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福島原発に現れた「TOSHIBAドーム」 20分しかいられない撮影現場

福島第一原発3号機の最上階。ドーム形の屋根の建設が進んでいた=2017年12月1日、竹花徹朗撮影
福島第一原発3号機の最上階。ドーム形の屋根の建設が進んでいた=2017年12月1日、竹花徹朗撮影 出典: 朝日新聞

目次

 この写真、どこだと思いますか? パッと見、どこにでもありそうなトンネルの工事現場ですが、これが、7年前に事故があった東京電力福島第一原発3号機の屋上です。中にはいまも、使用済みの核燃料が残ったまま。こんなに近づいて大丈夫なの? どんな格好で取材に行くの? 現地での取材を振り返ります。

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「核のゴミ」取り出しに向けて

 今回、撮影にのぞんだのは、朝日新聞東京本社・映像報道部の竹花徹朗カメラマン(33)と、もう1人のカメラマン。現地では、原発担当の記者と計3人で取材にあたりました。

 写真を撮ったのは、2017年12月です。まず、この写真に何が写っているのかご紹介します。

 ひときわ目を引く巨大な半円形の構造物。これは燃料プールから燃料を取り出すときに、放射性物質が飛び散らないようにするための「カバー」です。

 3号機は今年の秋に、「核のゴミ」とも言われる使用済み燃料の取り出しが始まる予定で、いまはそれに向けて、カバーを造っている真っ最中でした。完成後は、高さ17メートル、長さ60メートルほどのかまぼこ型の筒になります。(撮影後の2月21日に完成しました)

ドーム状の屋根の設置作業が続いている福島第一原発3号機の最上階。右奥に4号機、左奥に2号機が見える(写真6枚をつないだパノラマ画像)=福島県大熊町、竹花徹朗撮影
ドーム状の屋根の設置作業が続いている福島第一原発3号機の最上階。右奥に4号機、左奥に2号機が見える(写真6枚をつないだパノラマ画像)=福島県大熊町、竹花徹朗撮影

 その下で青いネットに覆われているのは、使用済み核燃料が入った燃料プール。企業のロゴが入った4本足の機械は、燃料を取り出すためのクレーンです。燃料を中央のフックに引っかけて、6メートル下のプールから引っ張り上げます。

 床には、線量を下げるための分厚い鉄板が敷き詰められています。

建屋上部にドーム状屋根の設置作業が続く福島第一原発3号機。使用済み燃料プールの上には青いネットがかぶせられていた=福島県大熊町、竹花徹朗撮影
建屋上部にドーム状屋根の設置作業が続く福島第一原発3号機。使用済み燃料プールの上には青いネットがかぶせられていた=福島県大熊町、竹花徹朗撮影

 写真右側、カラフルな格好で見切れているのは、取材に対応してくれた東電の担当者です。工事現場用のヘルメットに粉じんをさえぎるマスク、上下がつながった水色の防護スーツを身につけています。

 取材陣も、もちろん同じ格好。目元や頰の肌まで覆っていないのは、当初に比べて放射線量が下がっていることのあらわれです。

福島第一原発3号機に近づくと放射線量はだんだんと上昇していく=福島県大熊町、竹花徹朗撮影
福島第一原発3号機に近づくと放射線量はだんだんと上昇していく=福島県大熊町、竹花徹朗撮影

靴下3重履き、ガムテープで目張り

 取材の起点は、福島第二原発のPR施設「エネルギー館」。ここで東電の担当者と合流し、車で福島第一原発に向かいます。

 原発に持ち込めるのは、東電に機種を伝えてあった1台のカメラのみ。建屋内には所々狭いスペースがあるほか、保安上の理由もあって複数のカメラの持ち込みはできません。

原子炉建屋上部を覆うドーム状の屋根の設置作業が続いている福島第一原発3号機=福島県大熊町、竹花徹朗撮影
原子炉建屋上部を覆うドーム状の屋根の設置作業が続いている福島第一原発3号機=福島県大熊町、竹花徹朗撮影

 建屋を取材をする前には、2段階の準備が必要です。

 原発のセキュリティゲートを通った後まず、一人ひとりに用意された線量計を手渡され、長靴に履き替えます。これが「第一段階」。

福島第一原発3号機近くの放射線モニタリングポスト=福島県大熊町、竹花徹朗撮影
福島第一原発3号機近くの放射線モニタリングポスト=福島県大熊町、竹花徹朗撮影

 再び車に乗り込んで、今度は建屋から100~200メートル離れた作業拠点へ。ここで、写真のようなフル装備になります。さらにゴム手袋と軍手を2枚重ねてはめ、靴下も3重履き。ガムテープで手首と足首を目張りし、靴もまた別のものに履き替えます。

 この「第2段階」の準備が終わると、ようやく原子炉建屋へ。鉄板が敷かれた下り坂を歩き、エレベーターに乗って3号機の屋上に上がります。

福島第一原発3号機最上階へ向かうエレベーター=福島県大熊町、竹花徹朗撮影
福島第一原発3号機最上階へ向かうエレベーター=福島県大熊町、竹花徹朗撮影

「普通の工事現場のよう」

 現地は、一見、驚くほど普通の工事現場でした。

 今回の取材は、体に影響が無いとされる放射線量の範囲で行われました。そうわかっていても、目に見えないものへの怖さは無くなりません。

 一方で、作業する人たちは、顔を合わせると互いに「お疲れ様です!」と声を掛け合っています。

福島第一原発4号機近くに残るがれき=福島県大熊町、竹花徹朗撮影
福島第一原発4号機近くに残るがれき=福島県大熊町、竹花徹朗撮影

 建屋の近くで働いている人数は限られ、淡々と時間が過ぎていくような感じがしてきます。

 足元にあるのは、566体の使用済み燃料――。頭ではわかっていても、自分がそこに立っていることに、ピンと来ない不思議な状況です。

 屋上に響いていたのは、機械音や作業員の喧噪ではなく、ビュウビュウという風の音だけ。隣りの2号機と4号機の建屋の奥には、青い水平線がのぞいていました。

原子炉建屋上部にドーム状の屋根が新設されている福島第一原発の3号機(中央)。手前右は4号機=福島県大熊町、竹花徹朗撮影
原子炉建屋上部にドーム状の屋根が新設されている福島第一原発の3号機(中央)。手前右は4号機=福島県大熊町、竹花徹朗撮影

 燃料プールを覗き込むと、水面近くに見えたのは、いくつものがれき。整然とした屋上の光景とは違い、事故の痕跡が生々しく残っています。

 「長い時間、プールに近づかないで」。東電の担当者から注意が飛び、1~2分で手早く撮影を済ませました。

福島第一原発3号機の使用済み燃料プールの水面近くにはがれきが残っていた=福島県大熊町、竹花徹朗撮影
福島第一原発3号機の使用済み燃料プールの水面近くにはがれきが残っていた=福島県大熊町、竹花徹朗撮影

 この日、屋上にいられたのは、わずか20分ほどでした。

 実際に行ってわかったのは、イメージ通りというのとイメージと違うというのと、その両面があるということ。

 事前にいろんな記事を読んだり映像を見たりして、建屋の状況はなんとなく想像はついて、あまり驚きはない。でも、驚きがないというのは怖いことでもあります。

 何かがまひしていくんじゃないか、そんな気持ちにもなった撮影現場でした。

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