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伝説のローカルCM「造船番長」に新作 実は変わったのは…監督に聞く
岡山県内のみで放映されていたCM「造船番長」。造船会社のCMなのに会社の説明はほとんどなく、破天荒なキャラクターが登場するアニメーションです。
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岡山県内のみで放映されていたCM「造船番長」。造船会社のCMなのに会社の説明はほとんどなく、破天荒なキャラクターが登場するアニメーションです。
岡山県のみで放映されていたCM「造船番長」。造船会社のCMなのに会社の説明はほとんどなく、破天荒なキャラクターが登場するアニメーションです。今月1日から再び放映が始まり、ツイッター上で話題になっています。作品の魅力について、制作した映像ディレクターに話を聞きました。
岡山の伝説的ローカルCM
— 藤井亮 (@ryofujii2000) 2018年3月7日
造船番長シリーズ、新バージョンできました。
なんと社名が変わりました!(変更点それだけ) pic.twitter.com/tspJdpM4WS
今月7日、CMの新バージョンがツイッター投稿されました。つぶやいたのは、映像ディレクターの藤井亮さん。造船番長シリーズを手がけた本人です。
「岡山の伝説的ローカルCM造船番長シリーズ、新バージョンできました。なんと社名が変わりました!(変更点それだけ)」
その文言の通り、作中に登場する社名が「サノヤス・ヒシノ明昌」から「サノヤス造船」に変わっただけ。どうやらスポンサー企業の社名変更に合わせて、その部分を作り替えたようです。
この投稿に対して、「パンチが効きすぎ」「いつまででも見ていられる」「初めて見たけど……この自由過ぎるくらいが好き」といったコメントが寄せられ、リツイートは6千、いいねは8千を超えています。
「ここ数年テレビCMはお休みしていましたが、3月1日から地元テレビ局で放映してもらっています」
そう話すのは、サノヤス造船の人事部長・坂根誠さん。人手不足といわれるなか、ネット上で根強い人気を持つ造船番長に「応援番長」としての役割を期待して、再び起用したそうです。
造船からレジャー施設運営まで手がけるサノヤスホールディングス(本社・大阪市)。1911年に大阪で創業した「佐野安造船所」から始まり、2012年1月のホールディングス体制移行時に、「サノヤス・ヒシノ明昌」から「サノヤス造船」に社名を変えました。
造船番長シリーズがスタートしたのは2010年。岡山県内のみで放映している理由は「BtoBの製造業なので、当社のCMは製品をアピールするような目的ではないですから」と坂根さん。
船舶の建造は屋外作業が多く、寒暖の影響を受けるため、「造船業はキツイ、厳しい」というイメージを持っている若い人が多くいました。それを払拭(ふっしょく)して欲しいという願いを込め、「船を造るぜ、かっこいいぜ」と造船番長に訴えてもらったそうです。
ターゲットが学生ということもあり、心がけたのは「明るく、楽しく、印象に残る」という点。目的は「船を造り上げる、というロマンに興味をもってもらうこと」「サノヤスという会社名を記憶に残してもらうこと」「自由でチャレンジングな印象を感じてもらうこと」の3つでした。
放映開始後、全国放送されるテレビ番組で何度も紹介されたり、インターネットサイトやブログで取り上げられたり。想像以上の反響が寄せられ、CMとしてもカンヌ国際広告祭のPR部門でシルバーを受賞しました。
実際の採用活動に影響はあったのか? 坂根さんはこう振り返ります。
「応募者数が倍になり、大変驚いたことを覚えています。2012年から後継の『造船係長』に変わりましたが、今でも応募して来られる学生さんから『子どもの頃に造船番長のCMを見て興味を持ちました』と面接の際に言われます。やって良かったな、CM開始時のコンセプトは間違ってなかったな、と改めて思います」
再びこのCMが注目を集めたことについて、造船番長シリーズの企画・監督・アニメーションを担当した、電通関西支社の映像ディレクター・藤井亮さんに話を聞きました。
――今回のツイートのきっかけは
せっかく改定したこともあり、また少しでも多くの人に見てもらえたら嬉しいなぁ、という気持ちで何げなく……。
――変更したのは社名の部分だけでしょうか
変更したのは社名に関わるロゴや歌です。
――造船番長シリーズは、なぜアニメで番長というキャラクターだったんですか
造船業に従事する若い人が減っているというのもあり、若い人が興味をもってくれるよう、アニメーションでCMを制作しようと思いました。さらに、上の年齢の人も面白がれるよう、昭和アニメに。
造船の現場というのは、昔ながらの3K職場だと思われがちなところがあり、それを違うと否定するよりも、キツかったり、汚れたりするのがむしろカッコイイと思ってもらえたらと思い、それを表現するキャラクターを作ろうとしました。
――合計で何作作ったんですか
今回のものや予告編風CMなども含めて9タイプです。これとは別に、続編の造船係長シリーズもあります。
――制作するにあたって心がけたことは
見ている人を舐めた感じのアニメ風CMみたいなものが嫌だったので、「ホントに造船番長というアニメシリーズがあるんだ」というつもりで作り込みました。予算がないからといって密度を下げたくなかったので、全カット自分で原画や背景を描いて腱鞘炎(けんしょうえん)になりました。
――登場する主要キャラクターの設定は
いろいろ設定はしているのですが、見ている人にCMの端々から妄想していただけると嬉しいので、秘密ということで。
――社長など実在する人物をモチーフにしていますね
社内的に話題になるかな?と思って、そうしました。
――当時、2年目も同じCMを流すことになり、新キャラを追加したそうですね
アニメで後期シリーズになると、オープニングで登場する敵が変わったりするじゃないですか。そういうのを再現したいと思いました。変えたのは、仲間が増えているとか、敵が真のボスに変わっているとかです。
――番長シリーズが支持される理由は
もし、こちらの無駄に多い熱量を見てくれた人が感じ取っていただけているのなら、とても嬉しいです。
ツイートが話題になったことについては
公開当時、公開2年後くらい、そして今回の改定バージョンと、3回目の話題化です。数週間から数カ月で消費されてしまう運命のCMが、こうして長く話題にしてもらえるというのは、製作者冥利(みょうり)につきます。