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大阪北部地震で活躍、阪急「ゴールデンオリーブ」シートのこだわり
6月18日朝に大阪府北部を襲った最大震度6弱の地震で、阪急電鉄(本社・大阪市)の車両の座席が意外な活躍を見せました。駅と駅の間で緊急停止した車両からの脱出シートとして使われた光景は、SNSなどで話題を集めました。関西人にはおなじみの座席は、素材にアンゴラヤギの毛が使われているこだわりのアイテム。「ゴールデンオリーブ」と呼ばれるシートをフカボリ取材しました。(大阪社会部記者・波多野大介)
阪急電鉄は、マルーン色(小豆色)の車体から「阪急マルーン」とも呼ばれて親しまれています。座席シートも「ゴールデンオリーブ」の名で呼ばれる上質感漂う緑色で、ふかふかの座り心地が好評です。
地震は6月18日午前7時58分ごろに発生。阪急電鉄の列車35本が駅と駅の間で緊急停止しました。運転再開が見通せないため、閉じ込められた乗客を車外に降ろし、最寄りの駅まで線路上を歩いてもらうことにしました。このとき、乗降口から乗客を降ろすために活用されたのが、座席シートです。
使われたのは7~8人掛けのシート。車両によって長さは3.17~3.86メートル、奥行きは45センチ。車掌と運転士が2人で作業します。シートを四つ取り外して滑り台のような座面と両側の側面をつくり、乗降口に立てかけてスロープに。乗客はその上を滑り降ります。
阪急電鉄広報部によると、乗客を脱出させる訓練や、シートを使う訓練は、日ごろから定期的にしているそうです。「事故などの場合は、対向車線に救援車両を用意して、扉の位置を合わせて『橋渡し』をするときに座席シートを使うこともあります」と広報担当者は言います。
その一方で、2003年度に導入した9300系以降、9000系(06年導入)、1000系(13年導入)、1300系(14年導入)には、1編成に2台のはしごを搭載しています。それには理由がありました。
「9300系以降はシートに間仕切りを設けたからです。座席に詰めて座っていただくため、端っこに座りたいお客様が多くいることから、座席を3・2・3で仕切って『端』を増やしました」(広報担当者)
間仕切りがあるシートは脱出用のスロープには使えません。ただ、阪急では車両を40~50年使うことから、間仕切りのないシートがなくなるのはまだ先の話だそうです。現在も63%は間仕切りがない車両です。
阪急の座席表面のパイル(立毛)は復元力に優れ、素材の7割はアンゴラヤギの毛を使っています。「ふかふかの座り心地の良さが好評です。同じ色と素材で座布団を作ってイベントで販売したら、大好評でした」と広報担当者。
脱出に使ったシートは、洗浄してから元に戻すそうです。
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