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「オッサンがすべて決める国」女性議員がいない「本当のデメリット」
5月16日、あまりに女性の議員が少ない日本で、初めて、議会に女性を増やすための法律「候補者男女均等法」が成立しました。「オッサン政治」にもの申してきたフェイスブックのグループ「全日本おばちゃん党」の代表代行で、大阪国際大の谷口真由美・准教授(ジェンダー法)は、「女性議員がいないデメリットを、財務次官のセクハラ疑惑が見せつけてくれた」と話します。谷口准教授に女性議員がいない「本当のデメリット」について語ってもらいました。(聞き手 朝日新聞記者・岡林佐和)
「女性が増えたからって何が変わるの」とよく言われますが、女性の数が少ないとどうなるかということを、まさに今回の財務次官のセクハラ疑惑問題が見せつけてくれました。
「セクハラ」が流行語になったのは1989年。30年近くたって、これかと。被害者に名乗り出るよう求めたり、大臣や大臣経験者が被害者を批判したり、「セクハラ罪という罪はない」と言ってみたり。あまりのアホっぷりにあごが外れます。
恥ずかしい現状だけれども、霞が関にも国会にも日本のどこにも、女の人が少ないからこんなことになっているということは明らかです。
自民党が議席に応じて質問時間を配分するべきだと言い出したとき、それを言うならまず、社会の主権者の構成割合に応じて議席を配分するべきでしょう、と思いました。
有権者の半分は女性ですよ。半分を女の人に割り当てたらどうですか、と。
女性を増やさないといけない、そのために「クオータ」(割り当て)や「パリテ」(男女同数)といったしくみが必要だと言うと、すぐに「男性への逆差別だ」という話になります。
でも心ある、デキる男はそんなこと言いません。
女の人が入ってきても、優秀な男の人はこわくないから。はかせてもらっているゲタを脱いで、同じスタートに立ったら女性に負けるとわかっている男の人が文句を言うんです。
国会は、国権の最高機関で、国の唯一の立法機関です。そこか9割男だったらどうなるか。女性にとって不利な状況が何も変わっていかないわけです。
だから刑法の堕胎罪もいまだに存続しているし、選択的夫婦別姓も実現しない。
「202030(にいまるにいまるさんまる)」といって、2020年までに女性議員の割合を30%にすると政府は掲げていますが、「3割」には根拠があります。
少数派が、多数派の中で認識されるのが3割だといわれているのです。本当は女性は人口の半分なんですから、3割なんて「めっちゃひかえめやん」と思いますけどね。
それでも、女性が増えて何かいいことあるの?と思う方へ、こんなたとえ話をします。
10人のお友達とごはんを食べに行くとします。焼き肉か寿司か、どっちにするかという話になりました。もし、9人が寿司といって、焼き肉が1人だったら、焼き肉の人はこう言うでしょう。「いいよいいよ、わたしはいいからお寿司行こう」。焼き肉に行きたかった人は、がまんすることになる。
寿司が8人で焼き肉が2人だったら。おそらく2人ががまんすることになるでしょう。
では、寿司が7人で焼き肉が3人だったら。「へーそうか、焼き肉に行きたい人もおるんやな」と認識されるでしょう。
では、寿司が6人で4人が焼き肉だったら?「今回はお寿司にするけど、次回は焼き肉にしようね」とか、そういう話がでるかもしれません。
ではもし、5人ずつだったら。「いっそ別々に行く?」とか、「焼き肉とおすし、両方食べられる場所はないか?」とか、ちがうアイディアが出てくるんじゃないでしょうか。
少数派の数が増えていくと、違う意見が認識されるようになります。異なる意見を認識した上で、じゃあどうしようかと考えるとき、新しいアイディアが出てイノベーションにつながる。これは、男性の有権者にとってもメリットじゃないでしょうか。
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