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「かくれんぼする天守閣」知られざる名古屋城 邪魔、けど切れず?

かつて石垣にビール瓶がささっていた名古屋城。まだ知られていない見どころがあります。記者が名古屋に赴任していたころに気づいたことをさらに紹介します。それは、木造復元事業にともなう調査と工事のため閉館されている天守閣が、ときどき「かくれんぼ」するというちょっとした話です。

名古屋城=名古屋市中区の名古屋テレビ塔から
名古屋城=名古屋市中区の名古屋テレビ塔から 出典: 朝日新聞

目次

 かつて石垣にビール瓶がささっていた名古屋城。まだ知られていない見どころがあります。記者が3年前に名古屋へ赴任していたころに気づいたことをさらに紹介します。それは、木造復元事業にともなう調査と工事のため閉館されている天守(天守閣)が、ときどき「かくれんぼ」するというちょっとした話です。(朝日新聞東京社会部・岡戸佑樹)

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【知られざる名古屋城シリーズ】
①名古屋城「石垣にビール瓶」の思い出 地味ないたずら?驚きの答え
②「かくれんぼする天守閣」知られざる名古屋城 邪魔、けど切れず?
③エノキの木も「しゃちほこ」 名古屋名物に、城周りも合わせたの?
④城の周りを走る「お堀の電車」? 名古屋城のお堀でもラッシュが!

外堀沿いを歩き続け

 散歩が趣味の記者が名古屋にいた時、お気に入りのコースだったのが名古屋城の外堀沿いです。週末の気分転換に、時には仕事の合間に、時間の許す限りひたすら歩き続けていると、とあることに気づきました。

 それは、見る場所によって、外堀の奥にあるはずの天守閣が見えなくなるということ。

西側上空から見た名古屋城。左下の三重の建物は西北隅櫓、右下隅はホテルナゴヤキャッスル=1976年
西側上空から見た名古屋城。左下の三重の建物は西北隅櫓、右下隅はホテルナゴヤキャッスル=1976年 出典: 朝日新聞

間違いなくある!

 2015年夏。ある昼下がり、改めて外堀沿いの道を念入りに歩いてみました。スタート地点は天守閣の西側。「ホテルナゴヤキャッスル」の南側にあるバス停前に立つと、堀の向こうには、誇るように立っている天守閣が間違いなく見えました。

名古屋城の天守閣=岡戸佑樹撮影
名古屋城の天守閣=岡戸佑樹撮影 出典: 朝日新聞

ん?しゃちほこだけ?

 ところが、時計回りに外堀沿いを歩いていくと、天守閣は徐々に木々の陰に。名古屋名物の金のしゃちほこだけが見えたり、隠れたりしています。

かろうじてしゃちほこが…
かろうじてしゃちほこが… 出典: 朝日新聞

ついに姿を消す…

 歩き始めて5分、「西北隅櫓(せいほくすみやぐら)」というやぐらを目前にして、ついに天守閣は完全に姿を消しました。近くの住民に話を聞くと、「本来ならここは、やぐらと天守閣が並ぶ一番の見どころなのに」と嘆きの声が上がりました。

天守閣は全く見えない。右にあるのは西北隅櫓
天守閣は全く見えない。右にあるのは西北隅櫓 出典: 朝日新聞

立ちはだかるのは?

 天守閣の前に立ちはだかったのは、サクラやマツの木々でした。城を管理する名古屋市の総合事務所によると、話は120年以上前にさかのぼります。1891年に岐阜県(美濃)と愛知県(尾張)で発生した濃尾地震で、堀の内側に沿って立っていた「多聞櫓(たもんやぐら)」が崩れて以来、周辺に植えられた木々が多いとのことでした。

 木々が成長して天守閣を覆い隠すようになると、事務所には「天守閣が見えないから、木を切ってほしい」という要望が何度か寄せられたそうです。

さらに進むと慣れ親しんだ天守閣がまた見え始めた
さらに進むと慣れ親しんだ天守閣がまた見え始めた 出典: 朝日新聞

切るのは大変よ

 ただ、市側には簡単に応じられない事情があります。

 城の敷地内は都市緑地法という法律に基づく特別緑地保全地区。市長の許可があれば木々の伐採もできます。ですが、国の特別史跡でもあるため、大幅な現状変更になる場合は文化庁も「うん」と言うことを求められるからです。うーん、色々と複雑。

 とはいえ、外堀沿いは多くの市民にとって大切なジョギングや散歩のコースとなっています。当時、事務所の担当者は「上部を刈り込むなど、少しでも天守閣が見やすくなるような管理策を検討していきたい」と話していました。

木々が成長する前の昭和期に撮影された写真。西北隅櫓の左に天守閣が
木々が成長する前の昭和期に撮影された写真。西北隅櫓の左に天守閣が 出典: 山川出版社「レンズが撮らえた幕末日本の城」から

現状はどうなの?

 あれから3年、現状はどうなっているのでしょうか。

 登場したのは学芸員の木村有作さん。「木はあれから切っていないはずです」。ですが、今年に入ってから保存活用計画ができたため、基準に従って木々の整備の計画を立てていくそうです。

 庭園部会の有識者らからも「もっとお金をかけて整備を」との声が上がっていることも木村さんが教えてくれました。伸びきった木々の上を伐採するには、技術もお金も必要ですものね…。

 さらに、江戸時代には「木々を周りに植えて城が外から見えないよう」にする役割もあったそう。邪魔だ、切っちゃえ、というわけにはいかないのです。

名古屋市がまとめた「名古屋城跡保存活用計画」
名古屋市がまとめた「名古屋城跡保存活用計画」 出典: 朝日新聞

 見えそうで見えない、そんなもどかしさも楽しめるようになれば、かなりの名古屋城ファンと言えるのかもしれません。そのレベルに達せられるよう、暇を見つけては名古屋に通おうと思います。

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