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2018年03月29日

「娘見守りたい」別居する親の苦悩 離婚減も増える「会いたい父親」

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夫婦関係の悪化から、離婚後に子どもと会えない親の思いとは(写真はイメージです=PIXTA)

夫婦関係の悪化から、離婚後に子どもと会えない親の思いとは(写真はイメージです=PIXTA)

出典: PIXTA

 2000年代に入り、離婚の件数は減っている中、子どもとの面会を求めて調停を申し立てる親は年々増えています。「突然の子連れ別居」を恐れ、子を残してひとり家を出た父親は、離婚が成立した今も娘に会えていません。「離婚しても、子どもに会いたい」。離婚への抵抗感が薄れつつあるなかで、父親の目線から「平成の離婚」について考えてみました。(朝日新聞デジタル編集部・野口みな子)


「子ども連れ去られてしまったら…」自ら家を出た

 「娘に辛い思いをさせて、時間だけが奪われてしまった」

 関東在住、40代の会社員・武志さん(仮名)は数年前、ひとり、家を出ました。別居後に申し立てた調停中に面会して以来、小学生の娘とは1年半近く会えていません。

面会を求める調停中に会って以来、娘とは断絶されたままという(写真はイメージです=PIXTA)

面会を求める調停中に会って以来、娘とは断絶されたままという(写真はイメージです=PIXTA)

 武志さんが元妻と出会ったのは学生時代。「精神的に不安定なところがあった」という元妻の生い立ちや、気持ちの波があることを理解していたという武志さんは、通院や気持ちのサポートを続けてきたそうです。

 「いろいろ手策は施してきたつもり」と武志さんは振り返ります。娘が生まれ、家を購入し、少しずつ紡いでいると思われた家族の形。しかし、それはいつの間にか武志さんの心をすり減らし、元妻にとっても満足し続けられるものではありませんでした。

 家を出る直前の時期に撮っていたという動画には、「お前と離婚さえできれば」「子ども連れていなくなるわ」--大きな声で武志さんを罵倒し、壁を叩いたり、ものを投げたりする元妻の姿が映っていました。中から鍵をかけられ、家に入れてもらえなかったこともあったといいます。とても冷静な話し合いができる状態ではありませんでした。

 元妻の言葉に武志さんが危惧していたのは、「突然の子連れ別居」です。家を出た妻子の所在がわからなくなり、それ以降子どもと断絶される事例があることを知っていました。

武志さんは「いつ出て行かれるか」という不安が消えなかったと話す(写真はイメージです=PIXTA)

武志さんは「いつ出て行かれるか」という不安が消えなかったと話す(写真はイメージです=PIXTA)

 いつ娘が奪われてしまうかわからない不安と、夫婦関係の悪化から、不眠の症状がひどくなったといいます。精神的にも限界に近かった武志さんは、自ら家を出ることしかできませんでした。

 「僕が子どもを連れて家を出て行くという選択もありました。ただ子どもには直接危害がなかったことと、転校などで環境を変えて負担をかけることはしたくありませんでした」

離婚は微減、でも増え続ける「会いたい親」

 武志さんは、別居の数カ月後には家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。

 親権の要求はしたものの、「勝てないことはわかっていた」と話します。武志さんが離婚とともに話し合いたかったのは、子どもとの「面会交流」でした。

 「面会交流」とは、別居や離婚で、子どもと離れて暮らす親が子どもと会うことです。

 「例え一緒に暮らせなくても、養育に関わりたい。養育費を払うだけではなく、勉強を教えたり、将来のことを考えたり、娘を見守っていきたいんです」(武志さん)

 離婚件数が微減している中で、面会交流を求める調停件数は年々増加しています。2016年度は約1万2千件で、10年間で2.3倍になりました。

 これに対し、養育費の調停件数も増えていますが、10年間で1.3倍で、ここ数年はほぼ横ばいです。2016年度に終了した面会交流の審判と調停の件数で見ると、7割超が父親からの申し立てでした。

 「子どもに会いたい父親」の背景には、何があるのでしょうか。

 

 家族法に詳しい早稲田大学の棚村政行教授は、「父親の育児参加が広がったり、ひとりっ子世帯が一般化したりする中で、離婚をめぐる社会的な背景が折り重なって作用している」と話します。

 これまで性別役割分業の考え方で、父親は外でお金を稼ぐのが仕事とされていました。共働きの増加から、子どもが幼い頃から育児参加する父親が増え、父親の意識が家の中へ払われるようになってきました。

 「少子化でひとりっ子を持つ核家族も増えており、父母ともに子どもひとりに対する執着度が強くなっている」と棚村教授は分析します。

早稲田大学の棚村教授

早稲田大学の棚村教授

 一方、幼い子どもを持つ夫婦などは、親権は母親が持つケースが多いです。「せめて会いたい」と願う父親でも、「感情のもつれなど、夫婦関係が非常に悪い状態だと、すんなりと子どもを会わせるという合意がしにくい場合もあります」。

 「夫婦の別れが、親子の別れになってしまうのです」(棚村教授)

 面会交流を求めた武志さんですが、元妻は「子どもが会いたがっていない」と主張し、1度目の離婚調停は不調に。その後も面会交流を焦点に、調停は難航します。

「もうあの時間は取り戻せない」

 調停を重ね、武志さんの離婚は成立しました。調停条項には、武志さんが学校行事に参加することや、メールなどで娘と連絡することを妨げないこと、元妻は娘の定期テストの結果や成績を伝えること、など十数条が定められました。

 面会交流の頻度は決めることができませんでしたが、段階を経て実施するよう合意。このとき、家を出て別居を始めてから3年が経とうとしていました。

 「なんで早期解決できないんだろう、調停も1~2カ月に1回でしか行われなくて……。長期の裁判に巻き込まれた子どものダメージははかりしれないし、もう取り戻せない」

 声を震わせて語る武志さんのスマートフォンの待ち受けには、「元妻にやっと送ってもらった」という娘の写真が設定されていました。別居当時は小食でやせ型なのが心配だったという娘の顔は、少しふっくらして、顔つきも大人に近付いていました。

 「もしも会えるようになったら、ちゃんと謝りたい。家を出たことも『娘のせいじゃないよ』って伝えたい。いつかわかってもらえればいいなと思います」

「娘のせいじゃないよ、と伝えたい」と武志さんは話す(写真はイメージです=PIXTA)

「娘のせいじゃないよ、と伝えたい」と武志さんは話す(写真はイメージです=PIXTA)

連載「平成家族」

 この記事は朝日新聞社とYahoo!ニュースの共同企画による連載記事です。家族のあり方が多様に広がる中、新しい価値観と古い制度の狭間にある「平成家族」。今回は「離婚」をテーマに、その現実を描きます。

平成家族



離婚して住むワンルーム 夜廻り猫が描く「ひとり」
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