話題
カロナールもタミフルも擬人化! RPG風「王子様のくすり図鑑」とは
身近な薬を擬人化して、ロールプレイングゲーム(RPG)風に仕立てた図鑑が、ネット上で注目を集めています。
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身近な薬を擬人化して、ロールプレイングゲーム(RPG)風に仕立てた図鑑が、ネット上で注目を集めています。
【ネットの話題、ファクトチェック】
身近な薬を擬人化して、ロールプレイングゲーム(RPG)風に仕立てた本「王子様のくすり図鑑」が、ネット上で注目を集めています。解熱鎮痛薬「カロナール」や抗インフル薬「タミフル」など、子どもが服用することが多い薬を中心に51種類が登場します。どのような狙いでこの本を企画したのか? 出版元の担当者に話を聞きました。
今月17日にツイッター投稿された画像。そこに写っているのは「王子様のくすり図鑑」という本です。
カロナールやムコダイン、イソジンといった、子どもになじみのある薬を擬人化したキャラクターたちが紹介されています。
子どもを病院に連れて行った際、この本を見つけたというこの投稿。リツイートは3万、いいねは4万8千を超えています。
出版元である「じほう」のホームページによると、著者・木村美紀さん、作画・松浦聖さん、臨床アドバイザー・石川洋一さんとあり、全144ページ、価格は税込み1728円となっています。
どんな内容の本で、どういった経緯で企画されたのか? じほうの鹿野章さんに話を聞きました。
――まずは発売された時期を教えてください
ちょうど1年前の2017年1月で、1月にこだわりました。インフルエンザ最盛期だからです。
この本は、幼児から小学校高学年に読んでもらうくすりの本を目指しましたが、その年齢の身近な病気として、まずインフルエンザが思い浮かびました。
インフルエンザの治療に見られる「体とくすりがタッグを組んでウイルス(モンスター)と闘う」というシチュエーションが、この本の企画を一番表していると考えたからです。
――本のおおまかなストーリーは
くすりの国の王子が、くすりの先生(導師)の授業を受けていますが、居眠りばかり。見かねた導師は、秘伝の術を使って「子どもくすり界」の門を開き、王子をくすりと病気の戦いの旅に連れて行きます。
「子どもくすり界」は、まるでRPGの世界。子どもがよくかかる病気が各ダンジョンに、モンスターとなって現れます。そこでは、子どものくすりたちが「戦士」「格闘家」「魔道士」「僧侶」「踊り子」などのキャラクターに扮して、モンスター(病気)と闘っています。
その姿を見た王子が、「子どもくすり界」の王子として、立派な王子へと成長していくというストーリーです。
――この本を出そうと思ったきっかけは
風邪をひいたり、頭が痛かったりで医療機関を受診し、薬を受け取る時には、薬の名前や注意事項の説明書が提供されています。
薬の名前や内容はインターネットで検索すれば、膨大な量の情報を誰でも調べられますが、その中には重要なものと、そうでないものの区別がありません。
弊社は医療提供側の専門書を発刊してきましたが、手法を変えれば、医療を受けるみなさまにも正しい薬の知識について学んでいただける書籍が制作できるのではないかと考えました。
一般の方々に読んでいただきたかったので、クイズ番組などで活躍され、みなさんにもおなじみの東大薬学部卒の木村美紀さんに執筆をお願いしました。
――書き方や表現で工夫した点は
くすりや病気の説明は、小学生にとっては難しいため、できるだけ子どもたちの日常にでてくる会話や表現に置き換えることを考えました。
それにはテレビゲームがうってつけで、「病原菌を殺す→モンスターをやっつける」、「痛みや熱を鎮める→魔法で痛みを取り除く」、「外敵から身を守る→結界をはる」というゲームの表現に置き換えました。
そして、それぞれのダンジョンにも、発熱や痛みは「赤く焼けた雲がもたらす」設定だったり、あれた山肌を軟膏剤(祈り)がしみ込んで治したりと、治療イメージをわかりやすい言葉に置き換えています。
名作PRGなど多くのキャラクターデザインを手がけた松浦聖さんに作画をお願いしたことで、本物のゲームのような世界観が表現できました。
――登場する薬はどのように選んだのでしょうか
まず、子どもによくみられる症状から疾患を選びました。たとえば、風邪、発熱、嘔吐、下痢、便秘、湿疹、アトピーなどを、それぞれ同じカテゴリーの病気にまとめて、章(ダンジョン)をつくりました。
病気が決まると、適応があるくすりは自動的に決まります。その中から子ども用の製剤(ドライシロップ、シロップ剤、散剤、細粒剤、顆粒剤など)を中心に、国立成育医療研究センターの石川洋一さんに実際の医療現場での使い方を基にピックアップいただきました。
――登場する薬と病原体の数は
くすりが51種類、病原体モンスターは15種類です。
――先に「王様のくすり図鑑」という本を出版されていますね
薬の情報を文字で羅列しても一般の方はあまり興味をもっていただけないことから、「くすりの特徴をイラストで個性を持たせて表現できたら、患者さんも自分が飲んでいる薬に親しみを持ってもらえるのでは」との発想で「王様のくすり図鑑」を企画しました。
実は私自身が薬剤師なのですが、薬剤師仲間に「王様のくすり図鑑」を紹介していると、「大人は面白いけど、子どもが読むには子どものくすりを載せてよ」「お母さんと子どもが一緒に読める本があってもいい」といった感想をもらい、子どもが飲むくすりの本を作ろうと思ったんです。
ですから、「王様のくすり図鑑」と「王子様のくすり図鑑」は、そのまま親子関係なのです。
――話題になっていることについて感想を
発刊から1年遅れですが、お子さんがいる親御様からのツイートをきっかけに話題になったことが非常にうれしいです。
実は昨年、江戸川区薬剤師会が学校薬剤師を通して、同区内の小・中学校保健室へ寄贈していただきました。
これはある意味、薬剤師からの評価ですが、今回は一般の方から本書のコンセプトである「病院の待合室に置く本」「親子が一緒に読める本」について反応をいただいたことが、何よりもうれしいです。
――この本を読んでみたいという人にメッセージを
不正な薬物使用問題などのニュースは少なくありません。また、インターネットを通して、誰でもがくすりの情報を検索できる時代です。
そのような中で、くすりを効果的で安全に使用していただくためには、子どものころから正しいくすりの教育が必要だと考えています。
この本は読み聞かせを意識して、やさしい言葉で表現されています。小学校高学年になると、ゲーム攻略本の感覚で楽しく読むことができます。
親子で一緒に読んでもらい、自分たちの生活や健康維持に欠かすことのできないくすりについて、たくさんの種類があることや、正しく使うことの重要性を感じていただきたいと思います。
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