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ド素人のための「ドローン講座」 飛ばすのに許可が必要? 費用は?
ひょんなことからドローン(小型無人飛行機)をもらいました。カメラ機能もあるので休日に飛ばしてみようと思ったら…「ドローンを飛ばすには許可が必要」だと言うではないですか。せっかく手に入れたのに、どうしたら良いの? 専門家に相談してみました。
私が手に入れたのは、中国・深圳の「JJRC」という会社製の「H47」という機種。
あるトークイベントにお邪魔した際、「じゃんけんで勝ち残ったら、不要になったドローンをもらえる」というコーナーがあり、そこで運良く勝ってもらえたものです。
さっそく飛ばそうと思ったら、一定の機能があるドローンは許可なしには飛ばせないらしい。許可って何? 専門家に話を聞いてみました。
お話をうかがったのは、ドローンの利活用推進を目指す団体「一般社団法人日本UAS産業振興協議会」(JUIDA。東京)の鈴木真二理事長(64)。東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻の教授でもあります。
「ドローンを飛ばすには許可がいるとか……」と聞くと、「人口集中地区と呼ばれるところでは許可無く飛ばせないことになりました。東京23区はほとんど、人口集中地区内になります」。
なんと、それでは練習もだめなんでしょうか?
「自動車なんかだと、大学の構内で学生さんが運転免許を取る練習をしていても、道路交通法上、罰せられることはないんですけれども」
「空は全部つながっているということで、自宅の庭とか私有地の中で飛ばしてもどこかに飛んでいっちゃうかもしれないので飛ばせないという、縛りは厳しくなりましたね」
規制のきっかけの一つとなったのが、2015年4月に首相官邸の屋上で不審なドローンが発見された問題です。
日本の中枢にドローンが侵入できたこの問題を受け、改正航空法が2015年12月に施行され、規制ができました。
空港などの周辺、150メートル以上の空域、人口集中地区の上空で飛ばすためには国土交通省の各地方航空局長の許可が必要となりました。
飛行禁止空域や許可・承認の申請手続きの概要については、国交省のホームページから確認できます。
逆に言えば、それ以外の、人口の少ない地方などでは飛ばすことは可能です。
また、屋内や、私がゲットした「H47」のように200グラム未満の「トイドローン」と呼ばれるような機種を使う場合も、航空法の規制の範囲外として飛ばすことができます。
トイドローンは1万円以下で買えることもありますが、鈴木理事長は「高性能のカメラが搭載されていたり、安定して飛べる機能があったり。その意味ではすごく技術的な進歩もありますね」。
なお、航空法の規制については、測量や農薬散布など仕事で使う人たちが歓迎している面もあります。
これまで「あれ、本当に飛ばして良いのか」という疑いの目で周囲に見られることもありましたが、「ちゃんと許可を取っています」と主張できるようになったからです。
こうしたルールは世界各地で同様のものが作られていて、免許の取得まで必要な国もあるそうです。
鈴木理事長は、スクールの講習を受けることを勧めています。
「昔はラジコン飛行機をやろうとすると、ショップに行ってクラブに入って、先輩の人たちからの色々教わって使い方を覚えていく、という文化がありました。今はインターネットで簡単に買えますし、簡単に飛ばすこともできますが、きちんとした指導を受けてから使い出した方が安心して使えると思います」
初心者が飛ばすと思わぬ事故を引き起こす危険もあります。
鈴木理事長は「最近は保険も色々できてきましたけれども、(ミスなどで)壊してしまうのは悲しいですし」と話します。
JUIDA公認のスクールも全国130校以上あり、操縦スキルや航空法、気象に関することなども学べるそうです。
また、最近は自動車教習所が教室になることも。
少子化や若者の車離れなどの影響もあり、自動車教習所の経営が厳しいことから「広い敷地もあるし、教室もあるので、地方の自動車教習所がドローンのスクールを開く、というところも増えてきていますね」と鈴木理事長は話します。
もっとも、スクールに通うには、自動車運転免許を取るのに必要なくらいのお金もかかります。
趣味程度で楽しむ場合には、ドローンメーカーがサービスで実施する講習会に参加するという手もあるそうです。
今、ドローンに関するニュースを聞かない日はないほど、普及が進んできています。
世界では、中国で目覚ましい発展を遂げる深セン地区を拠点とするDJI、米国の3Dロボティクス、フランスのパロットが3大メーカーと位置づけられています。
鈴木理事長は、日本でドローンが普及しだしたきっかけの一つとして、2000年に国際会議に出た学生がフランス土産として買ってきたパロット製のドローンを挙げます。
数万円で買える玩具なのに、当時出回りだしたタブレットで操縦でき、搭載されたカメラの映像がタブレットに映るものでした。
「部屋の中で飛ばしてくれたんですけれども、こんなのおもちゃでできたのっていう。もうびっくりして」と振り返ります。
鈴木理事長は、そのうち、自分で撮った写真をソーシャルメディアに投稿する文化ができ、スマートフォンやタブレットの生産拠点だった中国がドローンの生産に力を入れ、爆発的な普及につながった、と見ています。
実は、1980年代には国内メーカーであるキーエンスが「ジャイロソーサー」の名前で同様の機器を売り出していたそうです。
「性能的には今のものに劣る、ちょっと違うものだったんですけれども、空飛ぶおもちゃとして売り出した。日本が世界に先駆けていたんですけれども、ちょっと時代が早すぎた」と鈴木理事長。
「技術は機を熟して出て行かないと。早すぎてもダメだし、遅くても負けちゃうし。微妙なタイミングが難しいというところがありますね」
最後に、「ドローンに興味はあるんだけれど……」あと一歩が踏み出せない人へのコメントをお願いしました。
「空に飛ばすということは、やってみると非常に楽しいことと思います。そこから職業としてやってみたいという方もいらっしゃるかと思いますし、趣味だけでという人もいらっしゃると思いますが、まずは小さいものでも良いので、手に取って飛ばしてみる、という体験をしてみてはいかがでしょう」
JUIDAでは、3月22~24日、千葉・幕張メッセで民間向けドローンを対象とするイベント「ジャパンドローン2018」を開催予定。そこでは、ドローンを飛ばす体験コーナーや、購入の場も設けられる予定です。
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