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2018年02月25日

マンボウに「ギネス塗り替える」発見!「おっとっと」への影響は?

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マンボウ属2種の成魚の見分け方

マンボウ属2種の成魚の見分け方

出典: 澤井悦郎さん提供

 「最弱生物」「3億個の卵を産んで2匹しか生き残らない」など、インターネット上での都市伝説の的になっているのがマンボウです。2017年12月、そんなマンボウについて「ギネス世界記録を塗り替える発見がありました!」という連絡が入りました。あの独特のフォルム、実は別の種類と混同されてきたというのです。そもそもマンボウとギネス世界記録ってどんな関係が? 何より「おっとっと」に入っているマンボウに影響は? 「マンボウ博士」に、じっくり話を聞いてきました。


「すごい!……のか?」

 2017年8月、マンボウの一般書「マンボウのひみつ」を出版し、「タモリ倶楽部」や「安住紳一郎の日曜天国」にも出演した「マンボウ博士」こと澤井悦郎さん。「これまでの研究の集大成である論文を発表しました」というお知らせを受け取り、澤井さんに取材を申し込みました。3時間にわたるインタビューで、じっくりマンボウの魅力、分類学の奥深さを語ってもらいました。

マンボウ研究ひとすじの「マンボウ博士」こと、澤井悦郎さん

マンボウ研究ひとすじの「マンボウ博士」こと、澤井悦郎さん

澤井さん、今回発表した論文とはどんな内容なんでしょうか! 
 

 

よくぞ聞いてくれました。
実は、ギネスブックに載っている世界記録を塗り替える発見をしたのです
  

 

それは…
  

 

それは…? 
 

 

世界最重量の硬骨魚類は「マンボウ」ではなく、
ウシマンボウ」だったんです!!!  


んん~~~~~! 
 

 

ん? 
 

 

う~~~ん 
 

 

すごい…んですか? 

 

 

すごいんです 
でもどこのメディアも取り上げてくれない…
 

 

すみません、マンボウって、圧倒的に「マンボウ」って感じなので、「ウシマンボウ」って聞いてもさすがに牛とは思わないけどあんまりイメージつかないというか…
 

  

ウシマンボウってマンボウなんですよね?
 

 

そこからですか

 

 

大変恐縮です、そこからお願いします

 

混同されまくってきたマンボウたち

 いわゆるマンボウと呼ばれる生き物は、「フグ目マンボウ科マンボウ属」というグループに属しています。言わば「進化したフグ」で、お腹周りに骨がなくスカスカなので、ネット上ではしばしば「弱そう」と言われてきました。

【関連リンク】マンボウ 最弱伝説より衝撃「骨格の謎」お腹スカスカ 尾びれもない!

実はこの「フグ目マンボウ科マンボウ属」には3種のマンボウがいるのです
早速それぞれを紹介しましょう

 

 

まず1種目が「マンボウ」
学名は「Mola mola(モラ モラ)」といいます

 

 

「マンボウ」の「マンボウ」。いきなり地主さん出てきた
 

 

マンボウ属を総称しても「マンボウ」と呼ぶのでちょっとややこしいですね
 

 

そして2種目が、2017年7月に新種として発表した「カクレマンボウ」
学名は「Mola tecta(モラ テクタ)」といいます

 


新種として報告された「カクレマンボウ」©Cesar(eは鋭アクセント付き)  Villarroel

新種として報告された「カクレマンボウ」©Cesar(eは鋭アクセント付き)  Villarroel

名前がはぐれメタルを彷彿とさせる…

 

 

確かに(笑)
そして3種目が今回主役の「ウシマンボウ」です
学名は「Mola alexandrini(モラ アレクサンドリーニ)」といいます

 

   

実はウシマンボウの学名は、長い間「Mola sp. A(『マンボウ属のA種』の意味)」という仮称だったんです。
が! 今回発表した論文でようやく学名を決定できたんです!

   

モラ アレクサンドリーニ! モラ アレクサンドリーニ!

 

 

すみません、落ち着いてください(笑)
ぱっと聞いても、全然違いがわからないし、全部こんなイメージです

 

漠然としたマンボウのイメージ

漠然としたマンボウのイメージ

(´・ω・`)しゅん

 

 

あながち「マンボウ型」っていうのは間違ってない……間違ってないんですけど……
 

 

それがあかんのや!!!
 

   

す…すみません!!!


 

正直、マンボウ属3種はパッと見よく似ているので、世界中で混同されまくっています
「マンボウ」と「ウシマンボウ」なんて特に!

 

実際、マンボウ研究者でも「マンボウを識別し得る眼」を持つ者はほとんどいないですから!
 

 

「マンボウを識別し得る眼」……ちょっと中二病っぽい名前出ましたけど


 

野口さんにはわかるだろうか……こちらがマンボウ
 

 

出典: 澤井悦郎さん提供

こっちがウシマンボウ
 

 

出典: 澤井悦郎さん提供

おわかりいただけただろうか……?

 

 

斉藤祥太と斉藤慶太くらいわからん  

 

 

小型の個体は種の特徴がまだ出ていないので、イジワルな問題でしたね
でも、こんな感じで見分けが難しいので、研究者も種を混同して、マンボウ型の魚はだいたい「マンボウ(Mola mola)」と同定されることが多かったのです

 

しかし!成長すると特徴がよく出てきます
 

 

ウシマンボウだと頭部や下あごの下が出っ張るけど、マンボウは舵びれ(尾びれのような部分)が波打つなど、よく見ると結構違いがあるんですよ

 

マンボウ属3種の成魚の見分け方。澤井さんによると、鱗の形も全然違うという。

マンボウ属3種の成魚の見分け方。澤井さんによると、鱗の形も全然違うという。

出典: 澤井悦郎さん提供

分類ってなんで大事なの?

 澤井さんによると、これまでマンボウの分類は世界中で混乱が起きていました。過去に提唱されたマンボウ属の学名は33種。形態のみの分類では、同種が別種と思われていたり、別の種が同一視されていたりしました。

 DNA解析を用いて、2009年にマンボウ属は3種に分けられることが判明しましたが、過去の資料をさかのぼった学名の整理・特定はおこなわれていませんでした。

 澤井さんら研究グループが2017年末に発表した論文では、過去の学名を整理し、仮称のままだったウシマンボウの学名を「Mola alexandrini」に特定。これまでの研究はひとつの節目を迎えました。

そもそも分類ってなんでそんなに重要なんですか?
 

 

あ~それ、よく言われます
分類は何も生物学に限ったことではなくて、「人がこの世に存在する『モノ』を認識する」ために重要なんですよ
モノに「個別の名前」がついていなかったら困りますよね

 

       

分類の重要性を示す最近の例というと、「ヒアリ」じゃないでしょうか
自分の目の前にいるアリが毒を持っているかどうかわからないと非常に困りますよね

 

   

確かに。見分けられないと、普通のアリも疑っちゃうかも…
「ヒアリ警察」っていう、画像からヒアリかどうか判別してくれるTwitterアカウントにも注目が集まりましたね

 

 

ヒアリの標本(オオムラサキセンター提供)

ヒアリの標本(オオムラサキセンター提供)

出典: 朝日新聞

自分の身の危険から回避するためにも、分類の核である「モノを見分ける」という行為はとても大切なのです

 

 

なるほど、なるほど

 

 

生き物を研究する上でも、分類がちゃんとできていないと、いずれ調べ直す必要が出てきます。これは二度手間でもったいないですよね
実は、今まさにマンボウ属もこの状態に陥っているんです

 

 

例えば、2015年に「マンボウ(Mola mola)」は国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストに絶滅危惧種として加えられました
保護を奨励される動物になった訳です

 

でもIUCNのサイトに掲載されている一部の写真は「ウシマンボウ」なんです

 

IUCNが公開しているレッドリスト、澤井さんによると左上の写真が「ウシマンボウ」だそう

IUCNが公開しているレッドリスト、澤井さんによると左上の写真が「ウシマンボウ」だそう

出典:IUCNが公開しているレッドリスト

めっちゃ混同されてる

 

 

ぶっちゃけ、研究者でも見分けられてないんですよね
 

  

現状ではマンボウ属のどの種が減少傾向にあるのかわからないので、もう一度調べ直しですね
 

 

適切な対応をとるためにも、ちゃんと種を特定してあげることが重要なんです
 

 

「ウシマンボウ」は認知度が低いけど…

ギネス世界記録の話に戻すと、マンボウって3m近く大きくなるっていうのは聞いたことありますが、マンボウが世界一重いって本当なんですか?

  

本当ですが、魚類全体を意味するのではなく「硬骨魚類」の中での話です
魚類全体だと、ジンベエザメが世界一重いですね

 

   

「硬骨魚類」とは、主にサメとエイを除いた魚たちのことで、骨格が硬い組織でできています
普段スーパーとかで売られている一般的な魚は「硬骨魚類」ですね

 

それが「マンボウ(Mola mola)」ではなく、「ウシマンボウ(Mola alexandrini)」とわかったのはどうしてですか?

  

ギネスブックにマンボウが載っているので、気になって調べまくったんですよね

 

    

記録の元となった論文を特定でき、幸運にもその個体の写真が載っていたのですが、頭部や下あごの下の隆起、丸い舵びれなどの特徴から、典型的な「ウシマンボウ」だと判明しました!

 

また、調べてわかったのが、1996年8月には、千葉県鴨川でギネス世界記録より更に重い2.3トンのウシマンボウが漁獲された記録もあります
 

いずれにせよ、世界最重量の硬骨魚類は「マンボウ」ではなく、「ウシマンボウ」なんです
 

 

ギネス世界記録公式サイトに掲載されている記録

ギネス世界記録公式サイトに掲載されている記録

出典:ギネス世界記録公式サイト

う~ん、「硬骨魚類で一番」という立ち位置もちょっと地味だし、知名度が低いウシマンボウがちょっとかわいそう

  

ウシマンボウのアピールポイントってないんですか?
 

  

う~ん……(長考)……ウシマンボウはとにかくデカいです。
マンボウもデカいイメージはありますが、それよりももっと大きい


 

 

「とにかくデカい」という「ウシマンボウ」

「とにかくデカい」という「ウシマンボウ」

出典: 波左間海中公園

マンボウは基本的に温帯域を好むのですが、ウシマンボウはマンボウより温かい水温が好きなようですね
ウシマンボウは日本ではほとんど見かけませんが、おそらく熱帯域にはたくさんいると考えています

 

  

あと、大きく成長すると寒さにも強くなると考えられるので、ウシマンボウは北に南にと行動範囲を広げることができると考えています
つまり、世界中どこへでも旅に出ることができるんですね

 

 

大きくてどこへでも行く、寒さにも強い……アームストロング少佐(鋼の錬金術師)みたい……


クイズ!「これ、何マンボウ?」

 取材のおまけで、マンボウを見ればだいたいどの種かわかるという澤井さんに、いろんなマンボウが「何マンボウ」なのか質問してみました。全部で4問、ぜひみなさんも挑戦してみてください。

【第1問】これ、何マンボウ?

出典: 朝日新聞







 

これはウシマンボウですね
頭部の微妙な隆起や丸い舵びれの特徴から判断できます

 

 

さすがですね!(出題者が全然わかっていない)
 

 

【第2問】これ、何マンボウ?






  

 

こっちはマンボウですね
舵びれが微妙に波打とうとしています。成長したら立派な波型が出てくるのではないでしょうか

 

 

では次はいかがでしょうか…!
 

 

【第3問】これ、何マンボウ?

マンボウ育成アプリ「生きろ!マンボウ!」

マンボウ育成アプリ「生きろ!マンボウ!」

出典: 生きろ!マンボウ! ©SELECT BUTTON inc.

個人的にめちゃめちゃやりこんでるんで、マンボウじゃなかったら結構衝撃なんですけど…
 

 









 

安心してください、これもマンボウです
ゲームタイトルの「マンボウ」で間違いないです
最終段階の姿になると、舵びれが波打っているからです

 

良かった…
 

 

【第4問】これ、何マンボウ?

「おっとっと」

「おっとっと」

日本の子どもたちが一番食べているマンボウと言えばこれでしょう

 





 

 
 
 

これはもうマンボウですね、舵びれが明瞭に波打っているので
 

 

「マンボウ」だった!!!

 

 みなさん、「おっとっと」に入っているマンボウは「マンボウ」です。自信を持っておっしゃっていただいて大丈夫です。そう言える背景には、さまざまな研究者の努力がありました。次回は澤井さんとマンボウの分類の歴史を辿ります。

 ちなみに日本の水族館にいるマンボウは、99%「マンボウ」だそうです。

   ◇

 澤井悦郎(さわい・えつろう)
 2015年、広島大学大学院で博士号を取得。マンボウの研究を12年間続けている。2017年8月には、マンボウの一般書「マンボウのひみつ」を出版。JFN系列「山田五郎と中川翔子の『リミックスZ』」(2月27日より全国15局で順次放送)にゲスト出演予定。海とくらしの史料館(鳥取県境港市)で開催される「マンボウ祭~其肉潔白ナリ油多味ヨシ~」では、4月7日、8日にトークショーを行う予定。


【クイズ】これ、何マンボウ?「実在する動物?」マンボウ謎の骨格も
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【第1問】これ、何マンボウ?
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出典:朝日新聞
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