どうして川に』とビックリしましたね」と笑います。
そもそも、海水魚が淡水に入ってきても大丈夫なのでしょうか。澤井さんによると、魚の種類にもよりますが、短時間であれば真水に入っても生命に影響はないそうです。水族館などでも、海水魚の体表についた寄生虫をとる目的で、展示水槽に入れる前に淡水に入れる「淡水浴」を行う場合もあるといいます。
今回発見されたヤリマンボウは、九十九島水族館・海きららで乾燥標本として保管されていますが、現在展示はされていないそうです。
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