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止まれ!止まらんと…オーストラリア警察を振り回した「疾走動物」
「シドニーのシンボル」を疾走する動物、追いかけるパトカー。そんな映像がオーストラリアのメディアをにぎわせました。警察も思わずカメラをまわした、その動物とは…。(朝日新聞シドニー支局・小暮哲夫)
2018年1月16日午前5時、夜明け前のシドニー。事件は400万人超の人口を抱えるオーストラリア最大の都市のシンボル、「ハーバーブリッジ」で起きました。
ドライバーの通報でかけつけたパトカーの追尾を振り切って車道を逃走し、やっと止まったかと警察官が近付くと再度ぴょんぴょん…。
事態を重く見た(?)警察が公開した動画には、そんな未明の「カーチェイス」が記録されていました。
走っていたのは、オスのワラビー。
体長約1メートル。シドニー北部にあるゴルフ場あたりに住んでいたとみられています。橋を渡りきって市の中心部に渡りましたが、中心部にある音楽学校の門の前でようやく数人の警察官らに取り押さえられました。
その後、近くのタロンガ動物園にある病院に運ばれ、診察を受けました。
動物園によると、顔と後ろ脚にけがをしていました。取り押さえられたときに必死に抵抗したときにできたようです。幸い、骨折などの重傷でありませんでした。
ただ、野生のワラビーには精神的なストレスも相当だった様子。しばらくは病院で療養生活を送っていました。
25日、無事に快復し、シドニー郊外の国立公園に放たれたとのことです。
オーストラリアでも、シドニーのような大都市の中心部で、今回のように野生のワラビーやカンガルーを見かけることはほとんどありません。
ただ、市街地から離れれば、たとえば車を運転しているときにカンガルーを見かける、ということは決して珍しくはありません。「カンガルーに注意」という道路標識もあります。
政府の推計では、オーストラリア大陸には2015年に約4900万頭、16年には約4500万頭のカンガルーがいました(残念ながらワラビーの政府統計はありませんでした)。
人口は2016年で2340万人ですから、2倍の数がいるということです。
カンガルーが増えすぎると農場を荒らすので、頭数の15%ほどを殺すことが認められています。実際に殺されているのは毎年150万~160万頭ほどになり、カンガルー肉として輸出もされています。2015年度は62カ国に輸出。日本にも14.7トンも輸出されました。