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2018年07月07日

パートナーいない、でも「子ども欲しい」 選んだ道は

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出産できるうちに子どもを産む、という選択肢を広げたい女性たちが相談を寄せているといいます(写真はイメージ=PIXTA)

出産できるうちに子どもを産む、という選択肢を広げたい女性たちが相談を寄せているといいます(写真はイメージ=PIXTA)

 婚活はうまくいかなかったけれど、出産できるうちに子どもを産みたい。結婚する気はないけれど、子どもが欲しい――。様々な理由で結婚せずに出産・子育てをする女性たちがいます。多様な家族の形が広がっている米国と、結婚と出産がセットで考えられやすい日本、それぞれで出産した女性に話を聞きました。(山本奈朱香)

妊娠に踏み切れなかった結婚生活

 米国東部に住む女性(51)は11年前、未婚の状態で出産しました。

 昔は子どもが苦手だったのに、40歳を目前にしたある日突然、子どもが欲しいと感じたそうです。女性は年齢が高くなると妊娠が難しくなるため、タイムリミットが迫っているように感じました。

 子宮から指令を受けたみたいだった――。急な気持ちの変化を、そう振り返ります。

 女性は、日本に住んでいた時に結婚していたことがあります。元夫は優しく、一緒にいると楽しい人でしたが、必死で何かを追い求めることがありませんでした。努力家だった自身の父親と比べてしまい、「父親」としての姿をイメージできなかったそうです。

 母親になる自信もありませんでした。何も考えずに産めたら、どんなに楽だろう。そんな風に思っていました。

 フリーランスだったため、妊娠・出産をすれば仕事を辞めなければいけないだろうとも感じていました。将来、「子どものせいでやりたいことができなかった」と不満を持ってしまうのは避けたかったといいます。

 でも、元夫の実家からは「妊娠しやすくなる」という食品などが送られてきました。子どもを欲しがっていなかった元夫も、徐々に「家のためにも、子どもは作っておいたほうがいいんじゃない?」と言うように。

 価値観のずれから関係は冷めていき、離婚。米国へ渡りました。小学生の頃に米国に住んでいたことがあり、もともと多様性のある米国のほうが肌に合っていると感じていたそうです。

産むことへの価値観のずれがあった。子どもを持つことは考えられず、離婚した(写真はイメージ=PIXTA)

産むことへの価値観のずれがあった。子どもを持つことは考えられず、離婚した(写真はイメージ=PIXTA)

結婚向いてない、でも「産みたい」

 そして、39歳で出産を考えます。しかし、子どもを作るために結婚する、という考えは頭に浮かびませんでした。

 米国でも、日本ほどではないにしろ、「女性はこうすべきだ」と考える人はいます。夫にイライラする女友達を見ていて、「パートナーがいるから期待してしまう。いなければ安定した気持ちで子どもを育てられるのでは」と考えました。以前の結婚で「私に向いているシステムじゃない」とも思っていました。

 女性は、元恋人で、別れた後も信頼のおける友人関係を築いていた北欧出身の男性に「1人で子どもを産んで育てたい」と話して協力を求めました。父親としての義務は一切求めない、金銭的なことも後で要求しないことなどを伝えると、彼は承知してくれました。

 すぐには子どもを授からなかったため病院で検査し、閉じていた卵管を手術。男の子を授かりました。

産まれた男の子、人生の最優先に

 出産すると、急に「死」が怖くなったのに驚いたといいます。それまでは「いつ死んでも平気」と思って生きてきたのに。子どもを産みたくなかったのは、自分より大切なものができることへの恐怖感だったんだ、と思うようになりました。

 人生で優先するものが自分より息子になった結果、女性は息子が2歳半のときに再婚しました。「こういう生き様の人を見て育ってほしい」と感じた男性と出会ったからです。自分の恋愛感情というよりは、息子のことを考えての決断でした。お互い再婚同士。現在は、男性が以前結婚していた時の子どもも一緒に暮らしています。

「こういう生き様の人を見てほしい」。息子のことを考えて再婚を選んだという女性(写真はイメージ=PIXTA)

「こういう生き様の人を見てほしい」。息子のことを考えて再婚を選んだという女性(写真はイメージ=PIXTA)

 息子の父親である元恋人とは、いまも家族ぐるみの付き合いをしています。息子は、元恋人のことを生物学的な父親、彼の子どもたちのことをきょうだいだと認識しています。彼の両親も息子を孫としてかわいがってくれ、北欧の実家にも何度も遊びに行きました。

 日本では、未婚で妊娠すると「産めない」と考える人がまだ多いのが現状です。女性は、そんな話を聞くたびに、「日本には、見えないところに何層もの差別がある」と感じるそうです。

「婚活うまくいかなかった」20~30代の相談多く

 

左のグラフは結婚と同棲に関する意識調査で「結婚は必ずするべきだ」「結婚はした方がよい」と答えた人の合計。日本は過去15年間横ばいなのに対し、フランス、スウェーデンでは毎回減っている。右のグラフは「婚外子を持つこと」に対する考え方を聞いた。「抵抗感が全くない」がフランス、スウェーデンでは大半だった

 2016年に国内で生まれた97万6978人のうち、婚姻関係にない男女の間に生まれた「婚外子」は2万2402人。フランスやスウェーデンでは子どもの半数が非婚カップル間に生まれるのと比べると、日本では2.3%と少数派です。

 ただ、日本でも、非婚で産み育てることを決めた上で妊娠・出産する女性もいます。日本では非婚者は精子提供を受けられないため、恋愛関係にある男性に相談したり、海外の精子バンクを利用したりといった方法で妊娠・出産を目指す人が多いそうです。

 「婚活したけどうまくいかなかった。でも、子どもは欲しい」「出産できるタイムリミットを考えると、いま産んでおきたい」

 結婚せずに1人で子どもを産み育てる「選択的シングルマザー」や、そうなることを検討している人への情報提供をする「SMC(Single Mother by Choice)ネット」(東京都)には、こんな相談が寄せられます。20代後半から30代前半の人からの問い合わせが多いですが、実際に妊娠・出産するのは30代後半の人が多いそうです。

 選択的シングルマザーというと、「結婚したくないけれど子どもが欲しい人」をイメージしがちですが、かたくなに「結婚したくない」という人はむしろ少数派。たまたま現在はパートナーがいないけれど、産めるタイミングを考えて「1人で産み、育てる」選択肢を視野に入れる、という人が多いそうです。

産めるタイミングを考えて相談する人が多いと言います(写真はイメージ=PIXTA)

産めるタイミングを考えて相談する人が多いと言います(写真はイメージ=PIXTA)

 血縁にこだわるわけではないけれど、日本では未婚の場合、血のつながりのない子と戸籍上も親子になる「特別養子縁組」ができないため、自分で出産するしか選択肢がない、という人もいます。

娘に伝える「家族にはいろいろな形がある」

 同ネットを主宰する高田真里さん(48)も11歳の女の子を育てる選択的シングルマザーです。もともと結婚願望がまったくなかったわけではありません。でも、離婚後も仲の良かった両親を見ていたため、法的な「家族」にあまり意味を感じていなかったそうです。

 高田さんが30代前半の時に付き合っていた男性は長男で、結婚したら東京を離れて彼の実家に入らなければいけませんでした。高田さんは起業したばかりの仕事を辞めることになります。彼のことは大好きで、子どもも欲しいと思っていたため、悩みました。

 彼は、もともと「父親になること」には積極的ではありませんでしたが、結婚や出産について何度も話し合ってくれました。高田さんは、なぜ子どもが欲しいのかを泣きながら説明したことも。話し合いを始めてから約2年、結婚せずに子どもを持つことを2人で決めました。少しでも状況が違っていたら、結婚をしていた可能性もあります。高田さんは「長い間考えて、行ったり来たりしながらの決断だった」と振り返ります。

 女の子を授かり、「子どもって、こんなにかわいいんだ」と思ったという高田さん。娘には幼い頃から、家族にはいろいろな形があることを伝えてきました。高田さんは「家族構成と子どもの幸せって、関係あるのでしょうか?」と疑問を投げかけます。「子どもを持つことは、どの方法なら正しいのか。正解はない気がします」

 それでも、いまでも世間から批判されないようにと気負ってしまう部分があり、旅行につれていくことやお弁当を作ることにはつい力を入れてしまいます。おやつも手作りしているそうです。

高田さんが、学校で社会科見学に行く娘のために作ったお弁当

高田さんが、学校で社会科見学に行く娘のために作ったお弁当

「産んでおいたほうがいい」言われても……

 今回、取材をした私はシングルで40歳。数年前から、「出産にはタイムリミットがあるから、子どもが欲しいなら産んでおいたほうがいいよ」と言われるようになりました。

 「そうは言われても……」と思いつつ、がむしゃらに婚活すべきなのかな、と思ったり、自然にまかせるべきなのではと思ったり、心が揺れ動きました。

 いまの自分の人生を受け入れて前向きに生きていますが、いつか、ものすごく後悔する日が来るのかな、と思うこともあります。だから、今回の取材で「たまたま現在パートナーがいないから選択的シングルマザーになることを考えている女性が多い」というのを聞き、実際に行動を起こしている女性がいることに驚きつつ、その思いに共感しました。

 これまでに、虐待してしまう親や虐待されて育った人、特別養子縁組や里親家庭を多く取材してきました。海外で、障害のある子をシングルマザーとして養子に迎えた女性に話を聞いたこともあります。両親がいれば必ず幸せなわけではないし、シングル家庭だったり、血縁がなかったりしても、明るく幸せな家庭もたくさんある、というのが実感です。

 真剣に悩んで1人で出産し、子どもの幸せを願って子育てをしている女性たちが、気負わずに生きていける世の中であればいいなぁと願っています。それが、生まれてきた子どもたちの幸せにもつながるのでは、と思います。

連載「平成家族」

 この記事は朝日新聞社とYahoo!ニュースの共同企画による連載記事です。家族のあり方が多様に広がる中、新しい価値観と古い制度の狭間にある現実を描く「平成家族」。今回は「妊娠・出産」をテーマに、6月29日から計10本公開します。

平成家族


「子供ができて知ったこと」、最後の1コマに涙腺崩壊
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